最終話~マスターシーン6~
奏 時貞がデッドエンドデッド研究所を襲撃し、京香が過去へと遡った後。現代での出来事だ。そこには戦闘の果てに倒れた及川の姿があった。
奏:「想定より2分18秒粘られたか。全く、君という人はつくづく愚かだね。
私に勝てない事は分かっていた筈だろうに」
及川:「……」
奏:「戦闘から離脱した佐倉 杏子の方がよほど利口だ。殺される事は眼に見えているのだから」
動けない及川の傍にしゃがみ込み、愉し気に口角を釣り上げる。
奏:「それとも何ですか、たとえ死んででも彼らを守ってみせるとでも?
呆れを通り越して憐れみすら覚えるね」
一言も喋らない及川につまらなそうな視線を送ると、彼はゆっくりと立ち上がった。
奏:「もう話す力すら残っていないか。残念ながら私自身ではこの時代で殺める事はできませんが……安心するといい。
すぐに”この時代で生んだクローンたち”が始末してくれるので」
悠々と歩き出す。彼の歩みを止められる者は誰一人としていない──筈だった。
彼が踏み出した足を、倒れたままの及川が掴み止める。
及川:「──行かせ、ない」
奏:「……この期に及んで邪魔立てかい?」
及川の手に力が籠もる。意志の力とでも言うのだろう。肉体の限界など超えているのだから。
しかし
奏:「──だから憐れだって言うんだ」
《Eロイス:さらなる絶望》を使ってクローンを一人呼び寄せると、吐き捨てるように告げる。
「始末しろ」
短い命令にクローンは懐から銃を取り出す。
それを及川へと向け──。
銃声と共に、血潮が周囲に飛散する水音が響く。
──崩れ落ちたクローン、その背後には紫電を纏う悪魔が腕を血で濡らし、
崩落した一階には銃口から煙を浮かべる千夏の姿があった。
千夏:「間一髪、でしたね」
ディアボロス:「ハン、お前はいつまで経っても小僧だな。誰が死ぬ事を許可した」
崩落した天井部分の更に遠方、なんとか視界に捉えられる場所にはプランナーも立っている。肉眼で気付く可能性はあり得ない程の距離だが、それでも及川は彼女を視認できた。
ディアボロス:「寝そべっている暇など与えん。さっさと起きて敵を見据える事だ」
異形と化した悪魔の腕で引き摺り起された及川の目に、再び生気が灯る。
奏:「へぇ……まだそんな目ができるんですね。プランのために用意されただけの駒の癖に」
まるでホログラムのように、次々と大量のクローンたちが現れる。
千夏とディアボロスを
奏:「君たち二人が来たという事は、UGNとFHが共同戦線を張ったという事だ。
ふたつの組織を繋ぐ交渉は大方リヴァイアサンが行なったのだろうけど、入れ知恵をしたのは佐倉 杏子とプランナーか。
なら、わざわざ足止めを受ける訳にはいかない」
奏の左眼──"約束の瞳"と同色の魔眼が光を収束させる。
奏:「サービスだ、君の事は直接殺してあげよう、デッドエンドデッド。僕が生まれた場所に、お前も連れていく」
「──告げる。ガイアよ、私の記憶で世界を誤認しろ」
膨大な光に包まれながら、奏と及川の姿が掻き消えていく。
及川:「(……これで、僕が成すべき事は成した筈だ。信じてるぞ──”京香”)」
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