美麗にして醜悪な、ちょっぴり苦い御伽噺
剣と魔法と迷宮でできている異世界――クルーヘルン王国。
そこにはありとあらゆる生き物を殺戮してその血を絞り、絞り出した血を紅茶に見立ててティーカップに注ぎお茶会を開く――そんな残虐で怖ろしい魔物が無数に存在していました。
その悍ましい化け物達の中でも一等に怖れられるモノがいます。それは正体不明の怪物・ジャバウォック。その存在は古くから人々に知られ、最悪にして災厄の魔物と心底から畏怖されていました。
そんな怖ろしい魔物を狩る、名無しの勇者が此処に一人。
この世で唯一ジャバウォックを討伐する術を持つ記憶喪失の少年・トート。
そんな彼を〈竜殺しの英雄〉と持てはやす吟遊詩人見習いの少女・アリス。
王立迷宮書士団の本部に無許可で開業した探偵事務所。そこには時折、迷宮絡みの凄惨な事件が舞い込みます。悍ましい惨劇――その数々を解決する度にトートは勇者として成り上がっていくのですが、しかし当の本人にはまったく関心がありません。何故なら彼はただ、自分の失われた記憶を取り戻すことと、迷宮の謎を解き明かすことしか考えていないからです。
今日も今日とてトートはアリスの導きに従い、退魔ノ剣の縛めを解く三つの鍵を探します。
それでは――今宵の御伽噺を始めましょう。