第102話少年期[91]アレナの思い

「ふーーー」


ゼルートはいつもより早く起きてしまったため、今日からオークとゴブリンの群れの討伐だというのにいつも通り行っているトレーニングをしていた。


(今日は朝の訓練はするつもりじゃなかったんだけどな。にしても・・・・・・本当に鍛えた分だけ自分の力になっている感覚があるな。前世と比べて娯楽が明らかに少ないのはちょっとあれだが、しっかりと頑張った量だけ自分の力になるのが分かるってのは良いよな。前世じゃ長い期間努力し続けないと成果がでないからな。いや、それはこの世界でも同じか。単にこの世界での努力の仕方が飽きないってのもあるな)


この世界ではステータスによって己がどれだけ成長したのかがわかる。


もちろんステータスだけが全てではない。技術の差で自分よりステータスが高い相手に勝つことは出来なくもない。


だが、流石にステータスの差が二倍三倍となると、超一流と言えるほどの技術を持っていないと勝つことは不可能だ。


だが、ステータスがが高ければそれで良いというものでもない。ステータスが高ければその力に頼ってしまう傾向が高い。


ランクCからBの下位の冒険者相手ならそれで通じるかもしれないが、それ以上の冒険者となれば技術も一流と言える領域に達している者が多い。


Sランクとなれば超一流に達している者がほとんどだ。


今後の人生で必ずしもというわけではないが敵として戦う可能性もある。それ故ゼルートは毎日ステータスの力に振り回されないよう鍛錬をしている。


ゼルートが鍛錬を終え少し休憩をしようとしたら、後ろから声が掛かってきた。


「さっきまでの動きを見ると、あなたがどれだけ強いのかよくわかるわ。本当に、その歳でその強さは反則的ね」


「っと、アレナか。反則的か・・・・・・まぁ、あながち間違ってもいないかな。でも、アレナだってその歳でAランクになれる強さがあるんだから、アレナの同年代からしたら十分反則的な強さなんじゃないのか」


ゼルートはからかうように言った。


対してアレナは首を横に振りながらそんなことはないと言った。


「確かに多少は強いとは思うけれど反則的と言われるほどは強くないわ」


「でも、まだまだ強くなり続けてるんだろ」


ゼルートは真面目な声でアレナの目を見ながら言った。


アレナは少しの間目を瞑り、考えをどう伝えたらいいか考えた。


「そうね・・・・・・正直、奴隷となった時は私の人生はここで終わったんだと思ったわ。Aランクの冒険者といっても所詮は女。男の冒険者ならば武系の貴族が買う事が多いわ。でも、女の冒険者な場合はそんな貴族ではなく、女は全て自分の性欲を満たす道具としか思ってない奴に買われるのがほとんどなのよ。それにオークションに賭けられるって知った時は本当に絶望したわ」


(んん? オークションに賭けられるのも、普通に奴隷館で買われるのも変わらないと思うんだけどな)


ゼルートはそれのどこがそれほど違うのか尋ねた。


「オークションに賭けられて買われるのと、奴隷館で買われるのはそんなに違うのか?」


「ええ、結構違ってくるわ。簡単に言えばオークションの方が普通に奴隷館に来る貴族の数より、多くの貴族が来るのよ。そうすれば下種な貴族も多く集まるってことよ」


アレナは吐き出すように過去の苦い経験を思い出しながら答えた。


ゼルートはアレナの苦い表情を見て、あのオークションの時に自分金を重ね続けた脂ぎった豚貴族を思い出した。


「俺とお前を買う金額を競ってた豚貴族と何かあったのか?」


アレナはゼルートの質問に目を大きな開き驚きながらもしっかりと答えた。


「鋭いわね。そうよ、ミーユ様の護衛の指名依頼をパーティーで受けたときにちょっといろいろあってね」


(いろいろ、な・・・・・・どうせ無理やり自分の女にしようとしたとかそんなところかだろうな。というかあの豚貴族のあの気持ち悪い顔からしてそれ以外考えられないな)


そこでゼルートは本当はちゃんと考えて発言した方が良かったであろう言葉を、さらっと言ってしまった。


「なぁ、アレナ。戻れるんなら前のパーティーに戻りたいか」


言ってからゼルートはしまったと思い、どう言い訳しようかアレナから目をそらしながら考えていると、アレナがクスっと笑ってから笑顔で答えた。


「そんなことはない・・・・・・とは完全に言いきれないわね。前のパーティーに確かに恋しいとは思いはあるわ。でも、それ以上に奴隷になった私を救ってくれたあなたの力になりたいと思う気持ちの方が圧倒的に強いわ」


面と向かって言われたゼルートは、頬を赤くしながらそっぽを向いて返事を返した。


「っ~~~~~~そ、そういうことを面と向かって言うなよ。普通に恥ずかしいだろ。

あ、後感謝するのはミーユにしとけよ。あいつがお前をあの豚貴族に買われそうになるのを悔しそうにしてたから手を貸しただけなんだ。わかったか」


ゼルートは少し大きな声で真剣に言ったつもりだったが、頬がまだ赤いのもあって軽く流されてしまった。


「ふふ、わかったわ。そういうことにしておくわ」


(は~自分の強さとかには自信がついてきたつもりだったけど、こういう不意打ちみたいなこと言われて顔を赤くするなんて、俺もまだまだ子供だな)


まだまだ女には弱いゼルートだった。

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