佐藤泰志『きみの鳥はうたえる』

この小説を読んだことで、すべてが変わってしまった。そんな本がありますよね。今後、村上龍や吉本ばなな、江國香織など、「影響を受けた作家」を紹介していくつもりですが、この人との出会い(読書の意)こそが、ほんとうに、がらりと変わった瞬間だったな、と思います。


佐藤泰志をご存知ですか? 村上春樹と同時代の作家でありながら、まったく作風は違う(村上春樹が特殊という話もあるけどね)、日本文学、とくに青春文学の本流に名を連ねる作家となるべきであった人です。

数年前に傑作『海炭市叙景』が映画化されたことで文庫が一気に出ました。

僕が始めて佐藤さんの名前を知ったのは、映画化になる前でした。


「きっときみは好きだと思う」ととある方(僕にとっては文の師匠の一人でもあります)にいわれ、当時はほとんど絶版状態、作品集一冊しか出ていなかったのですが、本屋に並んでもいないので、わざわざ取り寄せてみました。


読み始めた途端、「これはやばい」と感じました。この世界は好きすぎる。きっと読んだらものすごく影響を受けてしまう、と。作品集に収録されていなかったものを求め、図書館で借りてしばらく読み漁り続けました。


主人公たちの誠実さ、人に対しての距離の取り方、すべてが読んでいたときの自分には沁みた。とくに『きみの鳥は歌える』と『そこのみにて光輝く』が好きです。


「影響を受けすぎるのもよくないよ。あの人は、自殺してしまったんだから」

紹介してくれた人が、僕が佐藤泰志にあまりにのめりこみ、文ががらっと変わったのを感じて、あらためてアドバイスをしてくれました。

佐藤泰志は、才能があったというのにその文筆活動はかなり苦しいものでした。何度も芥川賞を落選しています。

一度は本屋から消えた作家でありながら、コアなファンはいて、没後に作品が文庫化される。

たしかに生きているうちに評価されるべきだったと思います。でも、いま2018年に読んでも、まったく古びていない。


佐藤さんが好んで書く、三角関係、青春のむくわれなさ、濃密な死の臭い。もし読んだことがないならば、ぜひ読んでいただきたい。

絶対損はさせない、素晴らしい作家だと思います。

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