幕間 お城では・・・・・・

「どうしてこうなったんだ・・・・・・?」

 王宮内の自室で一人愚痴るのはミファの仲間だった魔法使い、現宮廷魔術師のケエルだった。

 眼鏡をかけ如何にも頭のよさそうな雰囲気を醸し出してはいるがその表情には焦りが出ていた。

 宮廷魔術師の仕事は王族に支え国を発展させる事。

 言ってみればエリートである。

 本来なら鼻を高くして堂々としているはずがケエルにはそんな余裕は無かった。

 彼が焦る原因はただひとつ。

 王都の衰退である。

 本来ならば勇者を生み出した国、という事で他国に大きな顔が出来る。

 しかし、国のイベントを切り上げミファはさっさと故郷に戻ってしまい、それ以来音沙汰無し。

 国としてのアピール機会を逃してしまった。 

 それならば、仲間である自分達が頑張れば良いのだが、その頑張り方を間違えてしまった。

『世代交代』と言う名目で若い才能のある者を優遇した方が良い、と進言し国王は実行した。

 しかし、セイラが反対をした。

『無理矢理な世代交代は国を傾けてしまいます。慎重に時間をかけた方が良いと思います。』

 が、この意見を国王は無視した。

 結果、セイラは王都を出ていってしまった。

 今となってはこれがまず失敗の原因のひとつとなってしまった。

 ケエルから見てもセイラは先見性があり国にとって重要な存在だった。

 しかし、セイラは王族としての順位は低く発言しても他の王族から無視されるだけだった。

 結局はこの世代交代は逆に優秀な神座うを失うはめになってしまった。

 その後も色んな企画をやって来たがパッとはせず、王都民からの不満の声が出てくるようになった。

 起死回生として行われた他流試合も結果は知っての通り。

 騎士団からも辞職者が出る状態である。

「やはり・・・・・・、アイツと仲良くしておけば良かったのか。」

 アイツとは勿論、ダイナの事である。

 勇者の兄、というだけで旅に同行していた彼を最初から見下し、ミファの見てない部分で嫌がらせもしていた。

 まぁ、ミファにバレて、『お兄ちゃんに意地悪する人なんて仲間なんかじゃない!!』と言われ口も聞かれなかった。

 今、思えばダイナの実力を少しでも認めてあげれば良かったが、ケエルやマリンに当時はそこまで考えてはいなかった。

 あくまで勇者は自分達の出世の道具であり仲間としての感情は持っていなかった。

 今更、後悔しても後の祭だが。

「ケエル、いる?」

「マリンか・・・・・・。」

 部屋に入ってきたのは宮廷賢者となったマリン、王太子付として働いている。

「だいぶ疲れているみたいだな。」

「王太子のセクハラが酷いのよ・・・・・・、私の進言もまともに聞いてくれないし嫌になるわ。」

 王太子は所謂俺様タイプの性格でマリンがまともな意見を言っても何故かナナメ方向に理解してしまう。

 更に自分の思い通りにならないと当たり散らす。

 実はそれを止めれるのはセイラで、王太子がワガママを言うのであればセイラは鉄拳制裁を与えていた。

「こんな筈じゃ無かったよな・・・・・・。」

「そうね・・・・・・、ねぇ行ってみない?」

「彼処か・・・・・・、俺達に会ってくれるだろうか?」

「行かないよりはマシだと思うわよ。このまま此所にいても解決にはならないわよ。」

「そうだな・・・・・・。」

 二人が向かう決意をしたのはマハラ村だった。  

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