第34話 白い奴
リフトアップされ、マップの中央を挟んで等位置にセットアップ。
ちょっと、離れたところで向かい合った感じ。
モニターの左側に、表示されたのは…。
メーカー:ササラセ精機社
機体名:【PEC−迅矛(じんむ)−002】
解説:汎用機体として作られた001タイプの改良型。
簡単なデータと共に、機体の姿も表示された。
えっとね、第一印象は…。
正面から見た姿が長方形。リョウサンは正方形だから、人の形に近いのかな?よくあるアニメのヒーローロボット。後ね、機体の胸の辺りが赤いけど、他の色が全体的に白い、だから余計にそう見える。それが、私のイメージ。
そうだ! とりあえず相手の機体の事を『白い奴』と呼ぼう。確か愛称付けて呼ぶのが、決まりって前に部長さんが言ってたし。
いつの間に始まる、カウントダウン。
3!
2!
1!
0!
「何、呆けてますの、行きますわよ!」
『白い奴』見てたら、ぼーっとしてたみたい。でも、声掛けしてくれるなんて。やっぱり、良い人だ。
『白い奴』のタイヤが高速スピンからの猛ダッシュ! 私の右側に高速移動しながら、撃ってくる。咄嗟に回避行動とライフルで威嚇の反撃。撃ってきた感じだと、種類は違うかもだけどライフル系の武器。たぶん…。
「それくらい、避けてもらわないと。私(わたくし)が勝った時に盛り上がりません事よ。」
凄いな、この人…。こっちに話す余裕があるんだもん。私は、操縦でいっぱいいっぱいなのに。
『白い奴』は右側に高速移動し、障害物に隠れた。と、思った瞬間に飛び出し、今度はこっちに来た! 回り込む様にして障害物から出たんだ。
こっちは障害物まで、もう少しある。
撃ってきた! 連射の効くライフルらしい。咄嗟にシールドで防御。
カンカンカンカンカンカン!
弾丸を弾く音が響く。
音が途切れたタイミングを見計らい。シールドを解除して、ライフルを構える!
「やば!」
見えたのは、『白い奴』から放たれたミサイル! たぶん、シールドで視界が遮ぎった時に撃ったんだ。
後ろ! 速度をできるだけ維持しての回避!
「ふう、危なかった。」
上手いな! こんな戦い方するんだ。
これは、楽しい! 心から思ったのが、顔に出たみたいで、
「何、締まらない顔してるんですか! モニターでギャラリーが見てますわよ。」
げっ、顔にまで注意行かないよぉ。変顔にならないと良いけど…。
再度『白い奴』をモニターに捉えた。障害物の陰を目指して移動している。
今度は、こっちからとばかりにと『白い奴』の現在位置と障害物の間にミサイルを撃ち込む。
着弾し『ちゅどーん』と爆発。でぇ、進路を変える瞬間に、狙って撃つ!
「そこだぁぁぁぁぁ!」
スパパパパッ!
弾丸は、狙い通りに『白い奴』へ当た……らなかった。
「な、なんで?」
確か、こんな時に使うって部長さんに教えてもらったのは、
「あの『白い奴』は、バケモノか!」
って言うんだ。たぶん、合ってるはず!
その時、私は違和感を感じたのは確か。今の当たったと思ったのに…。もやもやした感覚が残った。
「やるじゃありませんか。でも、まだまだですわ!」
返す刀でライフルを撃ってくる。私は、回避しながらの、牽制射撃。
『白い奴』は交わすがてらに、爆発が収まり道が開いた障害物の陰へと滑り込んだ。
やっぱり上手い。
「でも!」
私はペダルを目一杯踏み込みフルスロットルで機体を加速させ障害物へ寄せる。
障害物を廻り込む様にして『白い奴』を狙う、それが私の作戦。
それを読んでいたかの様に、『白い奴』が飛び出して、こっちに来る。
ライフルを構えようとして、はっと気が付いた。『白い奴』は、剣持ってる。
構えた剣を勢いよく突き出す!
間に合うの? 操縦桿を両方内側に倒し、しゃがみの姿勢をとりつつ減速。
お互いの機体の右側が、すれ違った瞬間に、
「カイーン」
と私の機体の頭が火花を散らす。
モニターに[ALERT]が小さく表示された。ダメージはあるけど戦いに支障は無さそう。
今、かすった! 背中をゾクゾクが駆け上がる。もう少し遅かったら胴体に刺さってた? ヤバい、ヤバい…。
でも、その時の私の顔はニヤけていたとか。恥ずかしい。
直ぐ様、ターンして『白い奴』を撃つ!
「そこだぁぁぁぁぁ!」
今こそとトリガーを引く。それに合わせて
「ダダダタダダッ!」
火を吹くライフル。
今度は、はっきりと見えた。
『白い奴』は、左に小さく弧を描き、次に右に大きく弧を描いた。
頭の中で、もやもやしていたものが、今疑問に変わった。
「今のは…。」
無意識に小さく呟いていた。
疑問が頭の中を駆け巡り、手を止めた。はっとして、頭を左右にニ、三回振り、
「今は考える時じゃない!」
自分に言い聞かせる様に呟いた。そう今は感じる時なのだから。
部長さんが言ってたのは、この時だったんだ! と実感。
かわしたと思ったが[ALERT]が数個モニターに表示されていた。
「私(わたくし)の機体に傷を付けるなんて。あのストーカーは何者?」
マイクが拾わない程度の小声に出していた。
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