第109話少年期[98]良い親父さんだ

次の日も何か異変が起こる事もなく、馬車の中で世間話をしてゼルート達は野営の準備を始めた。


馬車の中での会話はゼルートにとって結構楽しかった。


ゼルートの父親は母親以外の女の冒険者や、貴族の息女などに結構モテた。それで嫉妬した母親に魔法で撃たれた事がそこそこあったと聞いて、ゼルートはその光景が容易の想像出来、吹き出してしまった。

ゼルートも面白い話として、幼馴染のゴーランがファイヤーボールを撃とうとしたら屁が出たことを話すと皆大笑いた。グレイスは、小さい火の玉が出てしまう事ならたまにあるが、ファイヤーボールを撃って屁が出たなんて、見たことも聞いたこともないと話した。


(この話が広まれば、あいついずれ魔法の教本に悪い例として名前が載るかもしれないな)


もしもの未来に、ゼルートは心の中で爆笑していた。


今回の野営はほとんど変わらず、何人かの冒険者がゼルート達に温かい飯を売って欲しいと来て、その冒険者達に対してゼルートは銀貨二枚で売った。少々高かったかと思ったが、冒険者達は不満一つ漏らさずに買った。


(どうやら野営中に温かい飯は余程嬉しいみたいだな)


その後風呂に入り、男だけなのでボーイズトーク・・・・・・いや、エロトークが始まった。


グレイスは美人なのはもちろんの事、胸が一番。ゼルートも基本的にそうなので話が盛り上がった。

だがダンは最後まで自分の好みの女性のタイプを言わなかった。


(まぁ、こいつの場合好きな女のタイプとか部分とかないんだろうな。母親と姉の二択しかないんだろう)


この世界に家族と結婚したらダメだというゼルートの前世で存在法律はないが、親子や親類どうしで結婚して子供をつくると生まれてきた子供の死亡率が高いのは一緒な様で、暗黙の了解として親子や親類で結婚はしなくなった。


(でも・・・・・・こいつならコーネリアさんは大丈夫かもしれないけど、ミルシェさんを襲ったりする可能性が無いとは言えないな)


風呂から上がった後、ゼルートはテントに入って寝ていたが、夜中に目が覚めて少し外に出た。


「む、どうしましたか主よ。モンスターや冒険者の襲撃はありませんが」


ゲイルはゼルートが外に出てきたことで、何か異変があったのかと思いゼルートに不安そうに尋ねた。


「いや、ただ少し目が覚めてしまっただけだ。少し風に当たってくるよ」


「そうですか・・・・・・何もないとは思いますが気を付けて」


「ああ、わかってるよ」


そしてゼルートは少し野営地から離れたところに行った。


「ふーー、この世界にきてもう十二年か・・・・・・」


(自分が来てみたいと思った世界に来れて、それなりにやりたいことはやれているから不満はない。むしろ満足している。でも、この世界にいるとなにがゴールなのかいまいち分からないな。もちろん冒険者は続けていくし、出来れば父さんと同じAランクの冒険者になりたい。Sランクは・・・・・・なると正直めんどくさそうだからちょっとなりたくないかな。もしかしたら父さんみたいに冒険者から貴族になるかもしれないな。領地の経営とかはやってみたけど、他の領主や貴族とトラブルになったとき絶対に物理的に解決しようとしてしまいそうだから、余計トラブルを起こしてしまいそうだな。それに貴族になったら冒険が出来なくなってしまうしな・・・・・・そのかわり書類作業をやらなきゃいけなくなりそうだから、やっぱ貴族にはなりたくないな。後・・・・・・俺って結婚すんのかな。前世ではそんなこと一切考えられなかったし。てか、彼女すらいたことなかったからな。まぁ・・・・・・そういうのは冒険をし終えてからでも遅くはないだろうな)


ゼルートが一人で思いに更けていると、後ろから声をかけられた。


「おうゼルート、な~~~に一人で黄昏ているんだ」


「・・・・・・グレイスさんこそどうしたんですか、こんな夜中に。ちなみに俺はただ風に当たりに来ただけですよ」


「俺だってただ見張りでここを通ったらお前を見つけたんでな、ちょっと声をかけただけだ」


そう言ってグレイスはゼルートの隣にどかっと腰を下ろした。


ゼルートは一つ名案が浮かび、アイテムリングから冷えたエールをグレイスさんに渡した。


「どうぞ、風に当たりながらエールを飲むのも良いと思いますよ」


「おお、それはいいな! って言いたいところだが、流石に今飲むとちょっとな」


流石にこんな夜遅くに飲むのは明日に影響するのかと思ったのか、グレイスは遠慮したがゼルートは構わず勧めた。


「大丈夫ですよ、リフレッシュの魔法を使えば酔いは覚めますよ」


「なっ、マジでか!? でもリフレッシュって状態異常を治す魔法じゃなかったのか」


「何を言ってるんですか。酔いも立派な状態異常じゃないですか」


ゼルートの言葉を聞いたグレイスは、一瞬ポカーンとした表情になったが直ぐに大声で笑いだした。


「なはははははは、なるほど! 確かにそうだな。なら一杯貰うとしよう」


そう言ってグレイスはゼルートからエールを受けとり、ごくごくと旨そうに飲んだ。


「かーーーーっ、冷えたエールはやっぱうまいな!!! ほんとお前に会ってから今まで考えられないような体験ばかりしているぜ」


(まぁ、俺にとっては普通だけどこの世界の人にとってはそうなるんだろうな)


「なぁゼルート」


「なんですかそんな改まった顔をして」


グレイスが急に真剣な顔になってゼルートに話しかけてきた。


「もし、ダンとミルシェが困っていたら助けてやってくれないか」


「・・・・・・そういうのは親であるグレイスさん達の役目じゃないんですか」


ゼルートは一般的な考えで返したが、グレイスにはグレイスなりの考えがあった。


「いや、まぁ、冒険者としての事なら俺でも相談に乗れるかもしれないが、やっぱ年相応の悩みとかは俺にちょっと厳しいからな。それに多分お前の方が戦い方を教えるのは上手いだろ」


「前半は納得できますが、後半に関しては買いかぶりすぎですよ」


「なっはははは、俺はそうは思わないけどな。まぁ、お前が暇の時でいいからよ」


「・・・・・・わかりました。でも、俺はアドバイスをしたり道を提案することしかしませんよ」


「ああ、それくらいでいい。じゃないとあいつらが本当の意味で成長出来ないからな」


(・・・・・・本当、俺の周りの大人って良い人ばかりだよな)

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