0x0013 食卓が賑やかすぎるのも問題だと思う

 食堂には長テーブルが置かれ、白いテーブルクロスが敷かれている。


 ホストであるジネヴラが一番奥の席、その右にデアドラ、マルティナ、僕はその隣になっている。相対するようにしてガシュヌア、ドラカン、ラルカン、ファンバーが座っている。

 マルティナの方を見ると、頬を紅潮させ所在なさげにしていた。


 DOGの二人は何食わぬ顔。

 こいつらマジで諜報機関員だと思う。実際に僕の世界でもそうだった。諜報機関がハッカーと接触してくるのは珍しいことじゃない。


 さすがに食事会に不愉快な顔をしているのも何なので、テーブルを見渡す。

 女性陣はイブニングドレスを華麗に着こなしていた。背中はそれほど開いてないが、丈の長いスカートも艶やかな色で目に華やぎを与えてくれる。


 ラルカンの突然の訪問は歓迎されてはいないものの席はある。

 ただ、これからどうなるのか見当もつかない。


 ジネヴラとも口聞けてないし、ちょっと気まずい。

 全員がテーブルの席についたのを確認し、ホストであるジネヴラがグラスを片手に立ち上がった。

「この度は私達の食事会に来て頂き、歓待の用意をさせて頂きました。今後とも友誼ゆうぎを深めたく、これを機にしてお互いの繁栄の基礎となればと思います、乾杯」


 彼女の乾杯の言葉は淀みなく、いつになく凜とした声だった。さすがは成績優秀者。淀みなく、そして、聞き心地のよい発音は耳朶じだに爽やかに残った。

「乾杯」


 さて、ここで人間関係を整理しよう。


 まず、マルティナはガシュヌアと距離を詰めたいと思っている。これはジネヴラの希望でもある。

 次にラルカン。こいつが一番ややこしい。ラルカン自身はマルティナに好意を持っている。しかし、ファンバーはゲイで彼にも想われている。

 ラルカンを応援すると、僕はジネヴラ、マルティナ、ファンバーに恨まれる。

 マルティナを応援すると、ラルカンの恨みを買うことになる。

 多くの人が幸せになるなら、少数の犠牲は構わない。

 となると、マルティナを応援する方が妥当。


 マルティナを見れば、チラチラとガシュヌアの方を見ている。何だろう。

 こんな可愛い一面を見たのは初めてかもしれない。最初の口を開くのは僕がいいだろう。

「ガシュヌアさん、どこの国から来たんですか?」

「色々と回っていたからな。お前と同じで東方の国だ。Japanという」

「えっ、マジで?」

「嘘言って誰が得をするんだ」

「えーと、チョンマゲとか結ってたりします?」

「何を言ってるんだ?」

「僕の国だとチョンマゲ結っている奴とか居ましたよ。今頃だと」

「風変わりな風習があるようだな、お前の国は」


 ちょっと日本語に切り替えて反応を見てみよう。十六世紀の日本語だと通じないかもしれないけれど、最低限の会話ぐらいはできるはず。

『ガシュヌアさん、日本語で会話できます?』

『できる』

『実は耳聞こえてるでしょ?』

『何故そう思った?』

『読唇術で音素の違う言語の会話ってできませんよ。耳で聞こえてても難しいのに』

『引っかけか?』

『意趣返しですよ。話は変わりますけど、ガシュヌアさん、女性経験ってどうなんですか?』

『また、これを言わないといけないのか。ユウヤ、お前は何を言っている?』

『マルティナがガシュヌアさんに好意持ってるみたいなんですよ。でも、ガシュヌアさんが女に不誠実な男だったら、マルティナに言っておかないと。僕にとって死活問題なんです』


 テーブルで満たされる言葉が日本語になり、皆は戸惑っている。

 食事会の中、皆が参加できない会話はマナーとしては最悪。でもマルティナについては進展させたい。


『女と付き合っている時間はない』

『何ですか、それ? ちょっとイケメンだからって、調子乗ってません?』

『俺はマルティナのことを何もしらない。彼女にしたってそうだろう。マルティナは恋に恋しているだけなんじゃないのか?』

『見て下さいよ。マルティナの表情。あっ、伏せちゃった。今日もガシュヌアさんが来るっていうので、一日中、厨房に籠もって料理してたんですよ。可愛いと思いません? 僕なんか会った初日は変態扱いでしたよ』

『正直に言え。何かやらかしたのか?』

『何もしてねえよ! 二十四時間耐久ジェントルマン舐めなんなよ! とにかく料理のことでマルティナを褒めてやって下さいね。後、マルティナとは誠実にお願いします。でないとジネヴラに文句言われそう』

『また、面倒なことを』


 日本語で会話していると、場が僕たちの方に集中している。

 やっちゃった感がハンパない。笑顔をつくって誤魔化した。

「いやあ、ガシュヌアさんと出身国同じみたい。故郷の話で盛り上がっちゃった。マルティナ、ガシュヌアさん、君の料理美味しいって」

 マルティナが頬に朱がさし、小さな声がした。

「よかった」

 はにかみが混じった声だった。先ほどからチラチラとガシュヌアの方を見ているのはわかっていたけれど。

 首を動かしラルカンの方を見ようとするが、彼がどういう表情をしているかまではわからなかった。でも、重低音が混じった溜息が聞こえてきた。ハートをプレス機で圧搾したらこんな音になるのだろう。

 でも、ファンバーから刺されることはなさそう。テーブルの下で彼はやったとばかりにグーを握っていた。


 すると、ガシュヌアが口を開いていた。

「マルティナ、料理が上手いんだな。ここの所、まともな食事をしていなかったので、こういった手の込んだ料理は嬉しい」

 はにかむマルティナ。


 あんた誰?

 と言いたいような変わりよう。まあ、彼女は非常に、非常に魅力的な女性だけれども、僕が知っているマルティナはこうじゃない。


 女ってわからねえ。本当、わからねえ。

 最初に会った時と別人じゃん。


 ねえ、イケメンって絶対、世界をオカシクしてるよね?


 それにしても、食事会でのテーブルは会話がされるものだと思っていたが、誰もが口を開こうとはしない。ナイフとフォークが動いている音だけしかしないんですけど。

 食事会なんだけど、食べ物の味がしないってか、胃がキリキリするんですけど。


「ユウヤとガシュヌアさんって同じ国の出身だったんですね」

 ジネヴラが会話に加わってくれた。ナイス!

「ああ、そうだな」

「ガシュヌアさんの名前って変わってますもんね。ユウヤの名前もファミリーネームが難しすぎて。ファーストネームで呼んでます」

 いや、ジネヴラ。日本でガシュヌアって名前ないから。


「自国でもやっぱり珍しい名前みたいだったよ、なあ、ユウヤ?」

 ガシュヌア太郎とか、山田ガシュヌアとか聞いたことねえよ。

 キラキラネームより酷え。

 突っ込みどころは色々あるんだけど、ここは普通の対応を。


「ですよね。あんまり聞いたこと無いかも」

「ユウヤの名前も、かなり変わってるよ。両手で指さして、親指上げるジェスチャーがあったじゃない。あれで覚えたかも」

「最初は皆沈黙しちゃったから、やっちゃった感がハンパなかったけどね」

「突然のことでビックリしただけだよ。いきなりだったもん」


 ジネヴラと会話をしていると、ドラカンが会話に加わってきた。

「どんなジェスチャーだい? 詳しく説明してくれないかな?」

「人を指さすってあるじゃないですか。人差し指だけ伸ばして、方向指すみたいな」

「ああ、何となくわかる気がするよ、こういう感じかな」

「そうです。そうです。その後に両手の親指を上げるんですよ。やったね、みたいな感じで。で、ユウヤが言ったんですよ。You, Yeahって感じで僕の名前を覚えて、みたいなこと」

「何となく想像つくね。こういう感じかな?」

「あっ、上手いですね。ちゃんと私の方を指させてますよ」

「声の聞こえる方向だからね」


 いや、ドラカン。

 お前もガシュヌアと同じで、目を閉じてるだけで、実は見えんだろ?


 テーブルがやっと暖まりだした。ラルカンとファンバーは二人で魔法の話をしている。会話には加わってこない。まあ、いいか。ややこしくなっていないだけで十分だ。

「マルティナは今でもユウヤの発音おかしいもんね」

「ウウイエアのことか、しら?」

 マルティナ、無理して女言葉使わなくていいから。

「そうそう」

「一度、覚えてしまうと、変わらない、のよ」

 何だろう、合成音声みたいな気がする。

 ボカロでももっといい仕事すると思うよ。


「でも、ガシュヌアさんの名前って、ちゃんと言えてます?」

「厳密に言うと少し違う。英語圏に合わせて発音を変えている」

「へえ、ガシュヌアさんもユウヤと同じ国ですもんね。発音難しいですよ」

「俺とユウヤは住んでいた地方が違う。それはジネヴラも知っているだろう?」

「あっ、そうですね。ユウヤはアレですもんね」

 アレとか言われちゃったよ。

 まあ、落ち人ということを指してるんだろうけど、アレ呼ばわりされるとちょっと傷つく。

「そうだ。アレだからな」

「それにしても、ガシュヌアさんって、普段って何を食べていたりするんです? マルティナも興味あるでしょ?」

「あ、ああ。興味あるか、しら」

 

 つか、マルティナ、女言葉言えてねえ。

 ……ラルカン、当面、無視の方向。何かヤバそうな雰囲気。

 でも、ファンバー的にはOKのハズ。見れば、”いいね”とばかりに親指を立てていた。

 

 仕方ないんだ、ラルカン。一人の犠牲者だけで、他の皆が救われる。個人の幸福の総計を最大化させるのが良い社会。

 

「米を主食にしていて、主に魚を食べている。ここの食文化にはないが、刺身と言って、新鮮な魚は生で食べる地域もある」

 また、微妙な話題を。日本人に犬肉や猫肉を食べるって言うのと、同レベルだろ。


「それは珍しいですね。美味しいんですか?」

 意外と引かれていない。ガシュヌア、セーフ。

 ……でもさあ。これ、僕が言ったら反応違ったよね。ドン引きされてたよね。

 絶対にイケメン補正かかってると思う。


 あれ?

 ギリギリと音がしてるけど、何だろう?

 

「ユウヤ、歯ぎしりはやめろ」

「……」


 僕は心の中で歯ぎしりをすることにする。

 ギリギリ。


「魚に付けるソースが違う。大豆から作ったソースだ。自国料理はヘルシーなんだが、今だと物足りなさを覚える。特にこのサンドロースを食べたら、この国に来て良かったと思う」

 

「マルティナが料理したんですよ。昨日から頑張って作ってました。ねえ、マルティナ。良かったね、ガシュヌアさんが美味しいって」

「ああ、じゃなかった。ええ、とても光栄ですわ」

 言葉はおかしかったが、マルティナは嬉しそうに俯いた。

 セクシー美女でも、乙女な部分ってあるんだなあって、つくづく思った。


 でも、何だろう。

 ……何かさ、僕の中でモンスターがまた大きくなっていた。

 ガシュヌアって絶対、フラグとか逃さねえタイプ。

 安心してマルティナ任せられない。

 マルティナは親戚でもなんでもない。恋愛感情があるかと問われれば、ないんじゃないかな?

 でも、このモヤモヤした感情は何なのかよくわからない。


 ハッキリ言えることと言えば。


 アーサー王ガシュヌア、いつかお前と決着つけないといけねえようだな。


 フィッシュアンドチップスを食べ終えたデアドラが質問をした。

「ドラカンさんはどうなんですか……? やっぱりガシュヌアさんと同じような食べ物が好きなんですか……?」

「僕は彼とは違う国の出身だからね」


 何だろう。デアドラ。変な妄想とかしてない?

 DOGへの眼差しが、いつもと違う。

 普段、目にしたことのない表情をしている。ほう、とため息でもつきそうな。

 

 僕の中で、デアドラは腐女子slasher疑惑がある。

 彼女の中で、ガシュヌア×ドラカンなのか、ドラカン×ガシュヌアなのかわからないけれど。

 つうか、リアルな人でカップリングするか?


 テーブルは賑やかになった。

 ラルカンとファンバーは会話をしていたが、ファンバーはラルカンの腿に手を置いていた。

 ラルカン、何で気が付かないの? 

 文化が違うから何とも言えないけど、ちょっとスキンシップ過剰じゃね?

 

 救われたのは食事会がスムーズに進んだことだった。

 最初、ラルカンが来た時には、どうなることかと思ったけれど。クリアできそう。


 食事会が終わり、最後にデザートがジネヴラ達によって配られた。

「ところで、DOGに相談があるんですが、聞いてもらえますか?」

 ジネヴラの真剣な気配を感じてか、ガシュヌアとドラカンは姿勢を正す。

「何だ、ジネヴラ?」

「私たちはギルドを設立しようとしています。ただ、懸念していることがあります」

「OMGだな」

「はい、その件です」

「実技は問題ないだろうとは思っていますが、審査会に陸軍省の方にも出席頂けないかと、お願いしたいんです」

「理由を聞かせてもらおう」

「私たちが今回開発したのは治療系の魔法です。『消毒』、『骨折』、『炎症治療』と『火傷治療』。ですから、野営病院などで十分に役立つと思います」


 ガシュヌアは腕を組み、深く息を吸った。

「興味深い。続けてくれ」

「野戦病院の治療は昔のままです。学生時代、論文を書く際に調査しましたが、治療が受けれず、死亡する人がとても多い。昔、父母も治療されずに死亡しました」

「両親は戦争に巻き込まれたのか?」

「はい。彼らは軍人ではなく、一般人でした。野戦病院では軍人に優先的に治療が行われ、一般民は後回しです。マルティナの両親も同様です」


 そうだったんだ。

 確か、孤児院出身と聞いてるけど、戦争で両親を失ってたのか。

 ジネヴラの目は厳しい。いつもの柔和な笑顔はそこにない。


 そして、デアドラは妄想の世界に入ったまま、目がトロンとしていた。

 デアドラさん、結構、重要なパートに来てると思うんだけど。


 次に口を開いたのは、ドラカン。こいつ美男子というか美人に近い。

 女装してもいけるんじゃないの?

 BLには興味はないけど、想像することはできる。

 きっとデアドラの中では、ドラカンが受けで、ガシュヌアが攻めだと思う。これなら僕も理解したくないけど、ギリギリ理解できそう。


「ジネヴラさん、マルティナさんの二人がグリーン・ヒル大学で優秀な成績を修めたことは知っているよ。頑張ったね」

「それも皆の協力があってこそです」

「内務省から魔法統制庁に依頼があったのは聞いてるよ。デアドラさんだったっけ?」

 だめだ。デアドラは意識を飛ばしたままだ。仕方ないので、持っていたワイングラスを皿に当てて、デアドラに注意を促す。

「……ええ、私がデアドラです……」

 ああ、妄想から戻ってきたみたい。

 お帰りと、言ってあげたい。


「君が父君から魔法統制庁に依頼した件は反ヴィオラ派の結束を強くしてしまったようだよ」

 デアドラの表情が戻ってきた。蕩けていた瞳が、形を戻し始めた。


 デアドラ・ゴー・ハンターモード。

 あくどいことを行っても、心を痛めることもなく、貴族特権を乱用。法的にグレーでも、目的を最優先。


 確かヴィオラというのは、このカヴァン王国の王女で、王位継承権を持っており、デアドラは彼女の王維継承について賛成派だったはず。

「父は内務大臣になったばかりですし、前大臣との確執が残っているみたいですね」

 語尾が消えてない。間違いなくハンターモード。

「前回の閣僚入替えは強引だったよね。反ヴィオラ派は利権を手放したくないみたい」

 デアドラは妄想の世界からすっかり抜け出し、色々と考えることがあるようだった。


 ガシュヌアは口にしていたワイングラスをテーブルに置き、ジネヴラの方を向いた。

「戦線で有益な魔法開発をしてるということで審議に陸軍省を参加させたい。そういう理解でいいな?」

「はい」

 ジネヴラの返事に被せるようにしてガシュヌアが口を開く。

「条件がある」


「何でしょうか?」

「ユウヤを借りたい。腕利きの技術者が必要なんだ。機密事項に関わる案件で、スキルのある技術者が一人でも多く欲しい」

 一瞬だけ、ジネヴラが心配そうな顔をして僕の顔を見た。

 彼女は僕の表情を見た後、目つきが変わって、ガシュヌアの方を向きなおった。

 

「ユウヤを借りると仰いましたが、DOGの仕事を手伝うという理解でいいですか?」

「そうだ」

「機密部分には触れなくても構わないので、仕事の概要だけでも教えてください」


「……俺は言葉を読み損ねたのか。機密だと言ったはずだが?」

 ガシュヌアの声が冷えていた。無表情にも段階があったんだった。より表情が硬くなった。


「ええ。ですが、私のギルド員がどうなるかわからないのに、安請け合いはできません」

「ギルド設立の際に、審議で陸軍省の助けは不要だ、という返事と受け取って構わないのか?」

「陸軍省の助けは欲しいです。だからといって、ユウヤを犠牲にしなければならないと言われたら、答えはノーです。任務の内容を聞きたいわけではありません。彼の安全確保ができるのかと、確認したいだけです」


 ガシュヌアとジネヴラの会話は剣戟だった。トーンは抑えられ、感情的にはなっていないものの、互いの闘志が感じられる。


「安全とは何だ? 意味が広すぎて答えようがない」

「負傷、もしくは死亡するような任務ではなく、かつ、刑罰や罰金など受けることがない、という定義でいかがでしょう」

「どんな仕事だってミスや事故はある」

「なら、事故の定義をしておきたいですね。どんなことがあっても事故だったと処理されてしまう可能性があります」


 ふっと息を吐くガシュヌア。簡単に話は済ませられると考えていたらしい。

「ユウヤの任務はネットワークでの調査。調査対象はOMG」

「法的に問題ない方法なんでしょうか?」

「法的にグレー。その為、調査が失敗した場合、起訴される可能性がある」

 

 ガシュヌアの答えを聞いて、今度はジネヴラが黙考を始めた。場の意識がジネヴラに集中したが、物怖じせず、彼女は答えた。

「条件を付けさせて下さい」

「聞かせてもらおうか」

「ユウヤが任務上、どんな行動をしたとしても、責任はDOGにあるとして下さい」

「意図はなんだ?」

「彼は使い捨ての人間ではありません。正規ではない者を仮契約し、問題を起こせば使い捨て、個人の責任にしてしまう。よくある話ですから」

「ユウヤが独断で、無謀な行動をとった場合、責任はとれない」

「でしたら、ユウヤの行動をDOGが管理することを条件とさせて下さい。彼はまだカヴァン王国は不慣れですから、間違いをする前に行動計画の確認をして下さい」

「ユウヤの保護者になれと?」

「そういうことになります」

「いいだろう。今、会話したことは口頭契約になる。不安があるなら契約書を作成し、DOGまで提出。協力期間はこちらで定めた金額を支払う」


 ジネヴラの真剣な表情は、真摯で、僕の身を案じてくれているのだろう。それは嬉しかった。

 だけど、ガシュヌアはマルティナの想い人でもあり、ガシュヌアに対する厳しい物言いは、ジネヴラとして良かったのかな?


「今回、ここで話たことは機密になる。ラルカン、お前もだ」


 女性陣の視線がラルカンに移る。

 ラルカンには餌を与えてはいけないのに。

「そういうわけだから。ジネヴラ、マルティナ。大学での成績では負けてたけど、これからは違うからな。だから、困ったことがあれば、いつでも俺を頼ってくれて構わねえぜ」


 ジネヴラ、マルティナはムッとした顔をしていた。


 どうして、神経を逆撫でする発言しちゃうかなあ。

 そういう所が嫌われてるんだって!

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