41.Phercekuti
佐藤倫乃介はリクルートスーツを着て、自動ドアをくぐった。「警備員に本日の面接で来ました!」と元気に声をかける。
ビルのロビーには多くの人が行き交っていた。佐藤倫乃介は周囲に溶け込むように歩きながら、目的の場所を探し始めた。
あの後、倫乃介は猫の人とあの基地の中で作戦を練った。上手くいくといいけど……。
倫乃介は、職員用エレベーターに乗り込んだ。最上階に向かうエレベーターの中で、彼は緊張と興奮を感じながらも、冷静さを保とうと深呼吸をする。
エレベーターが最上階に到着し、ドアが開く。倫乃介はカバンの奥に手を伸ばし、水晶を掴んで念じる。
『聞こえるか、今、クオリア社に潜入した』
しばらくして、返答があった。
『よくやった。こちらも、今準備ができたところにゃ』
『入館パスワードを教えてくれ』
『ケイ曰くパスワードは6235にゃ』
目的の部屋のドアの横にある数字のパネルに6、2、3、5と打ち込む。
ピン、と電子音がして、鍵の開く音がする。
ドアノブを捻る。
部屋に入る。誰も居ないようだ。この隙に、タキオン通信装置に向かわないと。
ポケットの奥に入れた通信機能付きUSBを取り出す。いや、その前に。
『パスワードは6235』と倫乃介は何者かにメッセージを送った。
しかし、その瞬間、部屋の奥から美神楽勇一が現れ、銃を倫乃介に向ける。
「お前、どうやってここまで来た」と美神楽が怒声を上げる。
どうすればいい、考えるが、倫乃介にはどうしようもなかった。美神楽がこちらへ近づく。至近距離に来たら、飛び上がって襲い掛かろうか。それしかない。そう思った、次の瞬間。
ドアが開く音と銃声が響いた。
美神楽が姿を消す。
倫乃介の後ろから「美神楽勇一、逮捕状が出ている。今すぐ投降しなさい!」と声がした。
後ろを振り向くと銃を構えた女の人がいた。
「あなたは……?」
「私はリン。この人に呼ばれたの」
そう言って差し出されたスマホを受け取る。
「もしもし」
「倫乃介、大丈夫か!」三島の声だった。
「ええ、なんとか。それよりも、そちらは?」
「順調だ。しかし、サキの話を作る人間はいるのか?猫の人は倫乃介がどうにかすると言っているが……」
「ああ、それなら」
その時、ドアが再び開く音がした。
「うわっ何してるんですか?佐藤さん」
田中だった。
「よく来てくれた!今から、都市伝説を書いてくれ」
「は?いきなり何言ってるんですか?神楽教と繋がってるクオリア社に潜入すれば面白い物が見られるって聞いたから来たのに……」
田中の頭に銃口が突きつけられた。
「は?」
「みんなの命がかかっているんだ!どうにか助けてくれ」
田中は異常な事態が飲み込めずに黙っている。
「もういい!あとは私が説明しとく。佐藤くんはすぐに美神楽を追いかけて!」
「わかりました!」
「あとこれ!」
リンが一丁のピストルを倫乃介に手渡した。
「奥に潜んで何してるかわからない。これを使いなさい」
リンに礼を告げ、倫乃介は部屋の奥に走り出した。
部屋の奥にも美神楽はいなかった。
しかし、壁を注意深く観察すると、少しだけ繋ぎ目がズレているところがあった。
そっと押してみると、壁が動く。
回転式の隠し扉になっていた。
青白い光が漏れてくる。
そっと奥に進む。
青い光に覆われたプールのようなものがあった。
これは……。倫乃介は息を呑んだ。足元に注意書きが書いてある。
『高濃度タキオン発生注意』
プールの底にレバーがあった。目を凝らすと『タキオン化転送装置起動レバー』とある。
そうか、美神楽はここからアマガハラに向かったのか。
倫乃介は後を追って自分をアマガハラへ転送しようと決意した。
プールの中に飛び込む。潜水して、レバーを引いた。
青い光が辺りを包み込んだ。
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