第48話 緊急出動

 叫ぶサイレン! ライトが回る!

 それは、緊急事態を告げていた。


 ヘルメットを手に、いつものコックピットへと乗り込み、機体に火を入れる!

 直後、正面モニターに大きくオペレーターの美星先輩が映し出された…。

「えっ!?」

 それを見た瞬間、私は困惑した。

 何故か?

 それは、美星先輩の格好を見たから!


 美星先輩は、昔のロボットのコスプレをしていた!


 とりあえず説明しとくね。

 頭は四角で、両目が丸に針のアナログメーター。両耳は先端が少し丸みを持った膨らみの円錐…。分かり易く言えば『ビビビー!』ってギザギザのビーム出そうなアンテナ。で、人間で言えば口に当たる所から顔を出している。

 胸の所にも、アナログメーターが何個か並んで付いている。腕は銀色の蛇腹。如何にも! って感じのロボット。


 美星先輩のロボットコスプレ…、長いから美星ロボって呼ぼう。

 美星ロボが、

「発進しーくえんす進行中。」

 棒読みでロボットぽく言った。


 暫くすると

「発進準備完了。」

 美星ロボの宣言通りにモニターに[準備完了]の文字が出た。

 呆気にとられていると、美星先輩の背後に立つ人物が勢いよく、

「発進!」

と合わせて、右手の人差し指で『ビシッ!』とした。

 それは、紛れも無く白衣を着た部長さん。何だか、博士(はかせ)ぽい…。こっちは、部長博士にしとこう。


 正面モニターの下の方に、三つの小窓が開いた。右から小南先輩、副部長さん、百地先輩。私とお揃いのヘルメットを被っていた。

 声を合わせて、

「ラジャー!」

と力強く。右手を握り胸の前へ持って来るポーズ。

 あっ、合わせる様に私も掛け声とポーズやってたよ!


 モニターにトンネルに似た景色映り、ゆっくりと後ろにが流れ始める。それは、速度がどんどん速くなっていった。そして、出口と思われる光を潜る。


 一瞬、モニターがホワイトアウト。次に映ったのは外の景色…。

 だけど、この目線の位置は…、空? 飛んでるの?

 左右を確認すると、皆で並んで飛んでた…。と、飛べんるだ。知らなかったよ。結構速いな。


 また、美星ロボが映り

「目的地接近。」

 街が見えた。それはいつもとは違って燃えてた! 炎と煙を上げて。

「えっ!? 燃えてる!」

 驚く私を尻目に、そいつは暴れていた。


 高々と上がる煙をスクリーンにして、炎が照らし出したモノ…。それは、大きい生き物が蠢く姿だった。

 やがて、煙のスクリーンを破って現れたのは…。怪獣をロボットにした様な奴! デザインは昔の敵役って感じだ。

全ての関節は蛇腹で覆われていて、顔とかのあちらこちらにビス止めが線を描いている。


「当該地域は、まだ避難が終わっていない。直接的な戦闘は避け、戦闘エリアまでの誘導を優先する様に!」

 部長博士が指示を出すと共に、モニターに地図が映り誘導経路と戦闘エリアが表示された。

「ラジャー!」

 皆でポーズを決めた!


 更に怪獣ロボットに接近すると高度が下がり、両足で地面をえぐり『ザシャァァァァァ!』と、二本線を長く付け着地した。

「各自散開して、誘導開始!」

 部長博士の合図と共に皆が散っていた。


 地面に降りて初めて怪獣ロボの大きさが解った。私達の機体の三倍ぐらいはゆうにある。大きい!


 牽制(けんせい)しつつ、指定された戦闘エリアへと誘導して行く。

 怪獣ロボの目の前をチョロチョロするのは、当然百地先輩の機体。

 小南先輩の機体は離れた所から、怪獣ロボの顔辺りに射撃。

 私と副部長さんの機体はバック走行しながら、牽制射撃で注意を引く。


 艱難辛苦の末…、苦労してって事です。怪獣ロボを上手く戦闘エリアへと誘導できた。

「戦闘えりあニ、入リマシタ。」

 美星ロボが確認をとった。

「了解です。モードを牽制から戦闘に移行。」

 部長博士から許可が出た!

「ラジャー!」

と、ポーズをとる…。疑問に思っていたが、今はやらないと違和感がある。俗にう、しっくりくるって奴だと思う。


「ダダダダダァァァァァ!」

と、私の機体のライフルが火を吹く。


「ガォォォォォォ!」

と、怪獣ロボが口から火を吹く!


 的が大きいから攻撃は当たる!…んだけど、あまり効いてないみたいだ。次第に押されてくる。



「戦闘えりあニ隣接スル区域丿避難完了丿連絡ガ入リマシタ。戦闘えりあ丿範囲拡大可能。」

 棒読みの美星ロボ。

「ようやくか…。」

と、部長博士。

「よし! ファイナル・ガッターイン承認!」

 部長博士は、右手を振り上げくるりと一回転。正面で右手を振り下ろし、人差し指で『ビシッ!』と。

「ふぁいなる・がったーいん承認。」

 美星ロボも右手を振り上げ、勢いよく振り下ろした。そこには、黄色と黒で縁取られた赤いスイッチ。ご丁寧に透明な板のカバーの付いている。

 その透明なカバーを『バリーン』と砕きながら、赤いスイッチが押された。


 モニターに『ファイナル・ガッターイン承認』の文字が浮かぶ。それを見た私は、両の拳を握り胸の前で腕をクロスさせて叫んだ!

「レッツ! ガッターイン!」

 叫び終えるタイミングで、握り拳のまま、両手を前に突き出した。モニターの小窓に映る三人も同じ事をした。

 するとモニターが☓(ばつ)の字に分割され、今の四人の掛け声とポーズがリピートされた。

 ちなみに、私が真ん中の上、下は副部長さん、右が小南先輩で左が百地先輩。

 その後、モニターの分割された中央に向かって全員が右の人差し指を伸ばし重なる。

 画面が切り替わると、全員の人差し指は〈G〉って書かれた点滅しているボタンを押した。


 分割リピートが終わるとカメラ視点が、切り替わり外から見た私の機体になった。

 昔風のバリアーで私の機体が包まれ、ふわりと宙へ浮かぶ。で、私の機体のバリアーから二本の腕の様に伸びて小南先輩と百地先輩の機体を包みながら、こちらも持ち上げた。更に小南先輩と百地先輩の機体を包んだバリアーは、一本ずつの腕を伸ばして副部長さんの機体を包み宙へと。

 そして、宙に四機で大きな菱形が描いた。

 菱形が完成した時に光ったのは言うまでもないよね。


 その後、またモニターが☓(ばつ)に分割して、それぞれの顔が映った位置で機体の変形の様子に変わった。


 私の機体は、頭と胸。

 小南先輩は、右腕。

 百地先輩は、左腕。

 副部長さんは、お腹から下。


 それぞれ変形した。


 変形を終えると、モニターが分割から通常へ戻った。

 それぞれの機体間の距離が縮まり菱形が小さくなり、四機が合体して大きな人型となった! やっぱり、目は『ビカン!』ってなった。


 そして、大地に降り立った巨大な人型は、両の拳を握り胸の前でクロスさせた。それに合わせて四人で、

「部活合体! リョウサーン4(フォー)!」

と叫ぶと、左腕をグッと腰に添わせ、右腕をバシッて突き出した。空手の右の突きの様なポーズ。


 リョウサーン4の胸の辺りの装甲が開き、中からこの機体の象徴が、まさに顔を出した!

 象徴が定位置まで出ると目が光り、顎(あぎと)を極限まで開き吠えた!

「にゃ~ん!」

 !?

 猫?


「…。」

 顔の右側を、アカ助がぐりぐりやりながら、『にゃ~ん。』と鳴いていた。

 右側を下にする様に横を向き、左手でモフモフしながら…

「ねえ、アカ助…。」

「にゃ~ん。」

「猫落ちが多いんだけど…。大丈夫かな?」

「にゃ~ん。」

と、返事を返された。

「ちょっと、考えないとだね。後[獅子]のアクセサリーは暫く止めとくよ。」

 そこへ、目覚ましが起きる時間を告げる。


 朝の支度をしながら、私は[猫落ち問題]を忘れた…。

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