第187話少年期[177]生き急ぐことはない

ゼルート達がボス部屋の前に着いてから既に三組がボスに挑戦し終えた。

結果は二組が奥へと進んだか、全滅したかのどちらかだった。

一組は、ボス部屋から命からがら逃げだしてきた。


基本的に上層のボス部屋は、中に入ると一旦後ろの扉が閉まるが、戦いの途中に後ろのドアを開けて、逃げることが出来る。

その際、ドアは三分程が開かなくなり、三分間経つとボスの傷が治り、万全の状態に戻る様になっている。

中層、下層のボス部屋になると後ろのドアは開かなくなるが、転移結晶というダンジョンでは超重宝するアイテムを使うことで、ボス部屋から脱出することが出来る。

だが、稀に転移結晶が使えないボス部屋もある。


「あのパーティー、良くボス部屋から脱出することが出来たな。ボス部屋のボスって部屋からは絶対に出てこないけど、出てくるまでは絶対に追って来るだろ」


「・・・・・・見た感じ、魔法使いがいるから、そいつが中級魔法でも使ってその間に逃げたんじゃないか?」


ゼルートの疑問に干し肉をつまんでいるソブルが、ボロボロになりながら冒険者の服装、武器を見ながら答えた。

ソブルの答えに分からなくもなかったが、それはそれでゼルートは疑問に思った。


「中級魔法が一回でも使えるんだったら、なんでオークを倒そうとしなかったんだ? 可能性は十分にあると思うんだけどな」


ゼルートの考えだと、オークが三体いたとしても、オークを誘導させて三体を一か所に集めれば、中級魔法を一撃ぶち込めば倒せるはずだった。

だがその考えを、冒険者歴が最も長いアレナが否定した。


「それは流石に無理があるわよゼルート。あなたみたいな子供の頃から各上の相手と訓練をしてる人や、ある程度の力量があるベテランの冒険者なら、そういった判断が即座に出来るでしょうけど、見た感じだとあの子たち、八階層であったパーティーと同じように少し無理して、ボスに挑んだってところね。そんなまだ素人に毛が生えたような冒険者にとっさの判断は出来ないわ」


アレナの的確な説明に、ゼルートは物事を自分本位で考え過ぎていたなと思った。


(確かにアレナの言う通りだな。というか、そもそもそんな判断が出来るんだったら、無茶してボス部屋に入ろうとしないか。まぁーーーにしても、人の事は言えないけど無茶をする若い冒険者が多いな。ギルドもそこら辺もう少し説明してあげても良いと思うんだけどな。いや、ダンジョンがある街のギルドだったら、尚更そこら辺はしっかり説明しているか。逆にあいつらが自分達の力を過信したか、それともそうまでして、金や強い装備、マジックアイテムを手に入れたかったのか、そんなところだろうな。でも、例え後者だとしてもゲームと違って、命は基本的に蘇ることはないんだ。例え、今の生活が苦しかったとしても、地盤をしっかりと固めて、準備を整えてから戦いの場に挑む方が良い・・・・・・って、俺が言っても多分相手には響かないんだろうな)


ゼルートは改めて、自分が恵まれた環境にいるのかを感じていた。

そんなことを考えながらも、ゼルートは自分達の番になるまで暇だったので、机と椅子、そして紙と鉛筆を取り出し、自分で作れる遊び道具のアイデアを書き始めた。


いきなりゼルートが机と椅子を取り出し、紙に何かを書き始めるのを見て、アレナや、セフィーレ達だけでなく、一つ前の冒険者達達も目を丸くしてゼルートを見ていた。


だが、ゼルートはそんな周りの状況に気づかず、黙々とアイデアを書き始めた。


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