第101話 謎
体育館に居る全ての人が、驚きを超え呆気に取られた。唯一人を除いて…。誰かは後で説明するね。
「あれは…。」
「あれ。」
「あれって…」
観客の女子生徒が瞬(まばた)きを忘れ、モニターを食い入る様に見る。
「あれは…。」
部長も。
「あれって。」
副部長も。
「なんじゃありゃ。」
小南も。
「まさか。」
美星も。
「なんだってばよ。」
百地も。
「あ、あれは…。」
更にエロ部長も。
「あれは…。(✕いっぱい)」
対戦チームの皆さんも。
何が起きたかと言うと…。
【リョウサン】が『勇者の構え』を取った瞬間。
『ゴソゴソ』と、ポケットから紙を取り出す。覚えられなかったから読むね。
一転俄(いってんにわか)にかき曇る。それは、まさに青天の霹靂(へきれき)。
暗雲を光らせる雷の一筋に打たれる一振りの剣!
んとね。
『勇者の構え』をした時。いきなり、空に黒雲が出て雷が鳴り。持っていた剣に雷が落ちた。って事。
で、剣が光ってる。
「うおぉぉぉぉぉ!」
『勇者ダッシュ』。
ペダルを目一杯踏み込む。タイヤは高速空転し、その勢いで炎が噴き出す。
グリップしたタイアは、機体を『勇者ダッシュ』させる。その地面の軌跡に炎で二本線の電車道を作る。
某映画のタイヤ痕が燃えてるみたいな感じ。
振り上げた剣は、
「うぉりゃーっ!」
私の気合と共に振り下ろされる。剣の斬撃は稲妻で軌跡を描く。
『勇者斬り』
それは必殺の名前。
斬られた【楽美兎(らびっと)】が剣の雷で包まれる。
その中に見えるのは、二つに斬り裂かれた黒い影!
斬り抜け『ザシャーーーッ』と両足が地面を抉(えぐ)り止まる。
「勝ったぁぁぁぁぁ!」
思わず雄叫び上げちゃった。
ちなみに、私の目の前のモニターが☓の字に分割されて上と左右の場所に、今の状況が違う角度から映されてた。残りの一つは、通常の画面。
「い、今のは…。」
驚きを隠せない部長。
「カッケーだろ。」
その声の出処である八束の方を部員の皆が見る。そう、驚いて無かったのは仕込んだ八束先輩だけ。
「八束さんの仕業ですか?」
と、美星。
「そそ。部長との対戦記録見た時に、[転生者]日向んなら、またやるんじゃないかと思ってね。」
得意気な八束。
「違反じゃ無いんですか?」
と、副部長。
「日向んてさ、アクセサリー使ってなかったろ。」
「確か。」
少し考え答えた副部長。
「まさか…。」
部長は気が付いた様子。
「その通り! あれはアクセサリー!」
皆が驚きで固まる。いや、呆れたと言う方が正しい。
「いやー。苦労したよ。まあ、条件付きのアクセサリーだから何とか入ったんだ。」
と、笑う。
驚きの次に静寂が支配していた体育館。それが暫くの後に解き放たれる。
「カッコイイー!」
「ヒーローロボットみたいだったね。」
その声に、増々得意気になる八束。
「えい。」
ポチっと引かれるトリガー。
勝利の余韻に浸る私に、
「えっ!?」
『ズガガガ』と【リョウサン】を貫き蜂の巣にするガトリング砲。
赤色の[ALERT]がいっぱい出て、[LOST]と。
動かなくなった。
そして[GAME OVER]と…。
「な、何が…。」
「あっ…。」
それは、体育館にいる人の口から漏れた言葉。
有頂天になっていた八束は、部員に向き直り、
「ほら、エフェクトだけのアクセサリーだから、威力が上がるわけでもないし…。」
と、頭を掻いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます