第三十四話 三人仲良く
木陰に行きシートを敷いて座ると、今朝作ったのだとツバサさんはいつの間にか用意していたバスケットを開けて見せてくれた。
中には美味しそうなおにぎりがいくつかと、お茶らしきものが入っている瓶が、セイゴさんが来ることも予想の範囲内だったかの様に三つある。
まるでピクニックのようだ。久しくそんな事をしていなかったから、どこか私は懐かしい気持ちになった。
ツバサさんに渡されたおにぎりをセイゴさんとほぼ同時に口に入れて、私たちは昼食を食べ始めた。
先ほどまで恨めしく感じていた太陽に当たりながら食べるおにぎりは、とっても美味しかった。
お、中身は梅干しだ。定番のおにぎりの具材もここにはあるのか。
無言で食べ続けているセイゴさんも美味しいのか、手には既に次のおにぎりが用意されている。この人、和食大好きなのかな。
「今回も豊作でなによりだな」
瓶のお茶を飲みながら畑を見て、幸せそうに呟くツバサさん。その姿は農家を切り盛りする人のようだ。
美人は何をしても絵になるとはこの事を指すんですね、わかります。
「セイゴ、明日は警備をしながら綾様に町の案内をするぞ」
「は?なんでコイツの案内なんかしなくちゃいけないんだよ。警備もめんどうだし」
「綾様は我々の城にいるんだ。我々が案内をしないでどうする。それに今は我々二人が主戦力だろう。もともとスパーロは平和だが、万が一もあり得るだろう?」
「だから一人では歩かせる訳にはいかないって? そもそも、御手洗が国を裏切るような行為をしたのがいけないんじゃないか」
今突き刺さった! 何か胸に突き刺さったよ! 確かにそうだけれども、何度も言うが私はスズメさんに言われて来た訳だし!
「とにかく、一人では歩かせられない。女性をエスコートするのが男の役目だろう?」
タイミングを見計らった様に吹いてくる風によってなびく髪が、その言葉をより一層惚れ惚れするものへとかえる。
ツバサさん、マジでイケメンですね! めちゃくちゃカッコいいんですけど!
その言葉を聞いたセイゴさんは舌打ちを一度して、そっぽを向いてしまった。
やっぱり全然話とかしてなかったから、距離を感じるな。今は、ツバサさんがいてくれるおかげでなんとかこの場はもっているようなものだけど。
「さて、私は川にいくつかの野菜を冷やしにいってくる」
……ちょっと待って、なんでそう思った瞬間に二人きりにしようとしているの?
ツバサさん、空気を読んでください。
私、貴方がいないとセイゴさんとまだ話せないんです。いてください!
そんな思いを込めてツバサさんの方を向くと、すでに背中が遠い場所にあった。
早い! 仕事が早い!
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