31.La augra
俺と三島は榊の病室にいた。
榊は安らかな顔を浮かべて静かに眠っている。
「大丈夫ですか、この人……」
「大丈夫だ。良い方に導けば、元に戻る」
ピッ……ピッ……。
心電図の音が気まずく辺りに響く。
「来るぞ」
「はい」
数秒の後、病室のドアが開いた。
マスクをした若い女。こちらに軽く会釈をし「お知り合いですか」と尋ねた。
「ええ……学生時代の友人で……」
三島がそう答える。
「こんな……ことに…………なるなんて……」
嗚咽にも聞こえる声でそう呟く。
「由美、由美、由美……」
そう言いながら、黒い珠のブレスレットをしたてを榊の顔にかけた。
俺と三島はその手を掴んだ。
「何をしようとしているんですか?」
「いや、ただ彼女のことを思って……」
そうですか、と言って俺は女の額に手を傾けた。
「
メラメラとした炎の柱が彼女の顔のそばに現れた。思わず女は仰け反った。
「何をする!」
俺は答えた。「なぜ見えたんですか?」
俺と三島は彼女を押さえつけた。
「榊を始末しようとしたな」三島が女に尋ねる。
女はフーフーと息を荒げながら俺と三島の手を掴む。
「手荒な真似はしたくない。榊の殺しを依頼したやつに会わせろ」三島がそう言った。
女は観念したように手を緩めた。
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