37.La milito Ɯilesa

「いやだなあ〜。そんなわけないじゃないですか」

ファミレスの店内で田中が笑いながら言った。

俺は安堵した。が、それと同時にムッとした感情も湧き上がった。

田中は神楽教に本当に行こうと思っていた訳ではなく、神楽教の内部の話を知っている人を探していただけだった。

「僕らお金ないんで、YouTubeやってるんです」

聞くと創作のホラー動画をYouTubeに上げていて、今度は宗教を題材にした話を作るためのネタが欲しかったと言っていた。

「それで、神楽教について知ってること教えてくれませんか。知ってる感じでしたよね?」

田中が見たことないくらいにキラキラした目で話すので、溜飲も下がってしまう。

「わかったよ。すこしだけね」

俺はこの間の榊や美神楽勇一と話したときのことをフェイクを混ぜて話した。田中は疑い混じりで聞いていた。「それ本当なんですか?」とか聞かれたので「どうせ創作に使うんだから気にするな」と言っておいた。

一連の話が終わった後、田中は喜んですぐに動画を作りに行くと行って去っていった。チャンネル名はRockStar、見てくださいねと言っていた。

俺はバイクを走らせ、家に向かった。

風が顔を撫でる感触が気持ちよく、夜の街の明かりがキラキラと輝き、人々の喧騒が響いている中、俺はただただバイクのスピードに身を委ねていた。


しかし、いつもの景色とは違う違和感が胸をよぎった。バイクのカバンの中にしまっていた水晶が何かを伝えようとしているような予感がした。俺はカバンを開け、手に取ると、水晶が輝き始めた。ノイズが消え、水晶から聞こえてきたのは、魔導教団のケイの声だった。


『招集命令がかかった。第二層で戦闘だ。こちらもすぐに向かう。近くのICから都心環状線に入って欲しい。岩戸ジャンクションのあたりで22-28ナンバーの黒いセダンを見つけたら合図を』

ケイの声が響く中、通信は途切れてしまった。俺は大通りを左折し、替木ICまでバイクを走らせて都心環状線に入った。岩戸ジャンクションに近づいたところで、黒いセダンを見つけた。ナンバープレートは22-28だ。

俺はセダンにパッシングをし、その車に着いていくことにした。すると、頭の中に再び声が聞こえてきた。

『よくきてくれた。こちらの指示に従ってアマガハラに入って欲しい。』


『わかりました』と念じた。

『それでは始める。Dhyuyāhithamāyaデュヤーヒタマーヤ!』

Dhyuyāhithamāyaデュヤーヒタマーヤ!」

俺も風の音に掻き消されないように大きく叫んだ。すると、水晶からキュイーンと高い機械音が鳴った。

突如として目の前が暗くなり、バイクごと下に落ちる感覚がした。空気が一瞬にして波立ち、バイクごと水の中に沈み込むような感覚がした。目を開けると、俺はアマガハラ側の首都高にいた。


一秒くらい時間を置いて、周りの視界が拓けた。

辺りを見れば、薄暗い空と眼下に広がる闇と煌びやかな光の点模様、近未来的でありながら朽木のようにささくれ立った異様な高層ビル、その向こうに猛烈な光量をもって輝く巨大な柱。

アマガハラだ。高層ビルが林立し、車の光がキラキラと輝いている。異世界の風景に身を置いていることが信じられない。


『敵が前から来ている。襲われそうになったらこちらでアセンションを切る。あとは自分の判断で戦うんだ』

前を見ると、亡霊を乗せたタイヤの無いバイクが何台も逆走して来ている。

その集団のうちの一台が俺めがけて加速した。

ぶつかる。

考える間もなく俺はハンドルを切り、躱した。

俺は震える手を水晶にかざして、『了解』と念じた。

残りの集団が迫ってくる。光る槍を掲げた亡霊たちが一斉に俺の至近距離に迫った。

Srji imāsiスルジーマースィ!」

俺は剣を振った。何台かが剣にかすり、衝撃音を上げる。


亡霊たちはUターンしてこちらに向かって再度襲いかかってきた。俺たちは加速するが、間に合わない。そこで、ケイが呪文を唱えた。


Hudyāsasthamāyaフデャーサスタマーヤ!」


ケイの声と共に、俺たちの身体がふわっと浮き上がり、都心環状線の道路に戻っていた。

これが、両界転換接続バイポーラ・コンジャンクション。榊との戦いの後、魔導師が俺に説明した。アマガハラと現実世界を行き来して撹乱する技。


Dhyuyāhithamāyaデュヤーヒタマーヤ!」

再びアマガハラに入る呪文の声が聞こえ、俺たちはアマガハラに戻ることができた。


すり抜けた亡霊たちの後ろについた俺たちは、再び呪文を唱えて剣を生じさせた。剣を振りかざし、亡霊たちを次々と狩っていく。彼らの姿は霞んでおり、闇の中から現れては消えていく。


しかし、次々と迫ってくる亡霊たちは止まることを知らない。ケイは再び呪文を唱えた。


Hudyāsasthamāyaフデャーサスタマーヤ!」


身体が浮き上がり、都心環状線の道路に戻っていた。

Dhyuyāhithamāyaデュヤーヒタマーヤ!」俺たちはアマガハラに戻る。すり抜けた亡霊たちの後ろについた俺たちは、再び呪文を唱えて剣を生じさせた。


剣を振り下ろし、亡霊たちを次々と狩っていく。彼らは闇の中から現れ、俺たちに迫ってくる。しかし、俺たちは彼らに立ち向かい、勇敢に戦い続けた。


時間が経つにつれ、疲れを感じ始めた。しかし、目の前に立ちはだかる亡霊たちに負けるわけにはいかない。


亡霊たちは次第に減っていき、ようやく彼らの数を減らすことができた。しかし、まだまだ迫り来る亡霊たちは絶えることなく、俺たちを脅かしていた。


俺たちは息を切らしながらも、再び呪文を唱えて剣を生じさせた。剣を振りかざし、亡霊たちに立ち向かった。一体、二体と倒していく。

俺は剣を振り下ろし、亡霊が乗るバイクを狩り始めた。激しい戦闘が続く中、ケイが俺に注意を促すように叫んだ。俺は早くも迫りくる他の亡霊に気を取られ、槍が喉元に迫っているのに気が付かなかった。

やられる……!

しかし、間一髪で亡霊の姿が消えた。

俺は助けられた。見渡すと、魔導教団の仲間たちがたくさんいることに気づいた。彼らは飛び上がり、亡霊たちに襲いかかった。バイクのキーを捻ると、バイクは火花を上げながら消えていった。


亡霊たちを倒すと、再び仲間たちは空中でキーを捻った。火花と共にバイクが組み上がり、彼らは再び戦闘を続けた。俺もそのまま彼らに続き、バイクに乗って戦いを続けた。


俺たちはトンネルに入り、闘いの舞台を移した。主人公も仲間たちの真似をして、バイクのキーを捻って飛び上がった。バイクは火花を上げて消えていった。


俺たちは槍と剣を使って亡霊たちと闘い続けた。倒した亡霊の衝撃で、俺だけが脇道に吹き飛ばされてしまった。しかし、襲いかかる亡霊たちを巧みに交わしながら、俺はバイクのキーを捻り、バイクを再び出現させた。


一人で脇道を進む俺は、攻撃を受けながらもバイクを操りながら進んでいった。霧に包まれた空間に足を踏み入れると、不気味な雰囲気がただよっていた。霧が濃く、視界はほとんどなかった。足元には冷たい地面の感触が伝わり、空気中には微かな湿気が漂っていた。


徐々に霧が晴れていくと、亡霊たちが集まっている様子が見えた。彼らは透明な姿をしており、静かにただ立ち尽くしていた。彼らの目は空洞で、魂の輝きを失ったように見えた。


亡霊たちの存在に気づいた途端、彼らは一斉に俺に向かって近づいてきた。彼らの手が伸びてきて、俺の身体を触れることはなかったものの、その存在感は圧倒的だった。彼らが放つ冷たいエネルギーが、俺の肌を這いずり回り、鳥肌が立つほどだった。


「俺たちはこの世界に閉じ込められている。だが、お前は違う。お前にはまだ選択の余地がある」


亡霊たちの声が頭の中に響いた。それは不気味な共鳴音のようなもので、一瞬にして全身に広がった。彼らは俺に何かを伝えようとしているのだろうか。


戦闘が始まった。亡霊たちが俺に襲い掛かってくる。彼らは透明な姿のままでありながら、攻撃は実体を持っていた。冷たい手の触れる感覚があり、それによって俺の身体は痛みを感じた。


俺も力尽くで応戦するが、彼らの数は増える一方だった。亡霊たちの攻撃は容赦なく、俺の体力を奪っていく。傷つきながらも、俺は必死に立ち向かった。


戦闘が激化する中、亡霊の中の一人が声を張り上げた。


「Hadīya!!!」

炎が舞い上がり、熱さとともに激しい衝撃が全身を襲った。意識が一瞬にして遠のき、俺は闇に包まれた。


闇の中で俺は何も感じることができなかった。身体の痛みも消え去り、周りの世界の喧騒も聞こえなくなった。ただ静寂が広がっている。俺はこのまま永遠に闇の中に閉じ込められるのだろうか。

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