33.Un konducado dælogat

新宿西口の高層ビル、その一室に依頼者はいた。

エレベーターを降りた俺と三島はノックをし、部屋に入る。

「失礼する」

社長イスに座ってガラス越しに崖下を見下ろす男は、神楽教の3代目教祖、美神楽勇一だった。

金髪に短髪にサングラス、教祖としてあまりに似つかわしくない姿は、昼の東京の俗な街の風景とはとても合っていた。


「よくぞいらっしゃいました」

美神楽がわざとらしく言う。

「我々が出向いた理由はもうお分かりかと思うが……」

「わかりませんねえ、僕の居場所を突き止めて、何をしたいかと思ったら謎解きゲームですか?」

「榊由美はアマガハラに囚われた。彼女は佐藤倫乃介との裁きの最中に黙秘を選び、代理人が選ばれるまで戻っては来れない」

「わかっている」

「我々はあのとき、上層で天の声に対する裁きを実行していた。そして手薄になったところを見計らい、裁きを仕掛けた。そうだな?」


「……なかなか面白い読みだ。三島さん。ただ、それが合っているかどうかは答えられないが、あなたがたの主張が正しかったとしても裁きの進め方として間違っているとは思いませんね。正当なルールに則った作戦です」

「そうか」

「ええ。それで報復をしにきたのですか?」


「いいや、報復なんかしたら罰が当たるだけだ」三島は笑って言った。

「取引がしたい」

「そう。そちらが条件を受け入れれば榊由美は即座に解放するようにマナに申し入れる。が、そうでなければ裁きの再開を急がせ、我々も代理人を多数召喚して徹底的にやる」

「なんと非情な」

「正当なルールに則った作戦だ」


「それで条件とは?」

「アマガハラへの転移システムを我々に譲渡して欲しい。もちろん、緊急事態の措置なので、その後は返還する」

「そんなことが受け入れられるとでも?」

「我々には勝算がある」

「いや、こちらにはメリットが無いんですよ三島さん。いいですか、我々はアマガハラに侵入しようとする他の者たちとは違う。こちらの世界で十分に力を持っている我々は、ただ活動を盤石にするために念の為あちらの世界でも活動を行っているに過ぎない。アマガハラで戦いに勝って、一発逆転をしようなんて甘い考えを持っているわけじゃないんですよ」

「……どうしても無理か」

「いいえ。一つ条件を飲んでいただけるのであれば可能です。あなたがたが天の声に対する裁きに勝ったあかつきには私を天の声に変わる新たなアマガハラの管理者に任命する、というのはどうでしょうか」

「……そんなこと、受け入れられるわけないだろう!」

「受け入れられるかどうかは魔導師様に聞いて見るべきかと。じきに、あなた方は選んでいられなくなるはずです」

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