ⅩⅡ あの人たちはだれ?
「最近、彗の様子がおかしいんだよね……。」
あれから数日後、みんな一緒に昼食をとっているところでわたしは呟いた。
「何がおかしいんだ?」
焔がわたしの呟きに反応して、ご飯を食べながら聞いてくる。
「彗、最近ずーっと図書館にこもってるの。授業が終わったらすぐに図書館まで行っちゃって……。」
わたしの話を聞いて、みんなが一斉に首を傾げた。
「そんなの普通じゃない?だって、もう6月も終わりになるんだよ?テストだってもうすぐだし、勉強でもしてるんじゃない?」
凪が少しイライラした表情をしながら話す。でも、わたしはそれに反論した。
「いや、それだけじゃないの。彗、わたしのことをすごいじろじろ見てきて……。なんか、監視されてるみたいでちょっと怖いんだよね。」
「確かに、最近彗さんの目が変わったかもしれないね。」
「言われてみれば、そうかもしれないな。」
珀と焔が頷きながら話す。やっぱり、2人も同じことを思ってるんだ……。わたしはあごに手を当てながら、深いため息をついた。
「よいしょっと。」
ウチは、本棚から分厚い辞書を何冊も机に運んできた。そしてふぅっと息を吐きながら、右腕を軽く振る。その後に、ウチは席に座って辞書を引き始めた。ルーズリーフに書かれた言葉の意味を探して……。
グラマー glamour 魅力 魔法
オー
フー
トーン tone 音
アンサンブル ensemble 一緒に
ハピネス happiness 幸せ
セプテット septet 七重奏
大体埋まってきてはいるけれど、この言葉の意味には関連性が全くない。強いていうなら、音楽に関する言葉が多い気がするってこと……?でもこんなことやっても、全然近づいてる感覚がしない。
「やっぱり、正体を探すのは無理なのかな?でも、簡単にはあきらめたくない。」
ウチは深呼吸してから、頬をパチッと叩いた。気合いを入れ直して、持ってきた辞書を片っ端から漁っていく───
「彗、一緒にご飯食べない?」
2限の授業が終わって、わたしは隣で授業を受けていた彗に声をかけた。
「い、いいけど……。どうしたの?」
彗がわたしの方に振り向き、首を傾げている。
「え?なんとなくだけど……。」
「そっか、どこで食べる?」
わたしと彗は、空き教室を探して校舎内を歩き出した。そういえば、彗と昼食をとるのは久しぶりな気がする。最近ずっとあの6人と一緒に食べてたし……。彗も嬉しいのか、会話が途切れない。こんな楽しい時間が、ずっと続けばいいのに……。
わたしと彗は、空き教室を見つけて荷物を置いた。大きな窓から光が差し込んで、開放的な教室。校舎の奥のほうにあるからか、誰も人がいなくて絶好的な場所になってる。わたしたちは2人でお弁当を広げた。
「そういえばさ、彗、最近様子がおかしいけど、どうしたの?」
「へ?」
突然わたしが声をかけちゃったから、彗が目を丸くして変な声を出した。彗の頬がほんのり赤くなる。
「いや、あの、授業が終わったらすぐ図書館に行っちゃうじゃん?」
「あー、あれ?ちょっと調べ物。そういえば、澄も最近焔くんや珀くんたちとずっと一緒にいる気がするけど、何してるの?」
わたしは彗の言葉を聞いて手を止めた。そして、彗の顔の方に目を向ける。やっぱり、彗はわたしのことを気にしてるのかな?
「わ、わたしは別に……。」
心臓がバクバクしてる。わたしは彗に見えないように、拳を強く握りしめた。彗が首を傾げてこっちを見てる。なにか話題をそらさないと……。
「す、彗って、7月7日の夏祭りの日って空いてる?」
「え?空いてるけど……。」
彗がスケジュール帳を取りだして、それを見つめながら答える。彗の答えを聞いて、わたしは目をキラキラと輝かせた。
「この前、アンサンブルの練習してるんだって話したじゃん?それで、夏祭りで演奏するの。もしよかったら聞きに来ないかな?って……。」
わたしが夏祭りのチラシを机の真ん中に置いた。彗はそれを手に取って、ざっと全体に目を通していく。
「へー、そうなんだ。ちょっと考えとくね。」
彗がそう言って、スケジュール帳にさらさらと予定を書いていく。
「やった!ありがとう!」
彗の答えを聞いて、なんだかやる気が漲ってきた。練習、頑張らないと!わたしがうきうきしていると、突然ガタンと衝撃音が外から聞こえてきた。その後に、ポロンとLINEの通知音が鳴る。彗に少し声をかけて、わたしは通知を見てみた。
「みんな、ディソナンスが外にいる!」
霞からの連絡を見て、わたしはスマホを握りしめた。そして、彗に視線を移す。
「どうしたの?そんな暗い顔しちゃって……。」
彗がわたしの顔を覗き込むようにしながら話しかけてくる。わたしは、1度だけ小さく顔を縦に振った。
「ごめん、ちょっと急用ができちゃって……。」
わたしは下を向いてしまう。彗はなんて返してくるんだろう……?
「大丈夫だよ。また一緒にご飯食べようね!」
彗がわたしに笑顔を向けてくる。わたしは急いで椅子から立ち上がって荷物をまとめ始めた。その後に、一目散に教室から飛び出して、6人のもとへ向かう。
“彗、ごめんね。ありがとう。”
澄が教室から出ていった後、ウチは窓のそばまで寄っていって外を見てみた。すると、外で逃げ惑っている人が見えて、建物の陰からなにか得体の知れないものがチラチラと動いている。ウチはさっき澄が駆け出していった方向に目を向けた。待って、澄が向かった方向って……。ウチは素早く荷物をまとめて、さっき澄が向かっていった方向へ走り出した。
少し近道をして、みんなと合流する。そして、目を見合わせた。
「「「「「「「グラマー 」」」」」」」
オー!ルーメン!フー!トネール!
アイレ!トーン・ハーバード!エスパシオ!
「きらめく
「きらめく
「きらめく
「きらめく
「きらめく
「きらめく
「きらめく
「「「「「「「きらめく音はみんなの力!伝われ、Ensemble!」」」」」」」
変身すると、わたし・霞・楽の3人はディソナンスの方へ向かって飛び上がった。そして、ディソナンスを傷つけていく。少し遅れて、凪が扇で風を起こして加勢してくれた。後ろから銃弾・矢が飛んでくる。すると、珀がディソナンスの下の方へ回り込んで、鞭で足を叩いていった。ディソナンスがバランスを崩して、大きな音をたてながら倒れる。そんなディソナンスは急いで体を起こそうと、じたばたと手足を動かしてそばにある壁が壊していく。
「ハピネス フー!」
焔が呪文を唱えながら走り出した。
「響け!情熱のハーモニー!
焔はタクトで三角形を描きながら強く地面を蹴り上げて、ディソナンスの上へと飛び出した。
「ハピネス!エクスプロージョン・フー!」
タクトの先から炎の縄のようなものが現れて、次々にディソナンスの手足を縛っていく。でも、ディソナンスの力が強くてすぐに切れてしまいそうだ。
「ハピネス エスパシオ!」
わたしは焔の後を追ってディソナンスの方へ向かっていった。
「響け!再生のハーモニー!
タクトの先が白く光り始める。わたしはそれを確認して、高く飛び上がった。近くに建っている校舎の高さを超えて、学校全体を見渡せる。わたしはディソナンスのいる場所を確認して、タクトを両手で握りしめた。
「ハピネス!リバース・エスパシオ!」
わたしは呪文を唱えて、ディソナンスを囲むように大きな円を描く。わたしの攻撃で浄化されて、ディソナンスの力が弱くなった。
「「「「「「「ハピネス 」」」」」」」
オー!ルーメン!トネール!アイレ!トーン!
5人が呪文を唱えて、みんな一直線に並ぶ。
「「「「「「「響け!7人のハーモニー!」」」」」」」
「「「「「「「ハピネス!
わたしたちの攻撃を受けて、ディソナンスは悲鳴を上げながら消えていった。
ウチは澄を探して校舎の中を探し回る。けど、どこにもいない。ウチはとうとう校舎の外に出てきてしまった。そこにいたのは、この前怪物と戦っていた人たち。あの時は何人いるのか分からなかったけど、7人もいたんだね。青・橙・赤・黄・緑・紫・白の服が、太陽の光に照らされてきらきら輝いてる。ウチはこの光景を目に焼き付けるように見つめた。しばらくして、あの謎の7人組は一斉に去っていく。ウチはそこで我に返って、また澄を探し始めた。
~Seguito~
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