終演

 ボロボロとなった真破禍将軍をみた紅の忍びは、金色笠男に向かって叫びます。


「おじいさん!」

『四万手救様!』

『「一緒にとどめを』」

『「おう!』」  


 二人は真破禍将軍の前に立つと、体から金色と紅の闘気を沸き上がらせます!


『「真破禍将軍よ!』」

『「ここが年貢の納め時よ!』」

「『「『いざ! 尋常に! 覚悟!」』」』


 おじいさん、四万手救、そしておばあさん、バスターレディーの叫びが、四重奏カルテットとなって辺りに轟きます。


『ふふ! これを見るがいい!』

 真破禍将軍の体より浮かび上がったモノ、それは!

 四万手救とバスターレディーの元の体でした。


『な、なにぃ!』

『わ、私の体!』

『ワシを倒すじゃと? やってみるがいい! その代わり、おまえ達の体がどうなるか……ワ~ハッハッハッハ!』


『……それがどうした』

 四万手救がボソッとつぶやきました。


『え? いや、本当にいいのか? おまえ達の体がどうなっても? 体がないと

”あ~んなこと”や”こ~んなこと”

ができなくなってしまうぞ?』


『もとよりその体は”CD-ROM”のようなモノ。すでに私の正義の心は、この金色笠男に”インストール”されている! 今までの活躍を見ればわかるだろう』


『私も四万手救様と想いは一緒。私の魂は紅の忍び様と共にあります。そして私は……四万手救様のおそばにいることができれば、それでいいのです』


 バスターレディーの話を聞いたオトヒメは、目に涙を浮かべます。

「美しいですわ。これが愛なのですね」


 オオアリクイ達が顔を見合わせます。

「そういえばウラシマのヤツ、どこへ飛んでいったんだろ?」

「そのうち、すずめの王様がくわえて戻ってくるんじゃね?」

「だな、なんだかんだであの二人、仲が良さそうだし」


 真破禍将軍は、より狼狽うろたえます。

「え? いや? あの? 普通、展開としてここは……」


『見苦しいぞ! 真破禍将軍!』

『おとなしく私たちの合体技を喰らいなさい!』

『ちょ! 待て! なに! その、ご都合主義!』


『『問答無用! とうっ!』』

 二人は雄叫びと共に、空高く舞い上がりました。


『ゴールデン!』

『バスター!』

『『キィィーーーーク!!』』


 二人のキックが真破禍将軍を貫くと

『ウギャアァァーーー!』


”ドグワアァァァーーン!”


 真破禍将軍の体は大爆発を起こし、その漆黒の煙は都中に広がりました。


 やがて煙が治まると、後には真破禍将軍の頭が残されました。

『こ、これで勝ったと……お。思うなよ。あ、新たな破禍将軍が……おまえ達の前に……次々と……現れるだろう』


 四万手救が答えます。

『安心しろ。何度現れようが、こちらも第二、第三の四万手救、バスターレディー、そして金色笠男や紅の忍び殿のような新たな英雄が、おまえ達、鬼共を滅してくれよう』


『フフ……そううまく……いくのか……な」

 真破禍将軍の頭は、灰のように消えてゆきました。


「討ちとったぃいーー!」

”ウオオオォォォーーー!”

 災刃坊主の勝ちどきの声に、一同雄叫びを上げました。


     ※

 村の一角に、災刃坊主が苗を植えています。


 一同見守る中、かぐやが尋ねます。

「ねぇ災刃坊主。これって”何の木”?」


「ある御方より頂いた、『名も知らぬ木の苗』じゃ。この噺、いや、すべての噺をお護りして下さることだろう」

「ふぅ~ん。ちょっと”気になる”なぁ~」


 そこへ、赤頭巾が口を挟みます。

「え~と、そこの”かぐや”って

「あたし?」

「私の経験上、これ以上この木について”何の木”とか”気になる”とかは言わない方がいいわよ」

「ふぅ~ん。そうなんだ。なんだかよくわからないけど」


 苗が植え終わったのを見届けた者達は、いつの間にか一人、また一人と元の噺へと戻ってゆきました。


『災刃坊主殿。私の生みの親のことをよろしくお願いする』

 四万手救は、自分の生みの親の居所を、災刃坊主に探してくれるようにお願いしました。

「かしこまりました四万手救様。何か手がかりがあればすぐさまお知らせいたします」

『うむ、かたじけない』


「では拙僧もこれで」

 この噺から消える災刃坊主。

 なにもない虚空の中で、一人叫びます。


『鬼達との戦いは、未だ終わらず!』 

   

     ―― 完 ――

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さいばあ日本おとぎばなし 宇枝一夫 @kazuoueda

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