第39話 大事な話 4

 ――やがて、あまねは暮斗に最大の信頼を寄せるようになった。気持ちを分かち合う友として、気持ちを理解してくれる仲間として、自分の諭してくれる道しるべとして。



 それは甘くとろける、依存心に近い恋のようなものだった。



「……ほんと、いい奴」



「ん? なんか言ったか?」



「別に。なんでもないわよ」



 この気持ちを知られるわけにはいかなかった。



 たった数日の付き合いだが、今の関係が壊れることを恐れたのだ。拒絶されてしまってはもうこの後の物語はないだろう。



 だが焦ることはない。



 だって『あたし』が『暮斗』から離れることなんて絶対ないんだから。



 たとえどんなことがあっても。



「……ねぇ」



「ん? なんだ?」



「……もしよかったら、あたしもあんたの手伝いさせてよ。ヒーローと怪人が仲良くなれる世界ってやつ」



 あまねは愛の言葉は告げなかった。



 だが代わりに共に寄り添いたいという意志だけは伝えた。これから先もずっと共にいたいという、小さな決意。



 どこまで伝わったのか定かではないが、暮斗はあまねの期待した返事を寄越す。



「ああ、頼んだ。お前がそう言ってくれることで俺は未来へ繋がる最初の一歩を踏み出すことが出来る」



「……よし、やるわよ!」



「それより、まずは直近の問題だ。一週間後、絶対生き残るんだぞ」



「もちろんよ。何が何でも生き残ってやるわ」



「頼んだぜ。せっかく馬が合うゲーム仲間を見つけたんだ。やる相手がいなくなったら寂しいからな」





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る