第178話少年期[168]形状変化

目をポカーンとさせ固まっているゴブリン達に対してゼルートは、特に躊躇することなく魔力の球体を急所に向かって突撃させた。

通常のゴブリンが何体か殺されてからようやく上位種のゴブリン達は目の前で何が起こったのかを理解し、ゴブリンメイジが呪文を唱え始めると、他のゴブリン達がゴブリンメイジを守るように並んだ。


(・・・・・・なるほどな。最低限の戦法はちゃんと分かってるんだな。確かに詠唱を唱えている奴を守るのは定石だよな)


ゼルートはまたまたゴブリンの行動に感心しながらも慌てる事なく、魔力の球体の形態を横向きの刃にした。

当たる直前に変化したためゴブリン達は反応することが出来ず、頭と体がさよならした。


そしてゴブリンメイジが詠唱を唱え終わる前に、また魔力は球体に戻り、ゴブリンメイジの額を貫いた。

結果、二十体ほどいたゴブリン、ゴブリンの上位種は一分とかからず殲滅した。


「さて、討伐証明書の部位はいらないけど、魔石だけは取っておくか」


ゼルートがゴブリンの魔石を取り出そうと動くと、後ろで固まってゼルートとゴブリン達の戦いを見ていたソブルが声を掛けた。


「そ、それは俺がやるよ。それくらいは仕事しないといけないしな」


「分かりました。お願いします」


話が終わると、ゼルートはアレナ達の所に戻った。


「お疲れさま。相変わらず常識はずれな戦い方ね。ゴブリン相手とはいえ、その場から一歩も動かずに倒すなんてね」


「そうだな。あんな戦い方はふつう考え着かないぞ。だが、とても効率的な戦い方だな。あの戦い方なら、格下の相手なら余計な魔力、体力を使わずに済むな」


「確かにルウナの言う通りね。戦いそのものはとても効率的ね」


「おっ、流石二人とも分かってるな!! まぁ、効率的に出来るまでにかなり時間がかかるけどな」


ゼルート達が盛り上がっている間、セフィーレ達はゼルートの常識外れの戦い方に、驚かされっぱなしだった。


ゼルートが行っていることは、誰しもが思いつきそうな事だった。

過去にゼルートと同じ考えにたどり着いた人物もいる。だが、それを実現しようとはしなかった。


理由は、まず確実に結果が出せると確率が極めて低いことが一つ。二つ目は既に出来上がっていた固定概念、常識に囚われていたからだ。


ゼルートの戦いぶりを見て、セフィーレ達は今回ゼルートに出会えたことに色々な意味で感謝していた。四人はゼルートの戦いぶりに刺激を受け、今の試練が終われば自分なりに戦いの幅を広げようと思考えた。

残り一人は残念ながらそういった、生産的な考えに至らず、ただただ心の憎悪を膨れ上がらさせていた。


その後も、特に緊急事態になることはなく順調に進み、八階層の安全地帯に到着した。

ダンジョンの中には、安全地帯と言われる魔物が全く寄ってこない場所が存在する。

そこにはダンジョンの入り口付近と同じように、物資を売っている商人の姿がちらほらいる。


その光景に、ゼルートは少し乾いた笑みを浮かべていた。


「は、はは。ダンジョンの中で商売するとはな・・・・・・まぁ、商売根性逞しくてなにより、ってところだな」


「ふふ、ゼルートがそんな表情になるのも無理はないわね。ダンジョンの上層に存在する安全地帯なら、雇う護衛はそこまでいらないから、ここまで来て商売をする商人も珍しくないわ。中には元冒険者の商人だっているからね。まっ、ダンジョンの中で商売している分、危険がないとは言えないから地上よりは結構値段が割り増しされているわ」


アレナの説明にゼルート達は皆なるほどと納得し、コクコクと頷いていた。

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