第四十二話 さあさあ

「ところでゼルギウスさん、どうかいたしましたか?」

「収穫祭の目玉のあれを、どうするかと思いまして」


 目玉のあれ? なんだ、あれって。

 収穫祭だから、野菜とかの大きさ比べとかをやったりするのかな。


「あぁ、それはこちらで大まかな準備はさせていただいております」

「なら平気ですね。時刻は日が天辺に登ったときだから、忘れずにお願いしますよ」

「えぇ、大事な行事ですからね。それに参加するのがしきたりですから」

「あれをやらないとどうもしっくりきませんからな!」


 なんとも楽しそうに笑うゼルギウスさん。

 まるで太陽みたいな人だなと思った。


「セイゴ! しっかりやれよ!」

「言われなくても、適当にする」


 ゼルギウスさんは「それじゃあ」というと、良い笑顔で去っていった。


「本当に口うるさいよな」

「セイゴ、きちんとやるんだぞ。これは村の皆が一番楽しみにしているといっても過言ではないからな」

「へいへい」


 喝を入れる様に言うと、ツバサさんはまだ準備途中だったのか手を動かし、作業を再開した。

 私もやらなければと、いつの間にか止まっていた手を動かし始める。


「ったく、面倒ったらねーぜ」

「あれっていうのは、セイゴさんも出るんですか?」

「出るというか、当事者みたいなもん」

「当事者?」

「この村の祭りのしきたりみたいなもんだ」


 どこのお祭りでもそういうのってあるんだな。

 私の地元も御神輿とか、狐のお面を被った人が踊る舞いとかやってたもん。

 でも、セイゴさんが当事者ってことは、城と何かしら関係があったりするのかな。

 しきたりでそういうのにも出なきゃいけないって、なんだかんだ言って城の人は大変なのかもしれない。


「二人とも、そろそろ始まりますので出来ている分だけでも、こちらに持って来てください」


 ちょっと慌てた様にいうツバサさんの声に、セイゴさんがやる気がなさそうにへーいと返事をすると、仕分け終えた野菜を両手に持って向かった。

 私も、同じ様に両手に持ちきれる程度の野菜と果物を持って、ツバサさんの所へ向かう。

 遠くの方から楽器の音が華やかに鳴っているのが聞こえて来た。

 どうやらお祭りが始まったらしい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る