第二十九話 話は変わりまして
この世界での暮らしが始まって、一週間がたった。
あの門番を手伝った後、私は城内の散策と、この世界の事についての勉強、あとは簡単なお手伝いをしながら過ごしていた。
だんだんと慣れて来たこの世界の生活は、日本とほぼ同じとあってか不自由することはなかった。
朝食で白米とみそ汁の食事をしてる二人の姿は、未だに慣れないものがあるが。
だがこの一週間、食事以外の時にセイゴさんに会う事はまず無かった。
食事を終えたら、ふらりといつの間にか姿を消していなくなっている。
城内にいるツバサさんに話を聞くと、基本的には、彼の役目は門周辺の見張りなのでその仕事をこなしているだけだと言った。
私が初めてセイゴさんに会った時は木の上で寝ていたみたいだけど、それは仕事をやっているうちに入るのだろうか。
今日はツバサさんに手伝ってもらいたいものがあると言われたので、城の広い庭に案内されてきた。
「綾様、そろそろここの生活には慣れましたか?」
「そうですね、やっぱりこちらの生活が日本と似ているおかげで助かっています」
「それはよかった」
そんなたわいもない話をしながら庭を歩いていく。
城の庭はキレイに手入れをされており、雑草はほとんど見当たらず、色とりどりの花が咲いている。
庭師の方が毎日手を加えているのだろう。大変だ。
庭の所々には小さい子が遊ぶような、木で作られたブランコや小さなベンチが設置してある。
使い古されてはいるが、壊れてはいない所を見ると、誰かが直したりしているようだ。
「気になりますか、その遊具が」
私が遊具をジッと見ていたことに気付いたのか、ツバサさんはが話しかけて来た。
「その遊具は、セイゴたちが幼い頃に使っていたものなのですよ」
「セイゴさんたち?」
「セイゴとその兄、それにこの城の主。三人は幼なじみですからね」
遊具を見る眼差しは昔を思い出しているのか、どこか優しかった。
優しいその瞳に、私もなぜか心が安らぐような気持ちになった。
きっとこの庭を楽しく駆け回ったりしていたんだろうな。そうか、セイゴさんにお兄さんか、驚きだなぁ。
……セイゴさんに兄!? マジか! え、そっちの衝撃がすごいのですが!
あの人、お兄さんとかいたのか。まだ見た事は無いけど、セイゴさんのお兄さん、やっぱり顔は似ているのかな。
それで城の主とは幼なじみ……セイゴさんは思ったより凄い人なのかもしれない。へぇ、幼なじみねぇ。
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