第36話 解る

 『白い奴』は、進行方向はそのままで機体を半回転させバック走行になりながら、持ち換えたライフルで撃ってくる。

 私はシールドを構えながら左へと回避する。


 あの動き、どこかで見た様な。新たな疑問が頭に浮かぶ。

 でも、はっきりした。直線的に動いてないから狙ったとろこに居ないんだと。


 『白い奴』がバック走行で描いた弧は頂点を作り半円となる。

 つまり、円の頂点を超えてから、全身走行になり、こっちに向かって来る!


 当然、撃ってくる。ライフルを、

「スパパパパーッ!」

って。


 回避行動を取るが、少し貰ったみたい。その証拠に[ALERT]って出た。


 こっちの弾が当たらない理由(わけ)さえ解れば!

 毎度の事ながら、直ぐに対応できるわけもなく…。やっぱり、こっちがダメージを多く受ける。


 戦っている間に解ったのは…。

 いつも、あの動きをやっているわけではない。で、あの動きをやると速度が落ちる。って事みたい。

 速度が落ちるのは、小さいターンを繰り返しているからだと思う。


 そして、戦いは最後を迎えた。


 ダメージを受けて機体の動きが鈍くなった!

「ヤバい!」

 回避は、間に合わなかった…。ミサイルが雨の様に降り注ぎ、いっぱい喰らった。


 モニターが[ALERT]で真っ赤になり、続いて[LOST]が表示され、動かなくなった。

 この辺りは、部室にあるのと同じだ。



 モニターが、ブラックアウトして完全に戦いが終わったと知らせる。直後、

「一分間のインターバルの後にスタートします。機体、武装の変更は可能ですからね。」

「あ、ありがとうございます。」

と、モニターに微笑んだ。

「べ、別に親切じゃないって言ってるじゃありませんから!」

 ぷいと横を向いたけど、ほっぺの赤いのは隠れないよ。


 あの動き、何処かで見た様な。なんだけっけ?

 う~ん。考えている内に、手が自然とくねと動いて、

「こうで、こうなって…。」

 くねくね、

「こうが、こうだから…。」

 くねくねくね、

「ん!?」

 あーっ、思い出したよ!

 あの動きは、私が最初に思った奴だ。あれに間違いない!


 私の頭の中で、リプレイされる『あの動き』。それは、「フィギアスケート」の動き。

 弧を描きながら、流れる様に繋がって行く、あの美しい動き。それを、機体でやっているんだ!

 ちょっと感動し、次に思ったのは…。でも、どうやって?


 コックピット内を見渡す。機体の動きは基本的に操縦桿のはず。操縦桿をどうやってと手をかけて、前後しながら考える。

「えっと、これが前にしてからの後が…。で、ペダルを踏むと…。こうなるから…。」

 ガチャガチャ、

「こっちを全部前にして、こっちは動かさないと…。」


 考え中。


 キュピーーン!


 私の額から、謎の稲妻が走る。


 あっ! そうか! 操縦桿を前後に倒す深さを左右で微調整しながら、動いているんだ。


 改めて、あの人の技量の高さが解った。と、同時にそんな凄い人と戦っている事が、無性に嬉しくなった。

 無意識に「ワタシ、ワクワクすっぞ!」の気持ちを実感していた。らしい。後で、ニヤニヤしてたって言われたもん。

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