第五章 暗躍する異端魔法士 第五話 トゥーエルの最期
「気づくのが少し遅かったですね」
トゥーエルは微笑んだままこちらを見ている。
「どういうことだ、貴様一体何者だ」
アラムスはトゥーエルを睨む
レーネが動こうとすると、
「おっと、動くと殺しますよ。
あなたたちは捕らよとのことなのでおとなしくしていただかないと」
トゥーエルは右手をこちらにかざすと詠唱を始める
「我の目に写るもの、それは我の意に背かん」
トゥーエルの目に魔法陣が写りこむと同時に
アラムスとレーネは動けなくなる。
「なに、、、これ、、、」
「貴様、、、!」
トゥーエルは微笑んだままこちらに近づいてくる。
「少々手荒になりますが仕方ありませんね」
「くっ!レーネを、、、
リーク!!」
アラムスが叫ぶと同時に、二人の隣を見えない何かが通りすぎた
見えない何かがトゥーエルを吹き飛ばすと、そこで立ち止まる。
「間に合ったかな?」
リークは振り返ると、アラムスににやりと笑いかける。
「ギリギリ間一髪だぞ!」
アラムスは動けるようになり、リークの隣に駆け寄る。
「レーネ!大丈夫!?」
シルファが追い付きレーネを抱き抱える。
「大丈夫、ちょっと動けなくなっただけだよ」
リークは前に向き直ると、土煙の中に立っている男を捉える。
「おや?あなたはミラリカが捕らえている手筈なんですがね。
しくじりましたかね」
微笑んだままこちらを見ている。
「お初にお目にかかります、私はトゥーエル
闇の魔法士。お手合わせ願いましょうか」
リークは魔法陣を見ると
「その目、魔法に食わせたか」
そう言い構える
「正解です流石ですね。見ただけで看破してしまうとは」
トゥーエルは笑うと急に真顔になり、
「さて、参りますよ」
「我の目に写るもの、我の意に背かん。
土のつぶては汝らを滅ぼさん」
ゴゴゴゴゴゴ
草原中の土が空中に浮き上がるとあちこちで固まり、無数の弾丸となり
リークに向かって飛んでくる。
「大地に眠る土の精霊達よ、我に力を」
「森羅万象の力よ、風は渦巻き全てを巻き上げる」
リークが唱えると、弾丸はピタッと止まり竜巻が弾丸を飲み込み砂に戻す。
「なんですか?その力、、、その魔法陣。見たことがありませんね」
トゥーエルはリークを睨みながら、何かに気づく
「ふふふふ。なるほど、、、魔力ですか」
「お次はどうでしょうかね。
闇は静かに世界をのみこむ、それはあらゆる事象を超える」
スゥーっと地面が暗くなっていく
「なんだこれは!?リーク!」
アラムスが叫ぶ
「足が、、、吸い込まれてる」
震えながら呟くレーネをシルファが抱きかかえながら
「、、、大丈夫よレーネ」
シルファはじっとリークを見つめる。
リークが振り返るとシルファと目が合う。
相手が高位な魔法使いであることは間違いない。
出し惜しみしていると全員の命が、、、
ごめんシルファ、、、
心の中でそう呟くと、前に向き直る。
「ダメよ!!リーク!!!」
シルファが叫ぶと同時に、リークの体からうっすら光がわき出てくる。
「我が身に宿りし光の力、その光は時を超える。
天に荒ぶる光の女神よ、我を化身とし輝かん」
リークは唱え終わると静かに目を閉じる。
「あなたはまさか、、、聞いていませんよ!
こんなところにクロノスがいるなんて!!
捕獲対象がこんな化け物、、、!!
謀ったなノワール!」
トゥーエルが闇を呼び出し闇にのまれていく。
「もう遅い、、、どこにも逃げられないよ」
リークがゆっくりと瞼を持ち上げていく。
「待ちなさい。今あなたはその力を使ってはいけないわ」
後ろからさっと手で目をふさぐ、聞き覚えのある声。
「ノワールの手下ね?ここまでよ」
「汝に巡る水たちよ、水の賢者が一人セレネに従いそれに応えなさい」
セレネが唱えると、トゥーエルの体がたちまち蠢き始める。
「な、、、六賢者、、、セレネ、、、ぐ、、、うぁああ」
闇に消え行く瞬間にトゥーエルは爆散した。
地面から闇が消えていく。
リークは目をふさがれていて何も見えない。
「これはいけないわ。待ちなさいね」
「水の精霊ウンディーネよ、彼に眠る光の女神をお諌めなさい」
セレネはそう言いリークに魔力を集中させると、
リークの体から光が消えていった。
「もういいわよ目をお開けなさい」
リークがそっと目を開けるともう目の前にトゥーエルの姿はなかった。
すごくいい匂いがするのは、リークをセレネが後ろからそっと包み込んでいるからだ。
「ありがとうございました。
もう大丈夫、離れてください」
リークが落ち着いた声で言うと
「あら?体は火照っているわよ?」
クスクスと笑いながらリークの前に出る
「セレネさん、今のは一体何者なんですか?」
リークがそう聞くと、真面目な顔になりセレネが答える
「闇の魔法を使ったということは、、、。ミラリカの仲間、ね」
「今の奴、ノワールに謀られたと、、、
ノワールというと六賢者の一人、闇の賢者でしょう?」
「そうねえ。彼は今は執行対象なのよ」
セレネはうっすら笑みを浮かべる。
「けれどノワールは、夜の調律者とも呼ばれ、彼の勤勉を知らない人はいないはず!!」
「そう、、、だったわねえ。けれど今は、、、」
セレネは目を細めてリークを見つめると、
「あなた記憶が、、、」
そう呟くと、リークの脳裏で色々な景色がフラッシュバックする。
「記憶、、、これは?!なにが起こって、、、く!」
リークが目を閉じしゃがみこむ。
「さっきの力の解放詠唱といい、父君の守護魔法の効果ももうすぐね」
セレネは目を細めたままじっとリークを見下ろしている。
シルファは咄嗟にリークを抱き締める。
「リーク、大丈夫よ。
落ち着いて、もう大丈夫よ」
シルファは耳元でそう囁くと、リークの体の震えが止まる。
リークの脳裏でフラッシュバックしていたものがピタッと止まり
薄い金色の混じる白銀の輝く長髪の女性がうっすら頭に浮かぶ。
、、、よ。
もう、、、大丈夫よリーク。
母さん、、、
リークはそっと目を開けると、
抱き締めていたシルファの頭を撫でるとゆっくりと立ち上がる。
「ありがとうシルファ、もう大丈夫。
セレネさん、テムプスに行きましょう。
ミラリカという女性はおそらくそこに戻るでしょう
僕も自分の事を知らないといけません」
セレネはじっとリークを見つめていたが、シルファをちらっと見ると、
「あなたも来てもらいましょうか、分かるわね?」
「もちろん行きます、リークが心配ですから」
「そうねえ、では明日にでも出発いたしましょうか。
今日はしっかり体を休めておくように
それではまた明日会いましょう」
そういうとセレネは透明の水になり消えていく。
「待て水の小娘。貴様私の弟子をどこにつれてゆくつもりじゃ」
聞き覚えのある声が頭の上から聞こえてくる。
リークがゆっくりと上を見ると、梟が頭に乗っている。
「あらあ!大図書館の魔女!
お会いできて光栄ですわ。さぁ、大図書館の鍵を頂戴いたしますわ」
セレネは急に低く冷たい声になる。
「ふん、おぬしが私に勝てるならの」
梟はそういうと飛びたち、たちまち人形に変わっていく。
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