最終章 現実は続く

終-1 現実は続く B Side

第71話 現実は続く

 感動の目覚めと再開。

 それが終わっても現実は続くのだ。

 あの後簡単な検査をして更に月曜日に詳細な検査をした結果。

 2人は火曜日午後には退院となった。

 そして今日は5月11日金曜日放課後。

 昨日から2人とも登校してきて、今日が2日目。

 3人でのんびりと学校を出る。

「しかし起きたらもうGW過ぎだもんね。参ったなあ」

 知佳は松葉杖をついている。

 無理矢理歩いている感じに近い。

 何せ怪我の後1月以上動かしていなかったのだ。

 本当はもう少しリハビリをきっちりやってからと言われたらしい。

 ただ学校の出席日数の問題もあって、出来るだけ早期にという事で。

 動ける状態を確認した上で両腕松葉杖という結果になったそうだ。

 ちなみに知佳のカバンは三崎君が持っている。

「こっちも参ったよ。当分VRアダプタ使用禁止だとさ」

「それはうちもだよ」

 まあ親としてはそうしたくなるのが人情だろう。

 だから言ってやる。

「当然でしょ。2人とも自業自得です」

 三崎君は意識を失うの覚悟でやったのだから自業自得。

 知佳も話を聞いた結果、自業自得と判明した。

 マインド・アップロードのプログラムを勝手な理論で構築して実行したらしい。

 自作と言うよりネットのあちこちに落ちていたルーチンの寄せ集め。

 そう本人は言うけれど。

 そんな作業をした理由は病院に入院して暇だったからだそうだ。

 全く人騒がせな話である。

 校門前でちょっと待つと、電話で頼んだタクシーがやってきた。

 今の状態の知佳をバスに乗せるのはちょっと危険。

 バスは結構揺れるし、でも座れないし。

 だから来週までは駅から学校はタクシーで往復だ。

 三崎君がささっと知佳がタクシーに乗るのを手伝う。

 私は2人の荷物を持ってタクシー前席へ。

「辻浦駅まで」

 そう助手席からお願いして私はシートベルトを締める。

 なお私が同行しているのは最寄り駅が2人と同じで、かつ学級委員だからだ。

 他意は無い、きっと。

 でも5月とはいえ最近はとっても暑い。

 だからタクシーは本当に助かる。

 バスより遙かに楽だし。

「そう言えば知佳って、結構面白い趣味していたんだね。まさかあんな昭和モダンな中二病の代物、考えつくと思わなかったよ。名前まで中二病っぽいよね、花、月、朗でかげろうなんて」

 わざとらしくそんな話を振ってやる。

「何のこと」

 知佳は勿論知らない。

 でも三崎君はビクッとして、その後爆笑する。

 どうやら三崎君もそう思っていたようだ。

「ねえ、聡、何のこと」

 三崎君、ちょっと焦る。

「いや知佳の隠れたセンスが最高だなあ、という話だな」

「何それ」

 実は知佳には申し訳無いが。

  ○ マインド・アップロードに成功したこと

  ○ 知佳と三崎君の2人のコピーがネット内にいること

 この2点は彼女に言っていない。

 これは主に三崎君の意見。

 そうしないとマインド・アップロードの再実験をしかねない。

 そう三崎君が主張したから。

 私は別に話してもいいと思ったのだけれども。

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