24.Parar lom Bellum
「あーっはっはっは!!」
居酒屋の中に佐山の声が豪快に響いた。
まるでこの間の泣き言を言っていた男が別人のようだ。
「佐山さん、飲みすぎですよ。またこの間みたいに悪酔いしますよ」
「そうだな、これ以上君に迷惑かけちゃいけないからな!あ、それとここは奢りだから、もっと気にせず食べていいんだぞ」
「それ、さっきも聞きましたよ」
「はっはっは!そうだったな!いやあ、それにしても、君には感謝してもしきれないよ」
「そんな、俺一人の力じゃないです。俺だってサキや教団が力を貸してくれるのがわかって安心しているんです」
「なら、なおさら感謝しないとな。私の願いにそんな力強い仲間を引き入れてもらえたんだから」
「……でも、正直なことを言うと、ちょっと不満もあって」
「不満?どうしてだい?強いんじゃないのかい?」
佐山が不安そうな顔を向けた。
「いや、別に心細さを感じているわけじゃないんです。でも、今まで俺はずっと助けられっぱなしで。もう少し自分の力で戦いたいと思ってきてて」
佐山はなるほど、というような表情をして顔を綻ばせた。
「そうか。それは良いことだな。リスクを承知で大きな敵に立ち向かっていく。そういう若者は応援したくなるよ」
「でも、今回ばかりは佐山さんの人生がかかっている大勝負です。自分の勝手な思いでリスクを増やす意味はありません。もし負けたら……」
佐山はすかさず言った。
「大丈夫だ!君なら」
「いえ、そんなことはないです。まだまだ力が足りないと思っています」
佐山は俺の言葉を聞きながらジョッキのビールをグビグビと飲んだ。
「いや!君は君が思っているよりすごいぞ!もっと自信を持ちなさい!」
「いやだめです!!」
「私は挑戦する人間を応援したい!私のことは構わないから、思いっきりやるんだ!!」
その時だった。「琳乃介」とどこからか声がした。
声の方に目を移すと俺のカバンの中から淡い明かりが漏れていた。
俺はカバンを膝の上に置くと、中の水晶に映ったサキの姿が語りかけた。
「琳乃介!聞こえる?」
俺は思わず周りを見渡す。幸い、この怪奇現象に気づいている人はいないようだった。すぐさま会計を済まし、佐山とともに店の外に出た。
「サキ!聞こえるか?」
「……あ!気づいた?返事が遅い!」
「しょうがないだろ。急だったんだから。それより何?」
「まずいよ。例の占い師、裁きを仕掛けて来た」
「……なんだ。裁きって、それもともとの予定通りだろ。教団の人に連絡して早く行こう。俺もそっちにすぐ向かうから!」
「違う!今は教団の戦闘できる人は、みんな上の階層の裁きに行ってるんだよ!」
「……え?どういうこと?」
「教団は上の階層に基地を持ってる。今回そこに何者かから大きな攻撃があったんだよ。で、あの占い師はそれを見計らってわたしたちに勝負を挑んできた」
「それって……」
「教団の助けは受けられないってこと。とりあえず、わたしはわたしで向かうから、琳乃介も早く準備して!」
「そんな、でも、俺たちで立ち向かえる相手なの?」
「そんなのわからないよ。でもやるしかない。戦わなきゃもっとひどいことになるよ」
「くそっ……わかった!」
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