第六十八話 何を言っている

 私に、村へ行ってセイゴさんたちを助けてくれといった張本人。

 なんでこんな所に。こんなにボロボロで。

 彼から聞こえるわずかな呼吸音で、辛うじて生きているとわかる。


「王、貴様……!」

「私に捕まって哀れなものだな。お前の村の王は!」


 隣にいる王が心底蔑んだ笑顔で言った言葉に、目を見開いた。

 スズメさんが、村の王様、だって?

 彼に視線を向けるが、意識が無いのかうんともすんとも言わず、肩だけが微弱に動くばかりだ。

 王はスズメさんが倒れているのを良い事に、その足でスズメさんの頭を踏みつけた。


「セイゴ、これでお前には二人の命がかかってることになった! 交渉をしようか。二人の命を犠牲にしてまで村をとるか! それとも二人の命を救い、村を私に渡すか! どちらか選べ!」


 私だけの命ならまだしも、村の王であるスズメさんの命まで交渉に使うなんて、酷い話だ。

 この王、人の風上にもおけやしないじゃないか。セイゴさんたちが嫌っている理由が、はっきりと分った気がする。

 二人を人質に取られているせいか、セイゴさんは神獣を静止させ、その姿を消した。

 自分の良い様に相手が動くからか、王はグフフとまた下品な笑みを浮かべた。


「ふふふ、村を手に入れたら、まずはその気味の悪い神獣を消してしまおうか。異世界の者の命を使えば雑作もないことだしな」


 え? 何を言っているのかよく分からない。

 神獣を消すって、どういうこと?


「お前、まさか!」


 何かに気づいたセイゴさんは声をあげた。

 検討もつかない私の顔を見た王は、小馬鹿にしたように鼻を鳴らす。


「なんだ、神獣の殺し方を知らないのか。神獣はな、異世界の者の命を使えば殺せるのだ!」

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