第39話 SUSHIタルト? 里山風タルト!

「こうなってくると、セイボリータルトと言うより、SUSHIタルトだな」

「寿司? 」

「いや、SUSHIだ」


 スエナガさんが、こだわりの発言を始めた。


「え、と、おすしのスシではないんですか」

「明かに寿司ではないだろう、このフィリングは。和食のイメージとしてのSUSHIだ」


 わかったようなわからないような。

 安易なような、でも、言われてみればうなづけるような。

 

「こちらは、秋の里山のようですね」


 フルモリ青年の声がした。

 私は、フルモリ青年の視線の先に目をやった。

 すると、そこには、おしょうゆを塗った香ばしい焼きおむすびのタルトの一皿。

 ころんとした焼栗にひらりとした舞茸、きのこの香りは秋を呼ぶ、それにチキンだろうか、蒸したり焼いたりしたような色ではない、ちょっと気になる、それに、黄色いつぶつぶが全体にまぶされている、彩りも秋めいている、クリスマスシーズンまで紅葉が残っている奥深い山の風景かな。


「ほんとに、この組み合わせは、里山風ですね」


 私が感嘆の声をあげると、


「スモークチキンと焼栗とマイタケ、マイタケはオリーブオイルで漬けてあります」「黄色い粒々はモチキビで、もちもち感があります」


 と、フェザリオンとティアリオンが、二人で声を揃えてフィリングの説明をしてくれた。


「焼おむすびタルトにもおしょうゆが塗ってありますが、お好みでしょうゆを一滴、食べる時に垂らしてみてください」

「モチキビと絡めながら食べると、食感が楽しめます」


 二人は言い終えると、いつものきれいなお辞儀をした。


「こちらは、茶碗蒸し風? 」

「和風キッシュの趣だな」


 スエナガさんは目を細めて、温かいうちに食べたいものだ、とつぶやいた。


「海老と銀杏、百合根、しいたけの茶碗蒸し仕立てのタルトになります」

「こちらのタルトは、炊きたてごはんをのし餅のようにして作りました」


 フェザリオンとティアリオンは、今度は、二人で手を取り合って、同時にお辞儀をした。

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