第7話 レゼェラの二帝会戦Ⅱ
歩兵三個軍団 弓兵六個大隊 四三二〇〇
チェルダ王国歩兵軍一個軍団 一〇〇〇〇
ブルガロン騎兵一個軍団 一二〇〇〇
赤狼隊三個大隊 ジェベ遊撃隊三個大隊 七二〇〇
総勢九六四〇〇のレムリア・チェルダ・ブルガロン連合軍。
国王近衛歩兵軍団(近衛歩兵)一〇〇〇〇
国王従士歩兵軍団(従士歩兵)二〇〇〇〇
諸侯歩兵軍団(諸侯歩兵)三〇〇〇〇
エデルナ諸侯・都市連合歩兵軍団(エデルナ歩兵)一〇〇〇〇
国王近衛騎兵軍団(近衛騎兵)五〇〇〇
国王従士騎兵軍団(従士騎兵)一〇〇〇〇
諸侯騎兵軍団(諸侯騎兵)一〇〇〇〇
エデルナ諸侯・都市連合騎兵軍団(エデルナ騎兵)五〇〇〇
総勢一〇〇〇〇〇のフラーリング・エデルナ連合軍。
双方合わせて二十万に達する大軍がレゼェラ村近郊の平野にて、対峙していた。
双方の総司令官であるエルキュール一世、ルートヴィッヒ一世がそれぞれ進み出る。
ルートヴィッヒ一世が叫ぶ。
「レムリア帝国、エルキュール一世陛下。あなたに求めることは三つ。一つ、我が同盟国であるエデルナ王国から即刻立ち去ること。二つ、レムリア大主教座を解放すること。三つ、アドルリア共和国の攻囲を解くこと。それさえ承諾してくれれば、私はあなたの背には剣を向けない」
エルキュール一世が叫ぶ。
「ご心配はいらない。私はエデルナ王国を僭主の手より、解放しに来ただけ。我が国に亡命中の正統なるエデルナ国王を即位させ、エデルナ王国の安全保障が確立すればすぐにこの地から去ろうではないか。レムリア大主教座も、正統なる持ち主であるセシリア一世聖下にお返しするつもりだ。アドルリア共和国も……勿論、彼らが私に頭を垂れるというのであれば、喜んで攻囲を解こう。納得頂けたなら……即刻、本国にお帰り願おうか」
ルートヴィッヒ一世が叫ぶ。
「先に軍を退くのはそちらだ。侵略者め!」
エルキュール一世が叫ぶ。
「私は父祖の土地を取り戻しに来ただけのこと! フラーリングの僭主よ。悪いことは言わない。軍を退け!」
そして両者は叫んだ。
「「主のご意思はこちらにある!」」
交渉は決裂した。
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歩兵三個軍団 弓兵六個大隊 ……■
チェルダ王国歩兵軍一個軍団 ……●
ブルガロン騎兵一個軍団 ……◆
赤狼隊三個大隊 ジェベ遊撃隊三個大隊 ……★
※記号一つにつき二四〇〇
※ただし★のみ一二〇〇
国王近衛歩兵軍団(近衛歩兵) 国王従士歩兵軍団(従士歩兵)……□
諸侯歩兵軍団(諸侯歩兵)……〇
エデルナ諸侯・都市連合歩兵軍団(エデルナ歩兵)……◎
国王近衛騎兵軍団(近衛騎兵) 国王従士騎兵軍団(従士騎兵)……△
諸侯騎兵軍団(諸侯騎兵)……◇
エデルナ諸侯・都市連合騎兵軍団(エデルナ騎兵)……☆
※記号一つにつき二〇〇〇
※ただし一部切り上げ
エルキュールは中央、中央右翼、中央左翼にそれぞれ均等に弓・歩の混合部隊を十二個大隊(一四〇〇〇)ずつ、合計四三二〇〇を配置した。
そして中央の両翼に重・中装騎兵混合部隊を二個大隊(二四〇〇)ずつ、そして背後に予備部隊として六個大隊(七二〇〇)、合計一二〇〇〇を配置した。
中央を指揮するのはエルキュール自身でありさらに副将としてステファンをつけた。
中央左翼を指揮するのはガルフィス、中央右翼を指揮するのはエドモンドと副将としてオスカルである。
左翼にはブルガロン騎兵一個軍団を、右翼には重・中装騎兵混合部隊十個大隊、合計二四〇〇〇を配置した。
左翼を指揮するのはアリシア、右翼を指揮するのはカロリナである。
中央前方にはチェルダ歩兵一個軍団(定員割れで一〇〇〇〇)と、赤狼隊三個大隊(三六〇〇)、合計一三六〇〇を配置した。
これを指揮するのはソニアである。
最後に全体の予備部隊としてジェベ率いる遊撃部隊三個大隊(三六〇〇)を配置し、自由行動の権限を与えた。
これに対し、ルートヴィッヒ一世は 中央に諸侯歩兵一二〇〇〇を、そのさらに後方に近衛・従士歩兵を六〇〇〇配置。
その両翼に国王近衛騎兵を二〇〇〇ずつ、さらに背後に予備として一〇〇〇を配置。
この合計三八〇〇〇を自らの指揮下とした。
中央前方にはエデルナ歩兵・騎兵一五〇〇〇を配置。
その指揮をチュルパンに託した。
中央右翼には従士歩兵一二〇〇〇をやや後方斜めに配置。
一方で中央左翼には従士歩兵一二〇〇〇及び諸侯歩兵一八〇〇〇をやや前方に配置。 中央右翼の指揮はマラジジに、中央左翼の指揮はブラダマンテに任せた。
右翼には諸侯騎兵一〇〇〇〇を、左翼には従士騎兵を一〇〇〇〇配置。
右翼の指揮はアストルフォ、左翼の騎士をローランに任せた。
ルートヴィッヒ一世はレムリア軍の布陣を見ながら唸った。
まず目を引くのが中央の出っ張り。
ここには精強なチェルダ歩兵と赤狼隊が配置されている。ここだけを見ると、レムリア軍の狙いは中央突破に見える。
が、しかし豊富な側面の騎兵戦力を見落としてはならない。
(エルキュール一世の狙いは優勢な騎兵戦力による側面攻撃……に見せかけた、中央突破か? こちらが側面からの攻撃を恐れ、中央を手薄にした段階で中央へ総攻撃を仕掛けてくる。……と見せかけ、側面が本命か? 否、両方が選択肢にあると見るべきだな)
一方でエルキュールもフラーリング軍の布陣を見ながら唸っていた。
こちらもレムリア軍と同様に中央に出っ張りを作っている。
しかし……ここに配置されているのはレムリア軍と真逆、質に劣るエデルナ王国の騎士や傭兵だ。
ルートヴィッヒ一世はこの戦力に関しては最初から捨て駒とするつもりと見るべきだろう。
そしてその捨て駒の背後は、分厚い歩兵の層。
狙いは中央突破……否、レムリア軍の中央突破を警戒した分厚い防御陣と考えるべきだろう。
問題は中央右翼と中央左翼の歩兵の兵数と、そしてその配置の形。
中央右翼の方が数は少なく、やや後方に。
そして中央左翼はその逆で数は多く、やや前方に。
よく見ると、配置されている。
(ルートヴィッヒ一世の狙いは分かりやすいな。中央右翼と中央の歩兵による遅滞戦術、そして中央左翼による、我が軍中央右翼の突破……つまり斜線陣だ)
双方、相手の戦略は九割方、陣形を見ただけで見抜いていた。
ルートヴィッヒ一世は顎に手を当てながら思案する。
(中央の厚みを勘違いしてくれれば良いが、敵の不注意を願うべきではない。こちらの狙い、斜線陣は見抜かれていると考えるべきだ。勝敗の鍵は中央と、そして右翼が持ちこたえている間に、中央左翼が敵の歩兵陣形を突破できるか否かだが……多少なりとも、工夫が必要だな)
エルキュールもまた、腕を組みながら思案する。
(中央突破、もしくはそれを囮にした側面攻撃。どちらも狙える布陣にしたつもりだが、おそらくは見抜かれているな。勝敗の鍵は中央右翼が敵の攻撃を持ちこたえている間に、左翼、右翼、中央のどちらかが敵の戦列を打ち破ることができるかだが……普通にやれば突破はできないな。小細工が必要だ)
そして二人は笑みを浮かべた。
((どう転ぶにせよ、勝つのはこちらだ))
斯くして、戦いの火蓋が切られた。
「「神は我らと共にあり!」」
「「神は我らと共にあり!」」
「「神は我らと共にあり!」」
「「神は我らと共にあり!」」
「「神は我らと共にあり!」」
双方、メシア教の聖句が唱えられるなか……
まず真っ先に激突したのが、ソニア率いるチェルダ軍とチュルパン率いるエデルナ軍であった。
同時にエルキュール、ルートヴィッヒ一世のそれぞれの指示で中央の両翼を守る騎兵も飛び出していく。
「腑抜けたエデルナの
「エデルナの勇士たちよ! 臆することなかれ! 敵は異端者!! 神は我らについている!!」
真っ先に赤狼隊とエデルナ騎士が激突する。
三六〇〇の赤狼隊と五〇〇〇のエデルナ騎士では、数の上では勝つのは後者だが……
「私に続け!!」
「女王陛下に後れを取るな!」
「我らの勇名を、エデルナに轟かせろ!」
「殺せ、殺せ!」
「皆殺しだ!」
「異端者をぶち殺せ!!」
真っ白な鎧を真っ赤に染め上げていく赤狼隊に対し、エデルナ騎士は引け腰だ。
「っひ!!」
「な、何なんだ、こいつら!」
「た、助けてくれ!!」
あっという間にエデルナ騎士たちの陣形は散り散りになり、突破される。
が、その後に待ち構えているのはおよそ一〇〇〇〇の分厚い歩兵の層。
如何にソニア率いる赤狼隊が精強とはいえ、そう簡単には……
「と、止まらないぞ!!」
「っひぃ!!」
「無茶苦茶だ!!」
脆弱な槍衾など、赤狼隊の前では意味をなさない。
あっという間に戦列をかき乱していく。
そして生じた傷口にチェルダ歩兵たちが斬り込んでいく。
「赤狼隊に負けるな!!」
「女王陛下に続け!!」
あっという間にエデルナ騎士・歩兵部隊が突破される……
かと思われたその時だった。
「これ以上は行かせませんぞ。ソニア陛下」
「この腐れ坊主が!!」
司教杖を手に持つチュルパンがソニアを止めた。
ソニアの足が止まったこと、そして如何に精強なチェルダ軍とて一息に分厚い戦列を打ち破ることは難しかったのか……
徐々に中央前列は乱戦と化していく。
もっとも……
「っく……何という力!」
「坊主が戦に出てくるな!!」
中央前列が破られるのは時間の問題である。
しかしエルキュールとルートヴィッヒ一世の表情に変化はない。
二人にとって、ここまでは想定内。
勝敗を握るのは……両側面の勝敗である。
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