第66話 ビタミンカラーのエナジーパフェ

 ヨルベナさんが少しだけ打ち解けてくれたようなので、私はもう一つのお届けものをテーブルに並べた。


 白樺の編みかごに入っている蓋付きのガラス瓶が3つ。

 ピンキングばさみでギザギザに切ったチェックの布をかぶせてラフィアで結んだガラス瓶には、それぞれにドライフルーツが入っている。


「え、と、こちらも、オリオンさんからです。ドライフルーツです。中庭パティオで収穫した果実で作ったものです」


「ハーバルスターの中庭のフルーツですか、それはありがたいです。それを使えば、きっと、魔法をかけられる」

「魔法? 」


 私が訝し気な声を出すと、ヨルベナさんはさっと顔色を暗くして下を向いてしまった。

 私は、あ、またやってしまった思い、慌てて声をかけた。


「ハーバルスターのごはんは、いつも私に魔法をかけてくれます、楽しくなります」

「そう、ですか。そう、ですね。オリオンさんのつくるものは、なんでも気持ちを明るくしてくれます」

「食べたことあるんですね」

「はい、海岸通りに店があった頃には、店が終わった後はほとんど毎日行ってました」


 ヨルベナさんは、なつかしそうに目を細めて言った。


「これは、何の実ですか」


 ヨルベナさんは、びんを一つ一つ手にとって眺めている。


「ローズヒップ、ブルーベリー、ゴールデンベリーです」


 私が答えると、ヨルベナさんは、目を閉じて何か考え始めた。

 ほどなくヨルベナさんは目をあけた。

 顔色がよくなっていて、穏やかな活力がみなぎっている。

 

「お時間だいじょうぶですか。ちょっとお待いただいてもよろしいでしょうか」

「あ、はい、少しでしたら」


 私が返事をすると、ヨルベナさんは、びんを抱えてキッチンへ入っていった。

 キッチンからは鼻歌が聞こえてくる。

 その鼻歌もどんどん明るく楽しいメロディになっていく。

 オリオンさんの差し入れが、本当に魔法をかけてしまったのかもしれない。


「お待たせしました。おつかいにきてくださったお礼です。どうぞ召し上がっていってください」


 ヨルベナさんの作りたてのパフェが軽やかにサーブされた。


「かわいい、ですね。中庭のフルーツたちが、なんだかキラキラ光ってる」

「金箔をくだいて入れたグラニュー糖をまぶしてあります」

「パフェに金箔、でも、和風ではないですね」


 パフェグラスのベースは、コーンフレークではなくスムージーのアイスキューブを盛り込んである。

 そこにさらにスムージーを注いで、スーパーフードのフルーツやナッツが彩り鮮やかにトッピングされている。

 ビタミンカラーのエナジーパフェ。


 

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