第85話少年期[75]心はホットに、頭はクールにだろ

セイルは相手の力量差を測ることもせずに、盗賊のリーダーに斬りかかった。


「チっ! くそったれが! まさか本当に行動に移すとか正真正銘の阿保かよ」


ゼルートは舌打ちをし、セイルに悪態をつきながらもこの状況をどうするかを考えていた。


(自分の仲間を置いて敵に突っ込むかよ普通。とりあえずアレナとの距離が近いからロークのことはアレナに任せるとしてセイルの阿保は・・・・・・とりあえずあの盗賊のリーダーには百パー勝てないから、そこそこ痛い思いをしてもらってから助けるとするか)


ゼルートはすぐさま行動に移して指示を出した。


「ローク! 直ぐにアレナのところに移動しろ。

アレナ、二人を頼んだぞ! 俺はセイルの方へ向かう」


「わかりました!」


「わかったわ、こっちは任せなさい!」


ロークは直ぐにアレナが戦っている場所に向かい二人と合流した。

アレナもロークが来たのでラナの護衛をロークに少しの間任せ、残っている盗賊達に斬りかかった。


「よし、向こうは大丈夫そうだな。そんで肝心のこっちは・・・・・・」


ゼルートはセイルと盗賊のリーダーの方に目を向けた。


「おいおいどうした、こんなもんかよ! せっかく子分どもを殺してくれた奴を、存分にいたぶってから殺してやろうと思ったのによ~~~~~。

これじゃあ、いたぶることもできねえじゃねえかよ!!!」


盗賊のリーダー・・・・・・ボーランは大剣の側面を使いセイルを叩き付けた。


「がっ、 く、くそおお!! まだだ!!!」


セイルは盾を使い、なんとか数メートル吹き飛ばされただけで済んだ。


だがセイルはよっぽど冷静さを欠いていたのか、無謀にも再び斬りかかった。


「学習しない奴だな。お前みたいな駆け出しが俺に敵うはずがないだろ!!」


再びセイルとボーランの戦いが始まったが、明らかにセイルが押されていた。

セイルの装備は盾を持っているとしても、武器は普通のロングソードなので、大剣を使っているボーランにスピードで負けるということは、ステータスに差があったとしても良くて互角になる。


(鑑定眼でステータスを見てみたが、確かに大剣を扱えるだけの筋力はある。だが、それでもセイルのスピードに着いてこれるかと言えば微妙なところだ。可能性があるとしたら右腕についている腕輪か大剣がマジックアイテムか、それとも大剣に付与魔法がかけられているかのどれかだろうな。実力も一応そこそこありマジックアイテムや魔剣の類も持っている。完全にセイルには手に負えない相手だな)


「ぐ、このおおおお。くそっ!!! これどどうだああああ!!! 火炎斬!!!!!」


セイルは自分の必殺技とも言える技をボーランに放った。


これがEランクやDランクのモンスターならば一撃で倒せるだろう。


だか、相手はそこそこ戦いを経験してきた各上の相手。そんな相手に不意を突いたり、足場を崩したりなど態勢を崩してから攻撃をせず、ただ真正面から技を放ったとしても・・・・・・。


「そんなひょろっちい攻撃が効くわけねぇだろうが!!」


「がぁっ! しまっ、俺の剣が!!!」


「おらおら、隙だらけだぞ!!!」


「がはっ!!!」


セイルは剣を吹き飛ばされた挙句腹に蹴りを入れられた。


体格差もあってかセイルはゼルートの近くまで吹き飛ばされた。


「ぐ、ま、だだ。まだ終わってない!」


セイルはボーランの蹴りにより、肋骨にひびが入っているにも関わらず体を奮い立たせ、起き上がりもう一度ボーランに挑もうとしたがゼルートに止められた。


「セイル、後ろに下がっていろ。あいつの相手は俺がする」


ゼルートはセイルが剣を吹き飛ばされ、戦う手段がないのもありそこそこ痛い目にも合ってもらったので、後ろに下がっていてもらおうと思い声を掛けたが、当然セイルはゼルートの言うことを聞かなかった。


「ふざけるな!!! あいつの相手は俺だ、邪魔するな!!」


「ふざけているのはどっちだ、得物がない状態で今のお前に何が出来る」


ゼルートはセイルにみたいに大きな声で怒鳴っているわけではないが、その声には確かな怒りが籠っていた。


だがセイルはそれを一切感じ取れずゼルートの言葉を無視し、ボーランに再び挑もうとした。


「そんなの関係ない!! あ、あいつは。俺が倒・・・・・・」


「それならもう寝ていろ」


「がっ、が、あ・・・・・・・」


ゼルートはセイルにスタンを浴びさせ意識を奪った。


気絶したセイルを残りの盗賊を殺し終わったアレナの方に投げ渡し、ボーランの方を向いた。


「悪いな、わざわざ待ってもらって」


「はっ、あんな弱い奴にはもう興味はねぇからな。お前は・・・・・・どうやら中々やるようだな」


ボーランはゼルートの強さを全て把握したわけではないが、ゼルートの強さはある程度感じ取っていた。



「あの阿保とは違って相手の力量差はわかるみたいだな。こちらとしては簡単に殺されてくれれば嬉しいんだが、そういう訳にもかないみたいだな」


「わかってるじゃねぇか、なら・・・・・・もう言葉はいらねぇよな」


「そうだな・・・・・・」


一瞬広場が静寂に包まれた。そして・・・・・・


キィィィィイイインンンンン!!!!!


Dランクの昇格試験の最後の戦いが始まった。


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