0x0004 †††ハッカーの黒歴史†††
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<youyeah>
昔話をしよう。
あの時、僕は「君に読む物語」をぼんやり観ていた。感動するほどの映画ではなかったけど、特にこの台詞が印象に残った。
『あなたの人生は誰のものでもなくあなたのもの。たとえあなたが愛する人を傷つけることになったとしても、あなたが正しいと思うことをして』
その映画を観た後、ベッドに入って就寝していたら、世の中はハッピーだったろう。
だが、不幸にして映画を見終わったのは、深夜二時だった。
真夜中というのは、本人が自覚していなくとも、テンションは上がる。個人的にこの言葉は格言にしたい。
結論を言おう。僕じゃない僕が出てきて、世界は大騒ぎになった。
『あなたが正しいと思うこと』
それはハッキングというアクションで、中国にある石油のパイプラインをストップさせてしまった。成し遂げた時、僕はガッツポーズをとった後、マリリン・マンソンを大音量で流して、踊って踊って踊りまくった。悪魔との契約って本当だったんだ、スゲー。とか、ハイになってた。
パイプラインをストップさせるというのは簡単なことではない。比較対象として、マルウェアStuxnetを例にあげよう。
イランでの核開発を遅らせる目的でこのマルウェアは作られた。遠心分離機を停止させるように作成されたStuxnetは、アメリカとイスラエルの共同プロジェクト下で開発されている。こいつはUSBに入れられてイランの遠心分離機がある研究所にばらまかれた。誰がマルウェア入りのUSBを置いたのかだって? そこは想像力を働かせて欲しい。
まあ、アメリカもイスラエルも関与を否定はしているけどね。
そんなわけで、パイプラインを止めるのを一人のハッカーがやってのけるとか普通じゃありえない。むしろ異常だ。検出限界を超えている。10σ以上。確率で言うのなら、1/65,618,063,552,490,600,000,000以下。これだけの確率密度になると、奇跡としか表現しようがない。
『たとえあなたが愛する人を傷つけることになったとしても』
バタフライ・エフェクトは想像を絶するものだった。
バラフライ・エフェクトの由来は、気象学者であるエドワード・ローレンツの講演タイトルからだ。”予測可能性:ブラジルの1匹の蝶の羽ばたきはテキサスで竜巻を引き起こすか?”
僕の場合、バタフライなんて可愛いものではなく、フェニックスズ・エフェクトと言った方が適切だろう。フェニックスが複数形なのは、それほど酷い有様だったからだ。
パイプラインが止まったおかげで石油価格は上昇。
アデル湾を通過するタンカーの数が著しく増えた。ただ、その年のソマリアは景気が悪く、海賊達が地域経済を活性化する為に大暴れをやらかした。
凶悪な武装化を遂げた海賊達のおかげで、アデン湾を通過する石油タンカーがいくつも
どうしてソマリアの海賊達が凶悪な武装化ができたのか?
それはソマリアに強力な後ろ盾があったからだ。黒幕はロシア。
ロシアっていつも欧米経由のニュースだといつも悪者扱いだけど、
ロシアがそうしたというのには理由がある。ロシアが停滞した経済を活性化させたいから。
冷戦を終えてからずっとロシアは経済活性化をさせようと躍起になっている。国民の貧富差は増すばかりで、不満も溜まりつつあった。
ロシアは有数の原油産出国で主に欧州に輸出している。
原油値段は上がるし、軍需産業を活性化させたいし、クリミア自治共和国の自治権に関する交渉も有利に進めたい。そういう思惑があったらしい。そうすることでロシアは自国経済を立ち直らせたかったんだね。
原油価格が上がって、シェール石油を開発したアメリカは笑いが止まらないはずなのに、パイプラインが止められた北朝鮮&中国のサイバー部隊が、サイバー攻撃を仕掛けたので笑えなくなった。
中国はパイプラインを止めたのは、アメリカのサイバー攻撃と認識したからだ。
そりゃそうだ。普通はそう考える。僕がやりましたとか名乗り出た所で、
通常モードでアメリカと中国はサイバー戦争ギリギリの緊張状態。
そんなこんなで、アメリカの貨物列車があちこちで衝突事故を発生させて爆発。路線は使えなくなりシェール石油の輸送問題が更に深刻化してしまった。
また、これら一連の事件があって更に原油価格が上がってしまった。
産油国はこれを神の天啓として受け止めた。そして、いくつかの富裕層がジリ貧状態になっていたISに金を与えた。
ISの言っていたカリフ制国家再興はそれほど魅力的だったのだろう。そりゃそうか。今まで旧宗主国ということで欧米諸国はやりたい放題してきたからね。
金を受け取ってしまったISは何かアクションを起こさないといけないと、組織再編がままならないのに、シリア内戦で知り合ったいくつかの組織を巻き込んで、ヨーロッパ各国で爆発テロを敢行した。
そして、よせばいいのに俺達はまだ死んじゃいねーぞ、と国際的にアピールした。
報復として欧州はシリア反政府組織の自由シリア軍に大量の資金と武器を投下。
自由シリア軍って超適当な組織で、こいつら別に
内部で統制とれていないし、内部派閥もいっぱいあって常にギクシャク。末端になると金欲しさに誘拐したり、人身売買したり、クルド人にもらった武器売っちゃってイースタンブールでのテロの原因になってたりする。
シリアでのISは第三勢力としてカウントできるほど組織化されていない。
なので、アサド政権VS自由シリア軍という形で内線は移行していった。
アサド政権も酷いけど、自由シリア軍もかなり酷い。
ハリウッド映画のように表現するなら、
どう考えてもハッピーエンドにはならない。
シリア内戦が更に激化し、そして、またもや難民が大量に発生してヨーロッパに押し寄せ、大問題となる。
日本人向けに難民問題をわかりやすく例えるなら、中国で革命が勃発して、それでもって中国難民が日本に1000万人ほど到着しちゃいました。とかそういう状態。
そもそも難民は学歴があり行動力がある人が多い。危険を察知し、避難できる人達なんだから当然だ。就職を斡旋すると、一気に埋め尽くされ、労働市場は買い手市場になり、平均労働賃金も下がってゆく。
生活習慣も全然違うし、空気を読むとか、数で押し切られ、自国民の不満が溜まってゆく。
で、難民の社会福祉とか生活保障とかどうすんのって、なるよね普通。それって税金から予算組んで何とかしなきゃならなくなるわけで。難民に税金をたくさん使っていたら、おいおい、自国民は置いてけぼりかよ、ってなってしまう。
こうした理由で、欧米各国で右翼化が進んでゆく。自国ファースト。結果的にナショナリズムが鼓舞されて、レイシズムが加速する。
そんな状況の中、イタリアで愛国心が強すぎるナポリにいる警官がリビア人一家(移民と全く関係のない:ちなみに彼はクリスチャンだった)を撃ち殺した。
それに怒ったリビアがイタリア政府からの移民ストップ外交の様子をYouTubeで
イタリアの移民ストップ外交には説明が必要かもね。イタリアは大量の移民が来られると困るわけで、リビアに対してお金あげるから移民とか連れてこないで、という約束を何度かしている。
公式では否定しているけど。おかげでアフリカ経由の移民希望者達はサハラのあちこちへ死ぬまで連れ回されることになってしまっていることまで
こんな裏取引を公開されちゃうと非常にまずい。案の定、国際的な大問題になった。
そういうわけで、この世界では活動を控えることにする。悪魔との契約で得た力は、こちらの世界まで持ち越されてしまうらしい。
マキャヴェッリ、レオナルド、パガニーニは偉業を成し遂げた訳だが、僕はそういう器じゃない。
普通の生活を送れたらいい。僕はそれで十分だ。
そもそも、ハッカーが目立つとか本末転倒すぎんだろ。
</youyeah>
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