第33話 彼女

「では、こちらで受付を。」

 手を引っ張られ、カウンターの前に。

「ところで、貴方。パンツァー・イェーガーはいつから?」

「えっと。この春に高校入学してからです…。」

「まあ!」

 なんだか、反応が大きい…。

「私(わたくし)より後輩とは、ますます図々しいですわね。」

 日本語ってそんな使い方するんだっけ、よく解らなくなってきた…。

「では、レギュレーションは機体タイプは自由でカスタマイズは無し。武装制限なし。マップは小。以上で、よろしくて?」

 マップ選択以外は、いつも部活でやっている奴だ。

「はい、良いです…。」

「では、それでお願いしますわ。」

 受付の女性に向きオーダーを通りした。

 今、気が付いたけど受付の女性の制服がオペレーターぽいコスプレになっている。ちょっとカッコいい。雰囲気を盛り上げる演出しているんだ。状況が違えば、楽しく眺めていたのかな…。

「対戦人数は、お二人でよろしいですね?」

「はい、二人で!」

 言い方に気合が入ってるし…。


「セットアップ完了しました。A1とB1を使ってください。」

 仕事早い。


「私(わたくし)がA1を使いますので、貴方はB1を使ってください。」

 キョロキョロするとコックピットだと思うカプセルみたいな奴に番号が振ってあった。部活のとは違って近代的な感じがする。


 前に立って解った。ゲーセンでのやり方が全く解らないと。困ったぞ。

「貴方!」

 ビクッ!

 恐る恐る振り返る。

「もしかして、ここでやるのは初めてですか?」

「はい…。」

「最初に、ここの開閉スイッチを押して。」

 指差した先には、《OPEN/CLOSE》と書かれた黄色いスイッチがあった。押すと、後ろを支点にして戦闘機みたいに『パカッ』と開いた。後ろと言っても、どっちが前とか解らないから適当だけど。

 椅子の方向見ると後ろで合ってたみたい。

 カッコいい! と見惚(みと)れてたら、

「中へ。」

と促(うなが)された。


 そうそう、ここのコックピットって使用後に毎回除菌を自動で行うとか。だから中に人が居なくても、閉まってる状態なんだって。


 コックピットに入り、椅子に座る。

「椅子の左横に十字キーがありますから、前後と上下を合わせてください。」

 早速、調整を開始する。これもカッコいい!

「終わりましたら、内側に開閉のスイッチがありますから押してください。」

 この人、意外と親切なんだ…。丁寧に教えてくれている。

「ハッチが閉まったら、後は同じだと思います。」

「親切にありがとうございます。」

 ペコリと頭を下げて、感謝の言葉。

「えっ。」

 キョトンとした瞬間に、ほっぺが赤くなった!

 プイッと顔を横に向け、

「べ、別に親切にしたわけじゃないんだからね!」

 どこかで、聞いた事があるような台詞。

「私(わたくし)が勝った時に、椅子の調子がとか言い逃れ出来ないようにしただけですわ!」

 顔は益々、赤くなっていった。

「もう、判りましたわね!」

 くるりと向きを返す、A1コックピットへと向った。


 あっ! 思い出した。確か、あれって『ツンデレ』って言うんだ!

 あの人、『ツンデレキャラ』だったんだ。私、初めて見たよ。あのギャップはちょっと可愛い。



 椅子の調整を終えて、ハッチを閉めるとコックピット内のいろいろな所に明かりが灯り始めた。

 見回すと、うちの部活にある奴とそんなに大差無いんだ。椅子を調整した時に、操縦桿とペダルの位置も違わないし…。強いて言えば、違うのは左右のパネルに付いているものが違うのかな?

 等と、考えているところへ、

「準備よろしくて?」

 まだ黒い正面モニターの右上小窓が開き、さっきのあの人が小さく映った。

「は、はい。」

「では、右赤トリガーでスタートです。」

 カチッ。正面モニターにマップが映し出された。

 3Dで描かれた、マップが回転して全体が見渡せた。基本平地で、数カ所隠れる事のできそうな障害物がある。中央付近は、何も無し。

 その後、機体選択の画面に移行した。

初めて見る機体がいっぱいあって、カチャカチャ変えながら見ていると、横に表示されていた数字…、残りカウントが赤くなった。


 どうしよう…。とりあえず【リョウサン】にしとこう! 慌てて選んだ。

 言うまでもないんだけど、武装も同じことが当然起きた。

 だって、いっぱい見た事無いのが、あるんだもん!


 結局、選んだのは【リョウサン】にいつもの武装。

 折角、ここまでいろいろな機体と装備を見に来たのにと、ちょっとだけ思った。


 準備ができたところに

「スタートしますわよ。」

と、声をかけてくれた。やっぱり、親切だなと、ニコリと笑顔で

「はい。」

と返したら。

 思った事が伝わったのか、また赤くなり横を向いた。そして、

「言い忘れてましたが、この対戦はライブモニターで皆が見てますわ。更に、コックピットカメラで、パイロットの顔も表示されますわ。あまり、変な顔するとギャラリーに笑われますわよ。」

 右手の甲を左頬に当て、

「お〜ほほっ。」

と笑った。

 は、初めて見たよ…。『お〜ほほっ』て笑う人。

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