第三十一話 果樹園があった
「着きましたよ、綾様」
脳内がネガティブ思考に陥ろうとしたとき、目的地に着いたのか声をかけてくれた。
目の前に広がっていたのは大きな竹のような木に囲まれた広い土地で、そこにはたくさんの農作物が育っていた。
綺麗に耕された田畑や実をたわわにつけた果樹園には、私も見た事がある定番の野菜や果物の他に、ちょっとお目にかかった事の無い変な形をした植物までもが元気よく育っている。
「みんな、立派な野菜たちで」
「本日は、ここの収穫作業を手伝ってもらいますね」
そうか、これからの収穫を手伝ってもらう為に私は呼ばれたのか。
なかなか広いこの場所、一人でも多くの人手が欲しい筈だ。
だが私たちの他に人の姿が見当たらない。みんなどこにいるのだろう。
「ツバサさん、他の人はどこに?」
「私と綾様だけでやりますよ」
はい? 今なんとおっしゃいましたか?
二人? 私と、ツバサさんの二人でいまから収穫作業をするというのだろうか?
「二人だけで収穫作業、ですか?」
「今城内には私とセイゴ、あと二人のメイドの四人だけしかいないので城壁と門の管理をセイゴ、城内のことはメイドが、その他は私がやっております」
耳を疑った。城にいるメンバー少なすぎるのではないですか?
人が少ないという話は確かに聞いてましたよ。そのために私が手伝っているのだってことも知ってします。
そういえばいつも会っている人以外の人に会わないな、とか考えてはいたが。たまたま会わないだけなのだろうと思っていたのに、まさかそもそもいないとは。
「な、なんでそんなに人がいないのですか」
「まぁ城主が人を多く雇わないのもありますが、先ほど言った城主と共に行ってしまった者がいるので。現在城を守っているのがこの四人となっています」
逆になんで四人だけ残したんだ城主! なんか可哀想じゃないか! せめてもっと残してあげなよ!
「さぁ! はりきってやりますよ!」
こんな生き生きとしたツバサさん、初めて見た。
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