第六十六話 ピンチだ!
嘘だ。確信を持って言える。態度もなにもかも偽りのようで、まるで私たちを小馬鹿にしているみたいだ。
「だが、そもそもの問題は、お前たちがその者を匿っているせいではないのかな? その者は私の国が呼んだ者。私がもてなすのが当然の筈だが、何故だかそちらに行ってしまったんだ。それなら取り戻すのが当然だろう」
「その為に森を通っているってのか? ハッ、都合のいい様に言っても駄目だ。お前はどうしても俺等の村を手に入れたいだけだろう。だからって、コイツを理由に言うのはお門違いってやつだ。それに、お前がそんな理由ごときでここまで行動するはずがない。他になにか理由があるんだろう?」
睨みつけるような眼差しを向けるセイゴさん。
そんなセイゴさんを見てもなにも思わないのか、王は溜め息を吐くばかりだ。
「話にならんな。お前と話をしていても、一向に前に進む気がしない」
「おう、それには俺も同意見だ」
「致し方ないな」
スッと王は静かに手を挙げる。
それが合図なのか、どこからかこの城の兵らしき人たちが現れ、あっという間に私たちを取り囲んでしまった。
この大人数、最初からここに潜んでいたに違いない。
武器を構えている周囲の兵たち。
それに対して、私は武器なんて持ってはいない。
セイゴさんも、いつも持っている武器が没収されているのか、どこにも大剣の姿が見当たらなかった。
シュタインさんは巻き込まれない様にか、部屋の高い位置で飛んでいる。
ピンチだ……!
「抵抗しなければ、異世界の者だけは傷つけないでおこう」
「ハハハ、それは助かるな。わかった。俺は抵抗しない」
「懸命な判断だな」
なんで素直に従うの。私が傷つこうが、それは今関係ない筈だ。
助けに来たというのに、なんにもできずにセイゴさんが傷つくなんて、私は嫌だ。
「セイゴさん、私は怪我をするぐらいなんともないから!」
「お前を傷つけたらツバサに怒られちまうだろう、それに」
ズッという低い音が部屋の中に響いた。最近聞いた事がある音だ。
「言っただろう、俺はって」
あ、この笑みはなにか企んでいる。
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