第三十五話 王子様の定義

 見事に二人きりになった私たちに沈黙が流れる。

 気まずくなってしまった。どうすればいいのだろうか。

 そもそもなんの話をすればいいわけ? 無難に天気? 天気の話題で良い? 私会社で新人さんが入ってきたときの第一声は、大体これで切り抜けているんだけど。

 今日はいい天気ですねー……、ありきたりすぎてセイゴさんの返事が予想できてしまう。

 これでまだ雨とか降ってたら会話がつなげたかもしれないというのに。

 えっと、気まずいからなにか話そう。


「せ、セイゴさんって年はいくつですか?」

「……は?」


 よりにもよって歳の話かよ! いや、確かに気にはなっていたけれども! ツバサさんもあの美貌を持っているのにいくつかな、とか思ってたけど!

 セイゴさん、いきなり何聞いてくるんだコイツは、って顔になってるよ!


「歳、を聞いてなかったなと思いまして」

「……多分お前より三つくらい上」

「え? 私の年齢知ってるんですか?」

「勘だけど、ジョシコーセーじゃなくてシャカイジンってことは、むこうの世界のお前の国での成人はむかえてるってわけで、二十五くらいかと思ってる」

 ワオ! この人凄い! 年齢当てたよ!

「ということは、セイゴさんは二十七歳ですか!?」

「あぁ、そうなるな」


 おいおい、この見た目で二十七歳とは……。

 もう癖になってる敬語を最初から使ってたけど、セイゴさん二十代前半かなーそれとも十代の後半くらいだろうなーとか思っていたけど、二十七歳、私の兄と一緒の年齢。信じられない。

 この世界の人の外見どうなってるの、容姿詐欺なの?


「ちなみに、ツバサさんはいくつですか?」

「あいつは確か、見た目年齢は二十歳じゃなかったか?」

「見た目年齢って」

「実際に歳を聞いた事は無い。別に気にした事も無いし」


 気にならないものかのかな。ずっと一緒にいたらそういうものなのだろうか。


「だけど、二十歳でも納得できるなぁ。見た目、完璧な王子様みたいだし、あの美貌もすごいし」

「王子様みたいって、あのツバサが?」

「もちろんです」

「アイツが、王子様……プッ、アハハッ!」


 真面目な顔をして言うと、セイゴさんは一瞬ポカンと口を開けた後、大爆笑をした。

 おいおい、こんな大爆笑しているセイゴさん初めて見るよ。今日は二人の色々な表情を見る日だな。

 それにしても王子様が余程おかしかったらしい、何故だ!?

 セイゴさんも確かに王子様みたいな外見をしているけど、やっぱり中身も気品がなくっちゃ王子様ではない。

 もう完璧だよねツバサさんは! 話しかけられるたびにドキドキするし! 言葉使いも完璧で紳士だし!

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