梅崎春生『怠惰の美徳』

現在梅崎春生ブームが到来中である(俺のみです)。


『怠惰の美徳』とはなんてステキな題名でしょうか。この本は荻原魚雷さん(愛読しています)がセレクトした「ぐうたら」でいてどこか鋭い、しかし飄々とした梅崎春生のエッセイと短編が収録されています。


松岡正剛の千夜千冊で梅崎春生の項を確認してみると、なるほど、この人が経験したことの壮絶さが伺えます。

しかし戦争体験以前から、その「怠惰」な精神は梅崎春生に備わっていたようです。

大学に進学しても、試験の日以外一回も講義に出なかった、なんてかっこいいな〜(下宿で寝てただけらしいけど)。


「三十二歳になったというのに

まだ こんなことをしている


二畳の部屋に 寝起きして

小説を書くなどと力んでいるが

ろくな文章も書けないくせに

年若い新進作家の悪口ばかり云っている」

(「三十二歳」)


「生きていくために自分の弱さを認容している現代人は、すべて罪人である。私とても自らのエゴイズムを良しとするわけではない。しかしそれを認容しなければ生きて行けないから私はそれを肯定する。肯定する処から新しく出発したい。もし現世に新しい倫理があり得るなら、人間の心の上等の部分だけでなれ合ったかよわい倫理でなく、人間のあらゆる可能性の上に、新しく樹立されるべきであると私は思う。」

(「世代の傷痕」)


「現代のような病める時代にあって、心身共に健全ということ自体が、異状であり、おかしいのである。健全ということは、すなわちデリカシーの不足あるいは想像力の欠除とおうことであって」

(「居は気を移す」)


戦後派作家の言葉でありながら、いまのことを書いている。世の中はより、健全なふりをし続けている。

しばらくは読み耽る予定です。





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