第四話〜ミドル7〜
プランナーに背中を押されるように京香の部屋を出た影裏は、その勢いのまま及川の部屋へ押し入った。
影裏:「桃矢! 話がある!」
及川:「あ、ああ──結理か。どうしたんだ突然」
影裏:「単刀直入に聞くぞ──お前、プランナーの京香を、まだ信じきれてないな?」
及川:「それは……当然だろう。言葉を交わすどころか、ほとんど顔も合わせてなかったんだぞ」
影裏:「まあ、だろうよ。……さっき、京香たちと話をしてきた。で、俺はそこで決めたことがある」
「俺は京香を信じるぞ。俺たちの知る京香も、プランナーの京香も、両方信じると決めた!」
及川は目を見開き、その言葉が意味するところを考えた。
影裏:「桃矢。今すぐにプランナーの京香を信じろ、というのは難しいかもしれない。だから──」
その見開かれた目を、まっすぐ射抜く視線で。
影裏:「俺を、信じてくれないか」
影裏は本気だ。それを肌で感じた及川はある種の嬉しさを感じ、納得したように笑う。
及川:「──ああ。結理が言うなら信じられる。……僕は結局、あの頃から人を見るのが下手だったんだ」
影裏:「桃矢……! ありがとう! お前なら、そう言ってくれるって"信じてた"ぜ」
及川:「……まったく。結理には昔から敵わないな」
影裏:「何言ってんだよ、成績はいつだってお前の方が上だったぜ?」
及川:「はは、あれだけ勉強嫌いだったクセによく言うよ」
二人は笑いあう。それは、昔と変わらない絆を感じさせた。──互いの年齢が大きく離れてしまったにも関わらず。
ひとしきり笑いあったあと、影裏は一呼吸置き、再び真剣な表情をする。
影裏:「それと、もうひとつ伝えることがある。……前に、親しい友人のお前に殺されたことが、堕ちた俺の最後の救いだと言ったな」
及川:「……ああ、そう言ったな」
影裏:「あれ、取り消すぜ。諦めるのはやめたんだ。そんな、友達に友達を殺させるような結末なんて、クソくらえだ。──だから桃矢」
「俺は、そんな最悪の結末をお前に叩きつけたアイツを、絶対に許さない。お前が味わった絶望の落とし前は、きっちりつけさせてやる」
及川:「──そうしてもらえると、助かるよ」
影裏:「……まくし立てて悪かった。話は終わりだ、邪魔したな」
自分らしくないと思ったのだろう、影裏はそそくさと立ち去った。
その様子を笑って──けれども寂しげな目で見送る。
及川:「ああ……そうだ、結理。それでいい。最後に笑うのは──お前たちだ」
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