第24話 美星

 今日も部活の始まりは日課のランニング。


 部室に帰ると、部員のみんなが机に着いて会議してた。

「お帰りなさい。」

 部長さんに迎えられ、

「今日はここまでにしましょうか。明日までに皆さんで考えておいてください。」

「解りました。」

 皆さん立ち上がると、部長さんと美星先輩を残して、モニタールームへと移動を始めた。

「では、今日は美星さんに。」

 見ると机に、資料のファイルを並べていた。

「今日は、部長さんの機体かと思ってました。」

「部長の機体は汎用機体なので、それに…。」

 美星先輩が言いかけたところで

「そう言えば、八束(はつか)さんって学校に来てます? 確か、同じクラスでしたよね?」

 部長さんが美星先輩に聞いた。

「一応、来てます。でも、授業中は寝てばかり。授業終わると直ぐに帰ります。」

「あら、忙しいのかしら?」

「バイトの方が忙しいとか、言ってました。」

 何の事だろうと言う顔をしていたのだろう。部長さんが、

「八束さんは、うちのメカニックなのよ。と、言ってもパンツァー・イェーガーは機械じゃないから、正確にはプログラマーですけどね。」

「メカニックまでいるんですね。そこまで、リアルなんだ。」

 感心しているところへ。

「機体を販売しているメーカー、武器を販売しているメーカー、それにパーツを販売しているメーカー、それぞれを上手くマッチングさせて最大のポテンシャルを引き出すのがメカニックの腕の見せ所です。」


もやもやっと想像が頭から出る。


「この機体は、お前の為だけに作られた専用機体だ! さあ、潜在能力の全てを引き出せ!」

「了解です。」

 敬礼をして起動キーを受け取り乗り込む。カッコいいBGMをバックに流しながら…。


 コックピットに入り、起動キーを差し込むと機体に火が入り、次々と計器類に灯りが灯る。

 素早くチェック。そして、その示していた数値を見て、

「今まで機体の5倍のパワーがある!」

 決意を固め、

「これなら行ける!」


 カッコいいシーンは、想像ではなく妄想の粋へ突入していた。



「八束さんのバイトは機体のセッティングや設計をやっているのよ。セッティングのスキルも上がるし、新しい武器、パーツをいち早く知ることもできるという、一石二鳥。」

「なるほど!」

「それに、バイトの伝(つて)で、機体とか、その他必要なものを融通してもらうこともあるので、非常助かっています。」

「そういうことなんですね。」

「バイトが一段落したら、その内顔を出すでしょう。」

 どんな人か会うのが楽しみになった。

「話が反れましたね。美星さん、後はよろしく。」

と、部長さんはモニタールームへ。



「まだまだ、機体は種類があるのですが…。うちの部員に使っている人がいないので使いながらの説明は無理です。」

 なるほど。

「更に、武装にパーツの組み合わせがあり、原型を留めないものまでありますから。」

 聞いているだけで、ワクワクする。

「なので機体の中でも、よく使われている機体に絞って説明しますね。」

 美星先輩がファイルを広げ、機体の説明をしてくれた。


 ファイルで説明を終えると、タブレット端末で動画を見せながら解説をしてくれる。


「おーっ、ドリル付いてる! はっ、反対の手にはクローがぁ! 解っている組み合わせだ。」

 やっぱり、ドリルは浪漫だよね。

「あのドリルで、地面に潜ったりは出来ませんから。」

「えーっ。」

「漫画やゲームじゃないんですから。」

 いや、これゲームだし…。


 動画見ていると色々な機体と装備の組み合わせがあった。


 大っきい剣一本で突っ込んで行く。でも、射撃武器は付いているの? それらしいものは見えないけど。それは、格闘機体って奴らしい。格闘に特化した潔(いさぎよ)い機体だ。


 全身にミサイルを装備した奴が、『バババババババババァァァァァ!』って撃ってる!

 ミサイルシャワーって言うらしい。浴びたくはないけど、浴びせるのは良いかも。


 人形(ひとがた)? って思う様な奴もいる!?

 変形とまでいかないけど、四つん這いになって大っきい大砲を安定させてるのか。

 砲撃型なんて、大砲が本体かって思う様な形だし。


 兎に戦…、ではなくて…。兎に角、奥が深い。

 ん? もしかしたら、奥が深いんじゃなくて常に奥が深くなり続けているんじゃあ? と、思った。


 一通り説明が終った時に、美星先輩が、

「今見てもらった機体ですが、うちの部にある機体は限られてます。部活の予算もありますしね。」

「全部の機体揃えるなんて、無理ありますね。」

 いっぱい資料見たから、はっきりと解る。

「大きいゲームセンターとかなら、ほとんど揃っている場合がありますよ。」

「それは、凄い。」

「この辺りだと、市内のテックセッター○○○ですね。」

 そう言えば、市内に大きいゲーセンあったな。プリクラのコーナーとかしか行ってなかったよ。


 その日は、資料見て満腹になった。

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