第59話 デザートはフローズンサワーテイスト
世界サンドのフルコースも、いよいよラストディッシュ。
フルコースのしめくくりのデザート。
ここまできて、最後に香りや味が他のものと混ざらないで美味しさを保つことのできるデザートってあるのだろうか。
「全部食べられるかなと思ってたけれど、二人で食べたらちょうどよかったみたい。デザートも楽しみ」
ツキヨノさんの目は期待に満ちている。
「では、デザートに入ります」
私は勿体ぶって言うと、最後の一角をお皿に取り分けた。
何か赤いフルーツのようなものがのぞいているが、輪郭ははっきりとしていない。
食べてみないとわからないタイプのフィリングのようだ。
「きれいな赤。ラズベリー、イチゴ、クランベリー、カシス、ローズヒップ、ハイビスカス、バラ……」
「さあ、どうぞ」
「はい、いただきます」
世界サンド最後の一切れを両手で持つと、ツキヨノさんは目を閉じて口にした。
「ひゃっ、ひゃっこい」
ツキヨノさんは慌ててパンを皿に置くと、両手で口を覆った。
「ひゃっこい? 冷たいフィリング? アイスかシャーベットのクールフィリング!? 」
「そうじゃなくって、あ、でも、フローズンヨーグルトみたいだから、クールなところは当たってます」
私もひと口食べてみた。
「ほんとだ、ヨーグルトのアイスかシャーベットみたい。そこにジャムがたっぷり練り込んである、このジャムは、サクランボかな。プリザーブのサクランボ」
かちかちに凍らせてあったヨーグルトのアイスクリーム。
酸味の勝ったサワーテイストは、サクランボによく合う。
パンにはさらにラズベリーのつぶつぶジャムが薄く塗ってある。
ケーキのようなサンドイッチ。
「これは、どこの国になるのか、ちょっと迷いますね」
「フローズンヨーグルトも、甘酸っぱいベリーのジャムも、どちらかと言えば欧米で人気があるみたいだけれど」
「ミニ国旗は手描きの地球です。発酵を味わう食べものとすっぱい食べものに馴染みがある国全て、ということみたいですね」
話している間に、フローズンヨーグルトが汗をかき始めた。
ここまでよく溶けずにいたものだ。
相当しっかり凍らせてあったのか、何かマジックにでもかけられていたのか。
いずれにしても、溶けるに任せておくとパンがふなふなになってしまう。
水気を吸い過ぎたパンは、美味しいとは言い難い。
「たいへん、早く食べないと」
「食べましょう」
その後はおしゃべりする間を惜しんで、私とツキヨノさんはデザートサンドイッチを頬張った。
「ホイップクリームとフルーツのフルーツサンドとは違いますね」
「もったりした感じがしないから、食事の後でもいただけちゃいますね」
こうして、世界サンドを平らげたツキヨノさんは、
「
と、にこやかに言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます