第28話 セルフワンダーランド2

「あれ、ここは・・・」

「目が覚めましたかアリス、早く起きてください、逃げますよ!」

 微かな微睡みの余韻を感じながら目を見開いて見たら目の前には時計ウサギがいた。

 愛らしい顔と美しい金髪ブロンドを泥で汚し、衣服も所々破けている所から、何かに襲われたのだろうか。


「・・・って、アリス?私はアリスじゃないよ」

「頭を打っておかしくなったんですかアリス、しっかりしてください貴女はアリスです・・・っとそんなことより早く逃げないと奴らが来ます、さぁ走って」


 凛々しくも可愛らしい声を名一杯張り上げて時計ウサギは私を急かす。

 私の右手を握っている彼女の左手は震えていた。

一体何から逃げているのだろう。

 訳もわからず立ち上がろうとした瞬間。


「危ないアリス!」

「きゃっ!?」


 地面を穿ったのはアンティークな細工を施された大剣バスターソード

 時計ウサギが庇ってくれなかったらは首は鄭切られていたに違いない。

 おかげで目が覚めた、事情は分からないけど私は、とてつもない殺意で命を狙われているようだ。


「ちゃは~惜っしい、もうちょいだったけど相変わらず神憑り的な直感回避スキルだぜ」

「あはは、ドッジボールをしたら優勝間違いなしだね!」

「あれ、ドッジボールって避けるだけで勝てたっけ?」

「知らない、でもよくいうじゃん「当たらなければどうということはない」って」

「お、そうだな」


 気でも触れてるような狂人ぶりは、彼らが何者かを物語っていた。

 トレードマークの帽子と兎耳、ここが不思議の国なら彼らは。


「ハッタ、それに三月ウサギ、どうして私達を襲うの!?」

「なんでってさっき説明しただろ、アリスと時計ウサギは抹殺しなきゃいけないんだよ」

「なんで抹殺するの!」

「だからぁ・・・三月ウサギ、もう一回説明してくれ」

「えー、ハッタがやってよ面倒くさい」

「ええっ!?、俺っちばかりに頼らないでくれよ」

「いいじゃんいいじゃん、ハッタが説明してくれてもいいじゃんよーたまには仕事してくれてもいいじゃんよー」

「YO、俺の解説それは大切、だけど今日はやる気ネェから、いけよ兄弟天気いいから、お前がやれば俺が喜ぶ、俺がやれば耳が吹き飛ぶ、だから早くやっチャイナ」


 説明を求めただけなのに二人はその役を押し付けあってなかなか話してくれない。


「ひょっとして忘れたの・・・?」

「「ギクゥ!」」

「まぁ喉元過ぎれば熱さも辛さも忘れるようなマイペースな人達ですからね、説明できなくても不思議じゃないです」

「ヒャッハァー、刺激的な毎日を送るためには過去に縛られてちゃいけないんだよねぇ、常に初心者ニュービー挑戦者チャレンジャーなフレッシュな感性こそが、イケイケでアゲアゲな毎日を演出するのさ!」

「流石ハッタいいこと言うねぇ!」

「だろだろぉー?俺っちイケてるだろぉー?」


「・・・」


 あわよくば説得して懐柔しようかと思ったけど、この会話にならなさから鑑みるに説得は無理だ。

 隙を見て逃げ出すしかないか。


「・・・アリス、私が囮になるので、その隙に逃げてください」

「・・・!?、時計ウサギちゃん!?、駄目だよそんな、囮になるなんて」

「主役の貴女に生き残ってもらわないと困るのですよ、だから・・・聞き分けてください」

 今なお震えている時計ウサギの真摯で切実な懇願に、私は何も言葉を返すことが出来ない。

 もしも私がだったなら、同じ事ができるのだろうか。


「どうして、私なんかのために」

「アリスはこの世界の希望なのです、アリスがいなければこの世界はただのナンセンスに過ぎない、アリスがいるから世界は観測され、物語は意味を持つのです、だからアリスは絶対死んじゃいけない人間なのです」

「・・・」


 理屈として分からないでもない、この不思議の国においてアリスはであり、アリスを中心に起こった数々の出来事ハプニングが物語になる。

 だけど、それならば何故私が狙われているのか、そしてどうして時計ウサギも狙われているのかが分からない。

 それに、誰かを囮にして逃げるみたいな事、たとえ〇〇〇〇に頼まれても出来る訳がない。


「ごめんね、時計ウサギちゃん、私は、だって私の小さな背中じゃあ、時計ウサギちゃんの命を背負えないから、だから、・・・一緒に死のう」

「グスッ、アリスはずるいですよ、私の覚悟をふいにしてそんな言葉で納得させようなんて」

「じゃあ、一緒に生きよう、二人でなら、きっとなんとかなるから」

「はい、アリス、一緒に、生き残りましょう」


「こそこそと何話してたんだぁ?お二人さん、俺も仲間に入れてくれよ~」

「そうそう、こっちも鬼ごっこも隠れんぼも飽きちゃったからさぁ、そろそろ派手にぶつかり稽古でもしたいんだよねぇ」

「やっちゃうよ?やっちゃうよ!?」

「やっちゃえやっちゃえ」

「イクぜ、俺っちの最終秘伝究極奥義、アルティメットスマッシャー!!」

「アタシの超超超~ヤバイ必殺技やっちゃうよ~、ルナティッククレイジーバースト!!」



 派手好きの二人らしい、地面を抉り、土を巻き上げながら、襲ってくる大剣の斬撃と、大砲から放たれる極大の榴弾。

 強大な火力を秘めている反面、派手さに固執し過ぎているために、速度は遅い。


「・・・これくらいなら簡単に見切れますよ」


 時計ウサギは迫り来る斬撃を紙一重でよけつつ、至近距離で破裂した榴弾から飛び出た破片を、大剣で抉られた地面に潜る事によって回避する。


「今です、クロック・リカバリー・フルアクセル」


 時計ウサギの必殺技、回復と防御を同時に行う事で体力を万全の状態にし、一気に走り抜ける。


「・・・!!、時計ウサギちゃん、怪我してる」


 流石に二人同時に放たれた必殺技をアリスを庇いながらでは無理が生じる。

 躱した斬撃の余波は肩を引き裂き、炸裂した榴弾の破片からアリスを守るために、その破片を背中で受け止めた。

 回復を打っても尚、その凶刃の爪痕は残ってしまっている。


「これくらいかすり傷です、アリスが一緒に逃げるって言ったのですから、これくらいの傷で騒いではいけません、むしろこれだけで済んで喜ぶべきなのです」

「ありがとう、時計ウサギちゃん」

「今は、たった二人だけの共同戦線なのですから、これくらい当然です」

「うん、今度時計ウサギちゃんがピンチになったら、必ず、必ず私が守るから」


 時計ウサギの受けた傷は私の傷だ、そう思えるくらいに、痛みを共有しながら、不思議と混沌で溢れかえった世界を二人で駆けていく。


「ありゃりゃ、まーた逃げられちった、また追い付けるかなぁ」

「いーやもう無理でしょ、うちら大剣と大砲で鈍足コンビだし、アリスも起きちゃたし」

「じゃあ喉乾いたしお茶でも飲むか」

「賛成~、でもお茶あるの?」

「無くてもパーteaするのが俺っち達だろぉ?」

「じゃあ早速やっチャイナ♪」

「イクぜイクぜイクぜ、YO、俺達マッドティークラブ、気分はSO、いつも絶頂Vグラフ、単細胞で万歳OH、酒池肉林の宴の始まり、みょうちきりんのウサギの集まり、何年経っても諦めねぇ、それが俺の忍道、残念だってもう進めねぇ、それはとても面倒、いつもワクワクサイヤ人、磊磊落落快男児、俺は不快男児?NoNoへっちゃらマジ卍、yeah!」

「あはは、ハッタ面白過ぎ、もっとやってもっとやって」


「ガンガンイクぜ気持ちはプレイボーイ、簡単アクセのピノキオ乱暴ーイ、闘技場、それは無情、俺達不思議の住人人権ナッシング、それでも趣味パを自由に組めば全員ファッキング、マジ勝てねぇ、マジで強ええ、創造主、まだ分かる、ピノとファム、マジで猿、脳死AI必殺連打で、今日も荒らすぜ弱肉強食、マルチに行っても人権ねぇ、大砲以外はお断り、スタンプ連打で即解散、それが嫌なら即退散、空気を読まずにホストを出せば、鍵部屋だせと罵倒で挨拶、ゲームが駄目ならDVD!グッズを買って格の違いを見せつけbaby、原画プレゼント、何故リアルイベント、都内行く交通費でグッズ買わせろ本当、都内ユーザー、ガチ優遇、オフイベ開催全部都内、だったら俺達イクしかねぇ、不思議の国出て引っ越しするしかねぇ、不思議の国にはなんもねぇ、だから出てぇ、Nothing Gold Can Stay・・・」

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