42.Supher el nub

佐藤倫乃介がアマガハラに入ると、霧の中に人影が現れた。美神楽勇一だった。アマガハラの幻想的な風景が今はいやにおどろおどろしい。美神楽は佐藤を見つけると、にやりと笑みを浮かべた。「やっと来たか、佐藤倫乃介。力を試す覚悟はできているのか?」

佐藤は冷静な表情で答えた。「俺は覚悟ができている」

「それでは、裁きを開始します」マナが言う。



三島のいる一室で、突然モニターが付いた。

ファミコンのゲーム画面のような画質で、デフォルメされた街の映像が映し出された。空は夜明けのような色合いでビルが並び立ち、天空には破壊されたピラミッドが浮かんでいて、真ん中にある長い一筋の光が街を灯していた。

「これはなんだ?」

「アマガハラだ」ケイが言った。

ケイはクオリア社のエンジニアだった人間だ。

「アマガハラの内部を映像化する古い装置の映像だ。そうか、これも仙山先生が作ったのか」

ケイが「いじってもいいか?」と聞いた。猫の人が答える。「もちろんにゃ」

ケイはモニターの前に置かれたPCになんらかのコマンドを打ち込んだ。画面が拡大され、サキ、倫乃介、魔導師、美神楽と思しき姿が映し出される。



美神楽は「大言壮語だな。では、試してやろう」と笑って言い、呪文を唱えた。

突然、美神楽の周りには漆黒の闇が広がり、その中から巨大な魔獣が姿を現した。佐藤は魔獣に立ち向かうため、自身の力を解放し、バイクに魔法の力を宿らせた。

バイクは一瞬で変形し、鋼鉄の装甲をまとった戦闘用バイクとなった。佐藤は機敏な操作でバイクを操り、魔獣に向かって突進した。

一方、美神楽は力を集中させ、強力な雷の呪文を放った。佐藤はバイクを横に傾け、雷の攻撃をかわしながら、反撃に転じた。

彼は魔力を込めた剣を手にし、美神楽に突進した。美神楽も力を込めた剣を手にし、佐藤と激しい剣戟を繰り広げた。


同時に、サキと魔導師の出海陽子も激しい戦いを繰り広げていた。二人は呪文の力を織り交ぜながら、激しい攻撃を繰り出し合った。

周囲の風景は力で歪み、光と闇が交錯しているように見えた。それぞれの戦いが激化する中、佐藤は魔獣との激しい戦いに苦戦していた。

美神楽の攻撃により、バイクの装甲は損傷し、佐藤はダメージを受けながらも戦い続けた。しかし、美神楽はますます力を増しているように見えた。


佐藤は追い詰められた状況を打破するため、魔法陣を描きながら呪文を唱えた。すると、バイクの装甲が再び輝き始め、新たな力が宿った。

彼は改修されたバイクに乗り込み、美神楽の前に立ちはだかった。

美神楽は興味津々の表情で佐藤を見つめ、「面白い」と言い放った。

佐藤はバイクを加速させ、美神楽を追い抜くために風を切りながらバイクが疾走する中、佐藤は魔法の力を込めた剣を振りかざし、美神楽に向けて一刀両断の一撃を放った。

美神楽は驚きの表情を浮かべ、かろうじて攻撃を避けることができたが、その隙に佐藤はバイクを急激に加速させた。

バイクのスピードを上げる。美神楽に迫っていく。その時、脳内に声がした。

『倫乃介、よく聞くにゃ』

猫の人……!

『美神楽は両界転換接続バイポーラ・コンジャンクションを使う気にゃ。奴がこちら側に飛ぶ時に倫乃介も同時に移動させる。その時に持っている銃で仕留めてほしいにゃ』

『了解』


バイクを加速させる。だんだんと美神楽との距離が近づく。

その時、美神楽が声を上げた。「Dhyuyāhithamāyaデュヤーヒタマーヤ!」

声と共に、美神楽の身体がふわっと浮き上がり、都心環状線の道路に現れる。

美神楽が次の呪文を唱えようとすると、ミラーに佐藤倫乃介のバイクが映った。

『何故だ!!』

倫乃介が後ろから銃を取り出し、撃った。

一発、二発、当たらない。発射音が空中に鳴り響く。

『当たれ!!』心の奥で叫ぶ。

三発目、銃弾は美神楽のバイクの後部車輪を貫いた。スキール音を上げてバイクが転倒する。

その先には機動隊がバリケードを張って待ち構えていた。三島が指示したのだった。

「確保!確保!」

銃を構えた機動隊員たちが美神楽の元へ向かう。

倫乃介の姿はそこには無かった。



一方、サキと魔導師の出海陽子の戦いも激化していた。魔導師は様々な魔法を使いこなし、サキを圧倒していた。



「あとどのくらいで出来上がるんだ?」三島が焦る気持ちで声を上げた。

サキと魔導師の戦いが映し出されたモニターを全員が食い入るように見つめている。

「だから!今書いているところなんだから静かにしてください!」田中が叫び返す。

「もういい!早く送るんだ!」

「いや駄目だ!オチが大事なんだよこういうのは!」

「くそう!サキ!俺がもっと早く気付いていれば!魔導師の思惑に!サキの想いに!」

「……よし!出来上がった!」田中が声を上げた。

「本当か!今すぐ送れ!」

ケイが「来ました!では、過去に送ります」と言う。「佐山さん、耐えてくれ!」

「もう、怖いんだけど……」

ケイが送信ボタンを押した。

佐山が「ううぅぅっ、あはぁ……」と苦しみの声を上げる。

『送信完了』の文字が画面に映し出された。



サキは屈しない意志で立ち向かい、自身の魔法の力を解放させた。彼女の手には光り輝く杖が現れ、魔導師に向けて強力な光の矢を放った。

魔導師は驚きの表情を浮かべ、急いで防御の呪文を唱えたが、サキの攻撃はその防御を貫き、魔導師の身体に深い傷を与えた。

魔導師は痛みに顔を歪めながらも、再び攻撃の呪文を唱えようとしたが、サキは迅速に杖を振り下ろし、魔導師の手から水晶を奪い取った。

サキは力強く水晶を握りしめ、魔導師に向かって言った。「もう終わりだよ、陽子!あなたはもう苦しまなくていいの!!!」

魔導師はサキを見つめ、最後の抵抗を試みるが、サキは魔導師の身体に魔法の光を放ち、彼女を倒した。

その瞬間、空気中になんらかのエネルギーが漂い、静寂が訪れた。倫乃介がバイクを掻き鳴らしてサキの元にやってきた。佐藤とサキは息を切らしながら、互いを見つめた。

「やったね、サキ!」佐藤が喜びの声を上げると、サキが優しく頷く。

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