第97話 切れ

「何とか、勝てたけど…。」

 他の機体情報を確認する副部長。

「後は赤色か…。」


 次に確認したのは使用可能な武器。

「鉄球だけ…。」

 ガトリング砲は無事だが、両手で支えるサイズなので使用不能だった。

「為せば成るかな?」

 機体を赤色機体が向かった方へ進める。


「皆は。」

 生存している機体情報を確認する鷲雄赤音。

「この機体だけか…。」

 次に行うのは、使用可能な装備を確認する事。やる事は同じ。

「全部の武器が使用可能か…。でも、サブカメラの情報だけでどこまで戦えるのか…。」

 もと来た方向へ機体を進める。


「居た!」

 先に発見したのは、メインカメラの残っている副部長。

「ミサイル残ってればなぁー。」


 かなり遅れて、

「見えた!」

 やはり、サブカメラだけの情報は厳しいものがある。

「重装甲か、ハンドマシンガンで削るより、剣の方がダメージが通るな…。」


 互いは全走力まま、間合いに入る!


「やぁぁ!」

 トリガーに力を込める副部長。


「とうぉ!」

 トリガーに指示を送る鷲雄赤音。


 それは、新たな開幕のゴング!


 ……。


「あっ…。」

 誰もが発したその言葉…。



 大型モニター、コックピットのモニター、会場にある全てのモニターに表示された、[TIMEUP]の文字。


 そう、時間切れを見たから…。



「熱い戦いに時を忘れた会場!」

 進行が煽(あお)り、

「素晴らしい戦いでした。」

と、締めた。


 そして、歓声が体育館を支配した。


 コックピットが開き、三人ずつ計六人が出で来た。

「素晴らしい戦いに拍手を。」

 『パチパチ』で、体育館いっぱいになった。


 舞台から降りて来る三人。

「チーム戦だったから引き分けたけど…。」

 小南先輩は申し訳なさそうに。

「まだまだですね。」

 副部長さんも続く。

「無念。」

 百地先輩は短く。


「いえいえ、会場は十分温まりました…。」

 笑顔の部長さん。

「温まり過ぎて、沸き立ってますが。」

 美星先輩が突っ込む。でも、その通りで観覧している女子生徒の雰囲気が変わっていた。

「ともあれ、お疲れ様。」

 首を少し傾げ、目を瞑る部長さんの笑顔は可愛い。


「少し時間ありそうなので、着替えて来ますね。」

 副部長さんが更衣室へ向かう。

「待って〜。」

 小南先輩も続き

「同じく。」

 百地先輩も行った。


 部長さんが私の前に来て、

「日向さん。思いっ切り楽しんで来てください。」

 笑顔で。

「はい!」

 私は、今日一番の返事で返した。

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