第二話〜クライマックス(2)〜
持てる力全てを使い果たし倒された千夏。その片方の目は泣き、もう片方は苦痛に歪んでいる。
彼女が次に目を覚ました時、戻ってこられるかどうか。それは、この瞬間にかかっている。
判定項目:千夏を呼び戻せ!
技能:<交渉>
難易度 17
遠藤 千夏にロイスを取得している場合、難易度を7に変更。
Sロイスの場合、難易度を4に変更する。
イージーエフェクトの《レネゲイドリゾプション》を宣言することで固定値に+2のボーナス修正。
影裏:《レネゲイドリゾプション:イージー》を宣言。判定、参るぞ。
春見:ではこちらも、いきま。
二人の判定の結果は──。
影裏:「苦しいだろ……今、楽にしてやる」
倒れる千夏に近付き、静かに影のアギトを展開する影裏。彼女を蝕むレネゲイド──衝動を奪い去る。
影裏:「俺に出来る物理的な処置はこれくらいか。後は……コイツと、俺たち次第か」
春見:「……千夏ちゃん。帰っておいで。一緒にお料理しよう? 結理君には審査員してもらって。
……千夏ちゃんが奪われた日常。それを取り戻すことは出来ないけど。代わりに、その隙間を埋めてあげることは出来る。
だから──、どうか諦めないで。貴方が諦めちゃったら……結理君がきっと凄く悲しむから」
彼女の中の日常の大黒柱は、その大部分が結理君であることを、彼をSロイスに指定することで表します。
そうだ。先ほど感じた違和感はこれだ。春見自身が助けたいんじゃない。"影裏が助けたい相手だから助けたい"んだ。この言葉には愛ゆえの残酷さ、危うさを孕んでいる。
春見:「……(彼は結局、何もしてこなかった。不思議。何故? 何故なにもしてこなかったの……?)」
影裏:「遠藤……確かに、お前の日常は理不尽に壊された。その苦しみと痛みはよく分かる。もしかしたら、俺たちが代わりになんて、おこがましいだけかもしれない。
けどな──それと同じくらい大切なものを、お前はもう知ってる。持っているはずだ。
お前が守ってきた、"新しい日常"……何よりも得難いそれが、お前を待ってる。だから、帰ってこい」
日常。その得難さと脆さを、影裏は誰よりも知っている。薬島に壊された家族との幼き日常。キングタイガーに壊された友達との日常。──彼のこれまでの人生は、日常の崩壊と共にあったと言っても過言ではない。
影裏:「復讐心自体を否定はしない。けどな、お前が過去に囚われ堕ちたら、大勢の人間が悲しむんだ。……その中には、お前のお兄さんだっている。
失ったら、新しい何かを見つけて、前に進むしかないんだ。だから頼む、帰ってきてくれ……自分の過去に、負けないでくれ……!」
その言葉は、あるいは影裏自身に向けられていたのかもしれない。影裏だから。影裏が言うからこそ、この言葉は輝くのだ。
千夏:「おにい……ちゃん。ごめん……ごめん、ね」
二人の言葉を受けて、徐々に、苦痛に歪んでいた目の緊張が解け、涙を流す。
千夏:「いってらっしゃい、おに……ちゃ……」
最後に薄く笑い、彼女は完全に気を失った。
──君たちにできるのはここまでだろう。しかし、彼女は最後に笑っていた。その事実が"帰って来た"のだと確信させてくれる。
彼女の言葉の真意は、目を覚ましてからゆっくり彼女自身に聞くといいだろう。──もう、憎しみに囚われることはないのだから。
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