本ってやつはさぁ…

休みの日に私がすることといえば、大抵決まっている。

二度寝するか、少し足を伸ばして1人カラオケに行くか、図書館へ行くかだ。イレギュラーに気に入った展覧会なんかがあれば美術館や博物館に行く。あとは、こうやって思いついたことをエッセイにしたり小説を書いたりということをしている。基本的に1人でいるし、1人でできることしかしない。

何かで以前読んだけれど、人間には2種類のタイプがいて人と出会うことでエネルギーを充電するタイプと、1人でいる時にエネルギーを充電するタイプがいる。私は圧倒的に後者だ。

それで今日の休みは(休日がカレンダー通りではない仕事をしているので)図書館へ行って来た。



ところで、私は図書館で本を貸りる時はこんな風にしている。

1.小説系

2.その時自分が興味を持っている分野に関する本

3.これから勉強したい分野に関する本

4.貸りる予定のなかったけれど、パッと目についた本


だから、大体私の貸りる本は結構分野がばらばらでまとまりがなかったりする。小説だと、私は最近「新編 日本幻想文学集成」にハマっていてそれを貸りてきた。また、2.に当てはまるものだと、グスタフ・メンシング著の「宗教とは何か」とブライアン・ウィルソン著の「宗教の社会学」が面白そうだったので貸りてみた。最近は宗教社会学に興味があってそこらへんの棚をよく見ている。

他に3.に当たるのがマーク・ミカーリ、ポール・レルナー著の「トラウマの過去 産業革命から第一次世界大戦まで」を貸りてみた。心理学の本で、私は正統な精神分析よりは異常心理やヒステリー、精神病などに興味があるのでチョイスしてみた。

今回は、4.に当たる本を多く貸りてきた。「三田文学名作選」はなんとなく目についたから、読んでみようと手に取った。私はどうしても小説より、学術書に偏ってしまうので小説も読んでバランスを取りたい。

他にミルチア・エリアーデの「シャーマニズム 上・下」。オカルト好きとしては学術的にこうした宗教的儀式なんかを考察したものは大好物だ。

またディディエ・アンジューの「集団と無意識」。最近は集団や他者について考えることが多くて、興味を惹かれた。他に「日本の教育と社会⑦ 子どもと性」。ジェンダーの棚にあった本だが、最近は性に関するもの、とりわけ女性に関する性表現などが話題に上がることが多い。性表現や特定の性に関する認識は社会環境に依るところが非常に大きい。男女に関するジェンダーバイアスの刷り込みは、6歳以前にすでに始まっているとの研究もあり改めてこの分野について学ぶことは新しい発見がありそうだ。

そして、少し趣は変わるがウォルター・ケンドリック著の「シークレット・ミュージアム 猥褻と近代の検閲」。これは偶然見つけた本だが、私は歴史の暗部に生まれた地下出版なんかの類も結構好きだったりする。クールベの「世界の起源」なんて、最高に笑える。ちょっとめくって面白そうだったら、私はとりあえず読んでみる。あまり効率の良い読書ではないのだろうけど、これで意外と面白い出会いがあるのだから舐められない。

今回私はこれまでだったら一番手に取らなかっただろう本を貸りてみた。それが村上春樹の「雑文集」だ。これは今読んでいるのだけれど、1970-2010までの未収録・未発表の文章を村上自身が選んだ69篇を編んだものだ。自選のエッセイ集のようなものだろうか。私は村上春樹のことは好きではない。あの文章がとてもぞわぞわとする。まぁでもエッセイなら読めるかなという軽い気持ちで貸りてみた。これがなかなか面白くて、たまに自意識たっぷりの特有の文体にイラッとするのだが読んでしまう。

たまたま目についたものを貸りてきて読んでみることは、こういう新しい出会いと発見があって好きだ。



私は本が好きだけれど、物理的なその重さは結構こたえる。

「本ってやつはさぁ…重いんだよ、まったく」

思いの外厚みのある本を貸りてきたせいで、リュックサックしか持って行かなかった私は結構苦労した。いつもリュックサックとは別に持っていくエコバッグの大切さを痛感した。

私は図書館の帰りに必ず寄るところがある。本屋だ。本屋に並ぶ週刊誌や雑誌や文庫本をなんとなーく眺めるのが好きだから。今週号のニューズウィークとエコノミストが欲しくて行ったけれど、エコノミストの特集がそれほど惹かれるものではなく、結局ニューズウィークと東洋経済(特集は宗教と金)を買って帰った。

こういう予期せぬ変更を、私は結構楽しんでやっている。



さて、もう一つ帰宅してから予期せぬ出来事があった。

貸りる予定の本に、中村元の選集2冊を入れておいたはずなのに見当たらない。図書館の一般観覧席の上にしばらく置いたまま別の棚を巡っている間に誰かが持って行ったのだろうか?

向かい側にちょっと変なおじさんがいたから、もしかするとその人かもしれないし、あるいは図書館の職員が片付けたのかもしれない……。

真相は分からないけれど、手元に置いたはずの本が手元にない。


まったく、本ってやつはさぁ…。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る