第37話 僕の推論
花月朗はきっと今、ミスをした。
でもあえてそれに触れずに僕は続ける。
「何か他に手は無いのか」
「私という
そして私の
私という
その台詞を心に留めておいて、僕はまだ話を続ける。
「防げないならなぜその話を僕にする。僕にしたところでどうにもなる訳じゃない事は花月朗にはわかっていた筈だ。違うか」
「ああ、その通りだ」
花月朗は頷いた。
「理由は特にない。強いて言えば
ではさらばだ。多分もう会うことも無い。何とかして小島知佳を守り抜いてくれ。それだけだ」
花月朗は立ち上がり、そして僕の
今見ると花月朗、案外小柄だ。
だいたいが座っているところか、こっちが座って花月朗が立っているシーンしか無かったからな。
ただ今はその小柄さがはっきりわかる。
そしてその理由も。
だから僕は奴を呼び止める。
「待て、花月朗。いや、小島知佳」
奴は一瞬全身の動きを止めた。
「人違いだ」
「ならこう言い換えようか。小島知佳のマインドアップロード
「勘違いだ。でもそう言うならばだ。聡君の状況証拠とやらを聞こうではないか」
花月朗は戻ってきて、椅子に座り直した。
「さあ、何故そう推理したか、聞かせて貰おう」
「ああ」
僕は頭の中で色々確認しつつ、奴に頷いてみせる。
「まず花月朗が誰かのマインドアップロード
「ああ、それは認めよう。それで、その次は?」
仮面は表情を変えない。
例えそれがアバターであっても。
「次に。僕がノートを取らないという事を知っているのは僅かな人しかいない。うちの母親と、中学2年の時の担任、そして知佳だ」
「それはどうかな。他にも見た人間はいるだろうし、そこから聞いた可能性も否定できまい。実際ブログにちょった書いた程度でも把握するのは簡単だ」
ここは否定できたか。
まあそうだろうなと思いつつ更に続ける。
「更に追加。ついさっき
つまり
「まあそうかもしれないな。それで」
ここはスルーで来た。
でもいい。
「それに。そもそも花月朗は現実世界工作のパートナーとして何故僕を選んだんだ。今までの様子だと他にパートナーがいる気配が無い。仮にあったとすればだ。そこまでサイバーテロは頻繁に起こされているのか。僕はそうは感じない」
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