第18話 ドアの前
暮斗の部屋の前に着いたあまねは、はぁはぁと息を切らせていた。ゲームをするのが楽しみで仕方なく、走ってきたのだった。
念願の時が来て、インターホンを押そうとしたあまねだったが、押す直前にピタリと動きを止めた。
佳奈と愛梨沙の言ったことがフラッシュバックしたのだった。
暮斗の顔や性格は、あまねから見ても別段悪くなかった。どころかかなり良い部類である。適当具合とノリが一致していた。
故に、少し意識してしまう。意識し始めると途端に暮斗のことがカッコよく見えてきて困るものだ。
一応命の恩人でもある。例えるならば窮地を救ってくれた王子様だ。
――いかんいかん。
ロミオとジュリエットを馬鹿にしたばかりで似たようなことをするわけにはいかない。
案外自分は愛梨沙の言う通り流されやすい性格なのかもしれない、とあまねは苦笑し首をかくん、と落とした。
そして大きく息を吸い、吐いて両頬をパンと叩く。気分を切り替えて、インターホンを押した。
ぴんぽん、と静かな建物内に響く小気味のいい音。
妙にそわそわして、髪型などを直しつつ待っていると、しばらく時間を置いてから暮斗が現れる。
「おう、やっぱり来たか。待ってたぜ」
「う、うん。来たわ」
「ちょっと待たせたな。電話しててさ」
「別に気にしてないわよ。それより……ね?」
「そうだな。ファイターに言葉はいらん」
その言葉通り、二人は大したことを語るでもなく、息のあったコンビのように行動を開始。一分後にはもうゲームを開始しできる態勢が整っていた。
まるで旧知の仲である。
準備が完了すると、そのままテレビの真ん中に陣取り対戦を開始した。もう二人の間に言葉はなく、ただ拳で語り合うのみとなっていた。
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