ジャイアントキリング
国王の挨拶と開会宣言によりいよいよ他流試合が始まった。
今回は魔王討伐後の開催であり、勇者パーティーが来賓として来ている事もあり多いに盛り上がっている。
各国にとってはプライドをかけた戦いであり、ここで不様に負けたら国にとってもマイナスイメージがつく。
交流戦であるが出場する戦士達は国を背負って戦っていて真剣その物だ。
それは勿論タハールも同じである。
エラコンドで作られた鎧を着て出番を待っている。
何度も動きをチェックしている。
重さは感じず、逆に動きやすい。
これならいつも以上の戦いが出来るだろうし、負けたとしても不様な目には合わないだろう。
「ハシマラ国代表タハール殿、出番です。」
「わかりました。」
タハールは気合いを入れて闘技場へと足を踏み入れた。
目の前には豪華な装飾が施された鎧を着た戦士が待ち構えていた。
相手はマジーナル王国一の戦士だ。
観客もマジーナルに声援を送る者が多い。
つまりは完全アウェイである。
ふと観客席に目をやるとダイナ達の姿が目に入った。
ダイナは親指を立てた。
少ないが自分には味方がいる。
それだけでも心強い。
兜をかぶりいよいよ試合が始まった。
最初に仕掛けて来たのはマジーナル側だった。
一気に試合を決めようと攻めてくる。
剣と剣がぶつかり合う音が場内に響く。
二人の一歩も譲らない戦いっぷりに会場内は多いにわく。
何度も鎧に剣が当たるが衝撃はあるが体にダメージは無い。
逆に相手の動きが見えて冷静に捌ける。
(これもこの鎧のお陰か)
タハールは攻撃を受けながらもそんな事を考えていた。
ふと相手と視線があった。
(だいぶ焦ってるな・・・・・・。)
相手はどうやら自分の思っていたのとは違っていたらしく焦りの汗をかいていた。
これはタハールにとってはチャンスである。
一旦距離を取り、今度はタハールが攻撃に出た。
一心不乱に剣を振りかざす。
鎧に当たるがだんだんと相手の鎧が傷ついていくのがわかる。
相手がだんだんと苛ついて来ているのもわかる。
動きも粗野になって来て隙が出来始めた。
(チャンスだっ!)
全力で剣を振りかざした。
剣は兜に当たり、その瞬間兜が真っ二つに割れた。
突然の事に一瞬空気が止まった。
どうやら強度が耐えられなくなったみたいだ。
呆然とする相手にタハールは剣を目の前にたてつけた。
「このまま戦いを続けますか?」
「・・・・・・俺の負けだ。」
一瞬の静寂が場内を包む。
その静寂が破られたのは拍手音だった。
拍手をしていたのはミファだった。
それがきっかけとなり少しずつ拍手の音が大きくなり場内を埋め尽くさんばかりの大歓声が響き渡った。
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