第83話少年期[74]アレナの優しさ

ルウナの報告通り盗賊のアジトの見張りは二人いた。


(アジトはそこそこ大きな洞窟型か。兵士達の拠点地としては良いかもしんないけど。盗賊のアジトとしては見つかりやすくてアウトなんじゃないか?)


ゼルートは余計な事を考えながらも、あの見張り二人をどうやってバレずに殺すかを考えていた。


「まずはあの二人をどうにかしないとな・・・・・・」


ゼルートは自分一人でやれば済むことだが、今回は昇格試験ということなので他のパーティーの事も考えていた。


「なら俺が真正面から斬りかかってやる! ローク、お前も一緒に・・・・・・」


「阿保かお前は。向こうがこっちに気づいていないのに、なんでわざわざ正体をバラすような真似するんだよ。阿保かお前は」


二回阿保とセイルに向かって言ったゼルートの顔は、至って真面目だった。


(こいつ、いくら何でももうちょい考えてから発言してくんないかな。脳筋って言われても言い返せないレベルだぞ。ドウガンって奴に何を教わってたんだよ)


「なっ、ならお前はどうやってあいつらを倒すんだよ!!」


セイルは自分を馬鹿にされたことで顔を真っ赤にしながらゼルートに迫ったが、そのセイルをルウナがいつもより低く、少し怒りが入っている声で叱責した。


「お前、セイルと言ったか。ゼルートの言った言葉をしっかりと聞いていなかったのか。そんな大きな声を出して敵に聞こえたらどうするんだ。

お前一人で盗賊を盗賊を討伐しているのなら被害が及ぶのはお前だけだからいいが、今回は他に何人もいるんだぞ。お前の行動で危機が訪れるかもしれないんだぞ。わかっているのか」


「っ!! ・・・・・・」


セイルはルウナに何か言い返そうとしたが、すぐに自分の行動が間違っていると気づき押し黙った。


「安心しろルウナ。一応サイレントの魔法を使っておいたからバレていない筈だ」


ゼルートの言葉にみんな安堵した表情を浮かべていた。


(まぁ、俺もサイレントを使った事をすっかり忘れていて、一瞬焦ったんだけどな)


「とりあえず・・・・・・ラナ、アロー系の魔法は使えるか?片方は俺が殺すからもう片方頼みたいんだがいいか?」


「ええ、わかったわ。そうね・・・・・・この距離ならウィンドアローね」


ゼルートは指先に魔力を集め、標準を見張りの頭に定めた。

ラナはウィンドアローの詠唱を始めた。


「風よ、その力を矢と変え敵を貫け・・・・・・ウィンドアロー!!!」


「ブレット!!」


ラナの放った風の矢が見張りの右胸を、ゼルートが放った魔力の弾丸が見張りの頭を貫いた。


見張りの二人は自分が死んだということを認識できないまま一生を終えた。


「よし、見張りはどちらとも死んだみたいだな。

それじゃあ、行くぞ!」



「ゼルート、ちょっと待って」


死んだ見張りのいる場所でアレナがゼルートを呼び止めた。


「どうしたんだ?」


「少しだけ時間を貰うわ」


そう言うとアレナはセイル達のパーティーの方を向いた。


「あなた達、目をそらさずにしっかりと見なさい」


するとアレナは死んだ見張りの死体をロングソードで切り裂いた。

その死体を見たセイル達は一斉に吐いた。

そして全て出し終わった後に、セイル達がアレナに向かって何かを言おうとしたがアレナの言葉に遮られてしまった。


「今ここで吐いてしまって良かったわね。これが盗賊との戦闘中だったら、あなた達はこの死体と同じ様になっていたわ」


アレナの言葉にセイル達の頭に自分の死のイメージが浮かび、一気に顔が青くなった。


それも仕方がないだろう。どうしてもモンスターと人を殺すこと、その死体を見ることには抵抗差がある。


新人の冒険者は人の死体や殺してしまった時にに余程精神が強くないと、今回のセイル達のようになってしまう。


「ここから先は覚悟を決めた者しかこれない場所よ。人を殺すことに躊躇いがある人はそこで縮こまっていなさい」


アレナの言葉にセイル達は一瞬ひるんだが、すぐに覚悟を決めた目でアレナを見た。


「その様子だと覚悟は決まったみたいね。ゼルート、もう大丈夫よ。時間をとって悪かったわ」


「いや、気にするな。セイル達には必要なことだったみたいだしな」


(そうだった。誰もがいきなり人を殺したり、惨い死体をみて平気でいられるわけがないか。その辺も気を付けておいた方が良かったな)


ゼルートは反省しながら洞窟内に足を進めた。

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