4-2 サイバーテロ
第46話 明日の約束
サイバーテロ?
ちょっと待って。
私の想定外の言葉が出てきた。
うん、ここは無理矢理わかろうとせず、三崎君に聞こう。
「サイバーテロって、どういう事態なの?」
「サイバーテロと言っても色々な段階があるけれどさ。今回企図されているのは全世界レベルのネットワークが制御不能になる位の事案」
そう言われても、ネット閲覧が不可能になる程度しか想像出来ない。
「少なくとも中進国以上は大混乱になる筈さ。例えば流通なんかは今は全部ネット経由でやりとりしているはずだ。普通の会社の契約だのも同じ。VPNとか使って一見専用線っぽく見せているけれど、ベースはいわゆるインターネット。完全隔離された専用線ネットワークなんて、大規模なものはほとんど残っていない。一般電話すらネット経由になって久しいしね。
まあすごく利己的なことを言ってしまうと、この病院が普通通りだったらあとはまあ何とかなるまで待つとかしてもいいけれどね。ここは知佳もいるし、ちょっとの不安材料も残したくないんだ。実際ちょっとじゃ済まないだろうしね」
あ、今私は理解した。
これは確かに三崎君だと。
壮大な話をしているようで、実は知佳しか見ていない。
何か私の感覚がそう認識してしまった。
それはそれで少し寂しい気もするのだけれども。
「何故そんな事が起こるの、誰かがそれで得をするの」
これは惰性の質問だ。
話の内容から当然来るべき、だけれど私の本音とかあまり関係ない。
「今回のは国際的な政治的情勢からと思われるけれどさ、理由なんて結局推測しか出来ない。敵が大混乱を起こせば味方にとってプラス。それで攻撃を仕掛けるにはちょっと双方の規模が違いすぎるけれど、それでも隙を狙って色々な事は起こせるだろう。そんな感じかな。正直僕も完全には理解していない」
うん、ますます三崎君だ。
そう感じる。
「しかしそれを何故三崎君が防ぐ必要があるの。そもそも何故三崎君はそんな事を知っているの。そしてそんな事態を国とかしかるべき処でなく三崎君が扱っているの。意識が戻らないなんて危険を犯して」
そう、これが聞きたかったんだ。
言ってみて気づく。
何故三崎君が意識を失わなければならなかったか。
「僕が、というのが問題なら。限りなく成り行きとしか言い様が無い。たまたまそれに気づいて、状況がわかって、防げる可能性があった。それだけだ」
うん、全くわからない。
「もう少し詳しく説明して」
「ごめん。ちょっと難しい。出来れば朝以降でいい。今日はちょっと遅いし」
「ネット上のコピーに睡眠は必要なの」
「僕には睡眠は必要ない。でも糀谷さんにはあるだろ。遅くなったのは僕が原因だから申し訳無いのだけれど」
時計を見る。
確かに深夜と言っていい時間だ。
言われてみると確かに眠い。
私は元々夜型では無いのだ。
高校受験の勉強でも夜11時を越えたことはまず無い。
でも正直今の質問はあと一歩だった気がする。
色々なにか核心に近づいていた気がするのだ。
何が核心がまだ私自身はわかっていないのだけれども。
でも、だからこそ今は寝ておいた方がいいかもしれない。
頭の回転のいい時に核心を引っ張り出せるように。
「わかった。今日はこれで終わり。でも今度連絡する時はどうすればいいの」
「このSNSで連絡してくれればいい。音声通信でも何でも。必ず出るから」
「わかった。約束よ」
「ああ。確かに」
このやりとりを本物の三崎君としたかったな。
そう思いながらSNS通話をオフにする。
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